[スポンサーリンク]

天然物

パクリタキセル(タキソール) paclitaxel(TAXOL)

[スポンサーリンク]

パクリタキセル(paclitaxel)は、イチイの樹皮から単離されるテルペノイドの一種で、強力な抗ガン剤

歴史・用途

俗にはタキソールと呼ばれることが多いが、パクリタキセルが一般名。1990年にブリストルマイヤーズ・スクイブ社がTAXOLと商標登録をしている。現在では両方の名称で呼ばれるようになった。

タキソールは細胞分裂における微小管成長阻害によって制癌活性を示す。構造が複雑であるため化学合成による供給は難しく、また樹皮からは需要を満たす量が得られない。このため現在は、10-デアセチルバッカチンIII(10-deacetylbaccatin III)と呼ばれるセイヨウイチイの葉からとれる化合物に側鎖を導入する、半合成(semisynthesis)によって供給している。

taxol_semi.gif

タキソールは、その特徴的な炭素骨格上に多くの不斉中心、酸素官能基、anti-Bredtオレフィンを有することから、きわめてチャレンジングな合成標的の一つとされる。化合物の有望性も相まって、一時期、数多くの合成化学者たちが激しい合成レースを繰り広げたことがある。これまでに8例の合成例が報告されている(R.A.Holton、K.C.NicolaouS.J.DanishefskyP.A.Wender向山光昭、桑嶋功、/ Formal Synthesis : 高橋高志、中田雅久)。

この過程でタキソール側鎖導入法の製法特許を押さえたフロリダ州立大学のHoltonは、大変な大金持ちになったという話。

 

関連書籍

[amazonjs asin=”3527309837″ locale=”JP” title=”Molecules That Changed the World”]

関連リンク

タキソール~全合成のドラマ~ (有機化学美術館)

パクリタキセル – Wikipedia

タキソール全合成 – Wikipedia

Paclitaxel – Wikipedia

Taxol total synthesis – Wikipedia

taxol story (C&EN)

a tale of taxol (Florida st. University)

Taxolog, Inc. Holtonが設立したタキソール研究のための会社

制癌剤タキソールの不斉全合成 (PDF) 向山教授による自身の仕事の解説記事

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 18F-FDG(フルオロデオキシグルコース)
  2. テトロドトキシン Tetrodotoxin
  3. 虫歯とフッ素のお話① ~どうして歯磨きにフッ素が使われるの??~…
  4. プラテンシマイシン /platensimycin
  5. チエナマイシン /thienamycin
  6. 2,5-ジ-(N-(­­­­–)-プロイル)-パラ-ベンゾキノン…
  7. カフェイン caffeine
  8. アントシアニン / anthocyanin

注目情報

ピックアップ記事

  1. 岩谷産業がセシウム化合物を取り扱っている?
  2. 材料開発におけるインフォマティクス 〜DBによる材料探索、スペクトル・画像活用〜
  3. アリルC(Sp3)-H結合の直接的ヘテロアリール化
  4. 研究者のためのCG作成術①(イントロダクション)
  5. “匂いのゴジラ”の無効化
  6. 博士課程学生の奨学金情報
  7. 特長のある豊富な設備:ライトケミカル工業
  8. ユーコミン酸 (eucomic acid)
  9. 第四回ケムステVシンポ「持続可能社会をつくるバイオプラスチック」開催報告
  10. Googleマイマップを持って学会に出かけよう!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年9月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP