[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第112回―「生体分子センサー・ドラッグデリバリーシステムの開発」Shana Kelley教授

[スポンサーリンク]

第112回の海外化学者インタビューは、シャナ・ケリー教授です。トロント大学生化学科に所属し、ナノマテリアルベースのバイオセンサーとドラッグデリバリーシステムを研究しています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

ビジネスや金融、法律などの分野に進むつもりで大学に入学しましたが、大学に入学してからは、科学、特に化学が一番面白いと感じました。化学は具体的で論理的で、単純な理論や法則が複雑な現象を説明してくれることにとても惹かれました。しかし、本当に夢中になったのは研究でした。研究室に入り、自分で実験をするようになってからは、実験を通して分子システムについての新しい発見をしたり、新しいことを学んだりする過程に夢中になりました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

今の仕事よりも優れた仕事は想像できません。他に何かを選ぶとしたら、医学に関連した仕事だと思います。生理学に魅力を感じていますし、外科医としてのキャリアなら、研究室で使っていたのと同じスキルを活かすことができると思いますので、そこに行き着くでしょう。

Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?

多くの分野で研究を行っていますが、現在注力している分野の一つは、生体分子検出プラットフォームです。臨床診断法として実用的で関連性のあるものにするべく、力を入れて推進しています。ラボで行う研究がアカデミック化学の外にも影響を与え、臨床医学の分野にまで発展することを大いに期待しています。ですので、この分野にはかなり力を入れています。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

エリザベス1世です。女性が何も持ちえなかった時代にあって、非常に多くの権力と責任を持っていた女性でした。彼女の身になってみて、どんな感じだったのか聞いてみたいものです。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

かなり前のことです・・・.詳細には触れたくありませんが、助教としての責務に気を取られすぎて、実験にちゃんと集中することができなかったため、放射能とかなり大きな混乱の後始末を要する大失敗をしてしまいました。研究室を出て、他人の研究を監督することに専念しなければならないタイミングが来ていたということに、その時に気づきました。当時のグループメンバーは心から同意してくれましたし、今の同僚たちも、彼らの研究活動を肩越しに見るだけにしておく方が、研究室をめちゃくちゃにするよりもいいと引き続き言うでしょう。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

難しいですね。化学関連で好きな本の一つがプリーモ・レーヴィの「The Periodic Table」なので、それが第一候補になるでしょう。

[amazonjs asin=”0141185147″ locale=”JP” title=”The Periodic Table (Penguin Modern Classics)”]

音楽の好みはかなり多様なので、何を持って行くかは取り残される旅に出た時の気分に大きく左右されます。おそらくモーツァルトの長いオペラと一緒に旅することになるでしょうね。

Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者と、その理由を教えてください。

トロント大の同僚化学者からの話を聞きたいです。近隣の方々が行っっている科学の裏側に何があるのかもっと聞くことができたら、いつも面白いでしょう。

 

原文:Reactions –  Shana Shelly

※このインタビューは2009年4月17日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第58回「新しい分子が世界を変える力を信じて」山田容子 教授
  2. 第47回「目指すは究極の“物質使い”」前田和彦 准教授
  3. 第44回「100%の効率を目指せば、誤魔化しのないサイエンスが見…
  4. 第125回―「非線形光伝播の基礎特性と応用」Kalai Sara…
  5. 第86回―「化学実験データのオープン化を目指す」Jean-Cla…
  6. 第137回―「リンや硫黄を含む化合物の不斉合成法を開発する」St…
  7. 第45回―「ナノ材料の設計と合成、デバイスの医療応用」Youna…
  8. 第25回「ペプチドを化学ツールとして細胞を操りたい」 二木史朗 …

注目情報

ピックアップ記事

  1. フィッシャー インドール合成 Fischer Indole Synthesis
  2. ロドデノール (rhododenol)
  3. ウィッティヒ転位 Wittig Rearrangement
  4. ボロン酸エステル/ヒドラゾンの協働が実現する強固な細胞Click反応
  5. ベンゼン環をつないで 8 員環をつくる! 【夢の三次元ナノカーボンの創製に向けて】
  6. 酵素触媒反応の生成速度を考えるー阻害剤入りー
  7. 固体高分子電解質の基礎、材料技術と実用化【終了】
  8. 酸化グラフェンに放射性物質を除去する機能が報告される
  9. 2017年始めに100年前を振り返ってみた
  10. サラ・E・リースマン Sarah E. Reisman

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年8月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

日本プロセス化学会2024ウインターシンポジウム

有機合成化学を基盤に分析化学や化学工学なども好きな学生さん、プロセス化学を知る絶好の…

2024年ノーベル化学賞は、「タンパク質の計算による設計・構造予測」へ

2024年10月9日、スウェーデン王立科学アカデミーは、2024年のノーベル化学賞を発表しました。今…

デミス・ハサビス Demis Hassabis

デミス・ハサビス(Demis Hassabis 1976年7月27日 北ロンドン生まれ) はイギリス…

【書籍】化学における情報・AIの活用: 解析と合成を駆動する情報科学(CSJカレントレビュー: 50)

概要これまで化学は,解析と合成を両輪とし理論・実験を行き来しつつ発展し,さまざまな物質を提供…

有機合成化学協会誌2024年10月号:炭素-水素結合変換反応・脱芳香族的官能基化・ピクロトキサン型セスキテルペン・近赤外光反応制御・Benzimidazoline

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年10月号がオンライン公開されています。…

レジオネラ菌のはなし ~水回りにはご注意を~

Tshozoです。筆者が所属する組織の敷地に大きめの室外冷却器がありほぼ毎日かなりの音を立て…

Pdナノ粒子触媒による1,3-ジエン化合物の酸化的アミノ化反応の開発

第629回のスポットライトリサーチは、関西大学大学院 理工学研究科(触媒有機化学研究室)博士課程後期…

第4回鈴木章賞授賞式&第8回ICReDD国際シンポジウム開催のお知らせ

計算科学,情報科学,実験科学の3分野融合による新たな化学反応開発に興味のある方はぜひご参加ください!…

光と励起子が混ざった準粒子 ”励起子ポラリトン”

励起子とは半導体を励起すると、電子が価電子帯から伝導帯に移動する。価電子帯には電子が抜けた後の欠…

三員環内外に三連続不斉中心を構築 –NHCによる亜鉛エノール化ホモエノラートの精密制御–

第 628 回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院薬学研究科 分子薬科学専…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP