[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第85回―「オープン・サイエンス潮流の推進」Cameron Neylon教授

[スポンサーリンク]

第85回の海外化学者インタビューは、キャメロン・ネイロン教授です。科学技術施設評議会 Rutherford Appleton Laboratoryとサウザンプトン大学化学科でクロスアポイントメント(訳注:現在はCurtin Universityに在籍)されており、ハイスループットDNAシークエンシング法の分析から、生物物理学と構造生物学のための方法論の開発、実験室の出来事を記録するウェブベースシステムの設計と開発まで、あまりにも多く様々なことに取り組んでいます。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

学部生の時には、化学から逃れようと多くの時間を費やしました。大学では生化学を専攻していましたが、化学を3年生まで続けたのは、微生物学がもっと嫌いだったからです。その後、化学科で博士号を取得し、サウザンプトン化学で講師をやった後、STFC ISIS中性子散乱施設に移りました。ですから、自分がやろうとしていることや興味のあることに対する化学の重要性を理解するのにしばらく時間がかかりました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

大学のほとんどの時間は、科学より音楽をやっていましたし、音楽をやるよりもずっと優れたことに専念する時間がないという事実を忘れてしまっています。心から興味を持ったり楽しんだりしていますが、今やるべき核心ではないことについて、もっと多くの時間を割いて学びたく思います。完全に自由な選択ができ、無限の資金があれば、学生に戻るでしょう!

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

得意とする化学を実践し、科学と世界が直面している大きな問題を、化学という言葉で表現する手助けをすることによってです。化学は、私たちが行うほとんどすべての中心であり、気候、環境、エネルギー、健康の観点から私たちがやるべきことの多くを占めています。しかし同時に、コミュニティには多くの自己満足があり、科学技術が発展・変化しようとしている方向へ関わろうとする意思が欠如しています。化学には素晴らしい未来がありますが、その未来のどれだけが化学部門に在るのか心配です。化学者は重要な問題を解決する中心にいると主張しなくてはなりませんし、さもなければ単にサービス部門に転じる危険があります。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

難しすぎます!会ってみたいと思う人たちの中には、まだ生きている人たちもたくさんいます。Haldane氏に科学と社会について、あるいは19世紀の科学者なら誰でもいいですが、それについて話すのは面白いと思います。あらゆる科学分野で何が起こっているのかをよく理解していた最後の世代です。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

最後に研究室にいたのはいつなのか、何をしていたのかは、実験ノートをオンラインで見ればはっきりわかります。本稿執筆時点で最も新しいのは、有機溶媒中の化合物の溶解度を測定する簡単な方法がうまくいくかどうかを調べるという、一見単純そうに見える実験です。これはドレクセル大学のJean-Claude Bradley氏と共同で、溶解度データの収集をクラウドソース化しようとするOpen Notebook Scienceチャレンジの一環として行われました。溶解度を決定する方法を開発または改良し、開発されたデータおよび方法をオンラインで公開してデータに自由にアクセス可能にすることで、世界中の学生が貢献できるという考え方です。今でもそこそこ定期的に研究室に入ります。役に立っているかどうかは、研究グループのみんなに聞いてみてください・・・。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

もし無人島に追放されたら、気が狂うでしょう。1冊の本と1枚のCDではそれほど役に立たないでしょうから、見つけられる限りで一番長いものを選ぶでしょう。おそらく完全版のOEDでも、9ページを1ページに凝縮したコンパクト版を入手すると思います。

CDはおそらく、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団演奏の『展覧会の絵』や『春の祭典』など、長年持っていたものにするでしょう。もしくはSkyのセカンドアルバムですが、CDでリリースされたことはないと思います・・・。

原文:Reactions – Cameron Neylon

※このインタビューは2008年10月10日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第35回 生物への応用を志向した新しいナノマテリアル合成― Ma…
  2. 第30回 弱い相互作用を活用した高分子材料創製―Marcus W…
  3. 第131回―「Nature出版社のテクニカルエディターとして」L…
  4. 第82回―「金属を活用する超分子化学」Michaele Hard…
  5. 第八回 ユニークな触媒で鏡像体をつくり分けるー林民生教授
  6. 第104回―「生体分子を用いる有機エレクトロニクス」David …
  7. 第63回「遊び人は賢者に転職できるのか」― 古川俊輔 助教
  8. 第111回―「予防・診断に有効なナノバイオセンサーと太陽電池の開…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 光触媒で人工光合成!二酸化炭素を効率的に資源化できる新触媒の開発
  2. 分析化学の約50年来の難問を解決、実用的な微量分析法を実現
  3. できる研究者の論文作成メソッド 書き上げるための実践ポイント
  4. ヘル・フォルハルト・ゼリンスキー反応 Hell-Volhard-Zelinsky Reaction
  5. 世界を股にかける「国際学会/交流会 体験記」
  6. プリリツェフ エポキシ化 Prilezhaev Epoxidation
  7. 二窒素の配位モードと反応性の関係を調べる: Nature Rev. Chem. 2017-4/5月号
  8. 糸状菌から新たなフラボノイド生合成システムを発見
  9. 密着型フィルムのニューフェイス:「ラボピタ」
  10. 高分子材料におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用とは?

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年4月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP