ご存知の通り、2025年のノーベル化学賞は、金属–有機構造体 (MOF) の発見と開発に関する業績を対象に、Prof. Richard Robson、Prof. Omar Yaghi、そして北川進 先生の3名へ授与されました。 生理学・医学賞の坂口志文先生との日本人同時受賞も相まって、注目度は鰻登りです。
ケムステではかねてより、注目すべき若手研究者に焦点を当て、研究の詳細や裏話・苦労話などを語っていただくスポットライトリサーチという企画を行い、2025年10月14日までに 681 回のインタビューを実施して、毎回好評を博しております。
そこで今回は、MOF やそれに続く多孔質性材料に関するこれまでのスポットライトリサーチをまとめてみました!
さまざまな観点からの研究があり勉強になりますので、ぜひとも各記事をご覧ください
各タイトルとアイキャッチ画像から元記事へ飛べます!
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(*HP等へのリンクは掲載当時のままになっている場合があります。ご容赦ください)
(*著者様等のご所属は原則として掲載当時のままとなっております。researchmap 等で現所属を公開されている方については、2025年10月現在のものを併記しております。)
MOF 関連スポットライトリサーチ記事
1. 細孔内単分子ポリシラン鎖の特性解明
京都大学大学院工学系研究科 北川研究室 博士課程2年の北尾 岳史 (現在・国立研究開発法人産業技術総合研究所 材料・化学領域 ナノカーボン材料研究部門 主任研究員) 様のご研究です。当時、北川進先生の研究室のご所属で、「単分子鎖状導電性高分子のキャリア移動特性の解明と制御」という北川研のメインストリームとなる研究内容の紹介でした!
2. つぶれにくく元にも戻せる多孔性結晶の開発
筑波大学数理物質系・山岸 洋 助教 (研究当時・東大 相田卓三研、現在・筑波大学 数理物質系 准教授) 様のご研究です。開発された MOF は、孔をつぶすためには200度以上の加熱が必要な一方、つぶれた孔が室温条件で自発的に自己修復する、という実用性の高い多孔性結晶の合成に成功されています。
3. 多孔性材料の動的核偏極化【生体分子の高感度MRI観測への一歩】
九州大学大学院工学府の君塚研究室に所属する修士課程2年の 藤原 才也 様のご研究です。NMRやMRIを室温で高感度化することができる triplet-DNP と呼ばれる技術を、MOF に応用したご研究になります。
4. MOF 結晶表面の敏感な応答をリアルタイム観察
京都大学・北川進研究室に所属されていた 細野 暢彦 様 (現在・東京大学 工学系研究科 応用化学専攻 植村研究室 准教授) のご研究です。高速原子間力顕微鏡 (AFM) を用いて、結晶格子レベルの解像度で MOF 結晶表面を観察し、ゲスト応答過程をリアルタイムで直接とらえるという方法で、その観測を実現しています。
5. 偏光依存赤外分光でMOF薄膜の配向を明らかに! ~X線を使わない結晶配向解析
大阪府立大学大学院工学研究科 高橋研究室 でJSPS外国人特別研究員をされていた Bettina Baumgartner 様のご研究です。MOF の結晶の配向を解析するとなるとX線を使った解析が一般的ですが、有機分子を含むといった特徴を利用して赤外分光から配向の情報を得る装置を開発されたというご研究になります。
6. 規則的に固定したモノマーをつないで高分子を合成する
北海道大学大学院理学研究員 (佐田和己研究室) の 阿南 静佳 様 (現在・豊田工業大学 工学部 先端工学基礎学科 助教) のご研究です。MOF が極めて規則正しい構造を保っていることに着目し、柱となる有機化合物を連結させて制御された高分子材料を作り出すという、新たな考え方の提案を行っています。
7. 常温・常圧で二酸化炭素から多孔性材料をつくる
京都大学工学研究科 堀毛研究室 に所属されていた 門田 健太郎 様 (現在・京都大学理学研究科 化学専攻 無機化学講座 助教) のご研究です。常温・常圧という温和な条件で、アミンを利用することで CO2 から MOF/PCP の one-pot 合成にはじめて成功しました。
8. 共有結合性有機構造体(COF)の新規合成・薄膜化手法を開発
東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 稲木研究室に在籍されていた 白倉 智基 様のご研究です。MOF に続く多孔質性材料である共有結合性有機構造体 (COF) に関して、電気化学反応による新規合成手法を開発し、電極上に薄膜として得ることに成功しました。
9. ペーパークラフトで MOFをつくる
岡山理科大学 基盤教育センター 教授の 堀越 亮 先生のご研究です。手作り化学教材を使ったアウトリーチ活動を展開し、そのタイトル通り、ペーパークラフトで HKUST-1、MOF-5、UiO-66 結晶スポンジ、ピラードレイヤーPCP などの模型を作成されています (実物の写真は元記事をご覧ください)。これらの活動により、化学コミュニケーション賞2024を受賞されています。
10. ファンデルワールス力で分子を接着して三次元の構造体を組み上げる
京都大学 物質-細胞統合システム拠点 (iCeMS) 古川研究室 に在籍されていた 徳田 駿 様 (現在・Max Planck Institute for Solid State Research (Nanochemistry department) 所属) のご研究です。MOF や COF とも異なる新機軸の多孔質材料「多孔性ファンデルワールスフレームワーク(WaaF)」の開発に成功しました。
11. 計算化学を用い、多孔性結晶中のNaイオンの高速拡散機構を解明 -室温以下で安定動作するNaイオン電池の設計指針構築に貢献-
東京科学大学 物質理工学院 応用化学コース 館山・安藤研究室 博士課程所属の 伊藤 暖 様のご研究です。スーパーコンピュータを用いた第一原理分子動力学 (AIMD) シミュレーションを用いて、古典的な MOF であるプルシアンブルーにおける典型金属イオンの動態を明らかにしました。
12. アルカロイドなど求核性化合物の結晶スポンジ法による解析を可能とする新規MOFの開発

東京科学大学 理学院 化学系 河野研究室 修士課程 2 年の 中川 智暉 様のご研究です。結晶スポンジ法に使用される MOF の課題であった、求核性置換基を有する化合物への適用について、その解決法となる新規材料の開発に成功しました。これにより多くの重要な求核性・塩基性化合物の結晶構造の解析を実現しています。
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サイエンスライターの佐藤健太郎氏が、MOFに関する解説記事を執筆されています。
・なんと、わずか1グラムで、サッカー場一面分に匹敵する表面積…じつに、究極の多孔質「ウルトラファインスポンジ」MOFが、ノーベル賞選考委員の心を刺したワケ
記事中でも取り上げられている書籍の書評はコチラ。
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