[スポンサーリンク]

D

重水素標識反応 Deuterium Labeling Reaction

[スポンサーリンク]

 

概要

同位体である水素と重水素(Deuterium)を置き換えることでさまざまな応用へと展開できる。

重水素化による物質機能への影響は最小限で済みつつも、速度論的同位体効果(Kinetic Isotope Effect, KIE)が鋭敏に現れることが原理的基盤にある。

反応機構解析、同位体希釈分析法、生体構成成分の構造解析などが典型的な応用先である。近年では代謝抵抗性を意図した重水素化医薬がデザインされ、臨床試験が進められている。また光学/電子デバイス用材料に重水素化を施すことで、光学特性や耐久性を向上させられもする。

deuterio_2.gif このように、重水素化を適切に行える反応の需要は近年高まりつつある。

 

基本文献

<review>

  1.  Junk, T.; Catallo, W. J. Chem. Soc. Rev. 1997, 26, 401. DOI: 10.1039/CS9972600401
  2. 江嵜 啓祥, 栗田 貴教, 藤原 佑太, 前川 智弘, 門口 泰也, 佐治木弘尚 有機合成化学協会誌2007, 65, 1179. DOI: 10.5059/yukigoseikyokaishi.65.1179
  3. Atzrodt, J.; Derdau, V.; Fey, T.; Zimmermann, J. Angew. Chem. Int. Ed.2007, 46, 7744. DOI: 10.1002/anie.200700039
  4. Atzrodt, J.; Derdau, V. J. Label Compd. Radiopharm.2010, 53, 674. DOI: 10.1002/jlcr.1818
  5. Sawama, Y.; Monguchi, Y.: Sajiki, H. Synlett2012, 23, 959. DOI: 10.1055/s-0031-1289696
  6. 佐治木弘尚, 薬学雑誌2013, 133, 1177. doi:10.1248/yakushi.13-00218

<H/D-Isotope Effect in Mechanistic Studies>

  1. Wiberg, K. B. Chem. Rev. 1955, 55, 713. DOI: 10.1021/cr50004a004
  2. Jones, W. D. Acc. Chem. Res.2003, 36, 140. DOI: 10.1021/ar020148i
  3. Gallego, M. G.; Sierra, M. A. Chem. Rev.2011, 111, 4857. DOI: 10.1021/cr100436k
  4. Simmons, E. M.; Hartwig, J. F. Angew. Chem. Int. Ed.2012, 51, 3066. DOI: 10.1002/anie.201107334

 

反応例

Norzoanthamineの合成[1]: 非重水素化基質においてはヒドリド移動が進行するため収率が低下するが、重水素化基質においてはこれが抑制され、望むアルキン体の収率が向上する。

deuterio_1.gif

重水中での触媒的H/D交換[2] :通常条件では不活性なC-H結合に対し、簡便に重水素交換を行える優れた手法。 deuterio_4.gif

 

重水素化キラルネオペンタンの合成[3]:入手容易な重水素化試薬をうまく活用した好例。 deuterio_3.gif

実験手順

実験のコツ・テクニック

参考文献

[1] Miyashita, M.; Sasaki, M.; Hattori, I.; Sakai, M.; Tanino, K. Science 2004, 305, 495. DOI:10.1126/science.1098851
[2] 総説:(a) 江嵜 啓祥, 栗田 貴教, 藤原 佑太, 前川 智弘, 門口 泰也, 佐治木弘尚 有機合成化学協会誌 2007, 65, 1179. DOI: 10.5059/yukigoseikyokaishi.65.1179 (b) Sawama, Y.; Monguchi, Y.: Sajiki, H. Synlett 2012, 23, 959. DOI: 10.1055/s-0031-1289696 (c) 佐治木弘尚, 薬学雑誌 2013, 133, 1177. doi:10.1248/yakushi.13-00218
[3] Haesler, J.; Schindelholz, I.; Riguet, E.; Bochet, C. G.; Hug, W. Nature 2007, 446, 526. doi:10.1038/nature05653

 

関連書籍

 

外部リンク

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. ブルック転位 Brook Rearrangement
  2. カルボン酸の保護 Protection of Carboxyli…
  3. クラウソン=カース ピロール合成 Clauson-Kaas Py…
  4. 辻・ウィルキンソン 脱カルボニル化反応 Tsuji-Wilkin…
  5. ニーメントウスキー キノリン/キナゾリン合成 Niementow…
  6. カバチニク・フィールズ反応 Kabachnik-Fields R…
  7. TPAP(レイ・グリフィス)酸化 TPAP (Ley-Griff…
  8. FAMSO

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. ジョアンナ・アイゼンバーグ Joanna Aizenberg
  2. 顕微鏡で有機分子の形が見えた!
  3. 化学の力で名画の謎を解き明かす
  4. AI翻訳エンジンを化学系文章で比較してみた
  5. 化学大手9月中間 三井化学と旭化成が経常減益
  6. 金属イオン認識と配位子交換の順序を切替えるホスト分子
  7. ケムステV年末ライブ2023開催報告! 〜今年の分子 and 人気記事 Top 10〜
  8. 不正の告発??
  9. 「理研よこはまサイエンスカフェ」に参加してみた
  10. 【2021年卒業予定 修士1年生対象】企業での研究開発を知る講座

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2014年5月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

【十全化学】核酸医薬のGMP製造への挑戦

「核酸医薬」と聞いて、真っ先に思い起こすのは、COVID-19に対するmRNAワ…

十全化学株式会社ってどんな会社?

私たち十全化学は、医薬品の有効成分である原薬及び重要中間体の製造受託を担っている…

化学者と不妊治療

これは理系の夫視点で書いた、私たち夫婦の不妊治療の体験談です。ケムステ読者で不妊に悩まれている方の参…

リボフラビンを活用した光触媒製品の開発

ビタミン系光触媒ジェンタミン®は、リボフラビン(ビタミンB2)を活用した光触媒で…

紅麹を含むサプリメントで重篤な健康被害、原因物質の特定急ぐ

健康食品 (機能性表示食品) に関する重大ニュースが報じられました。血中コレステ…

ユシロ化学工業ってどんな会社?

1944年の創業から培った技術力と信頼で、こっそりセカイを変える化学屋さん。ユシロ化学の事業内容…

日本薬学会第144年会付設展示会ケムステキャンペーン

日本化学会の年会も終わりましたね。付設展示会キャンペーンもケムステイブニングミキ…

ペプチドのN末端でのピンポイント二重修飾反応を開発!

第 605回のスポットライトリサーチは、中央大学大学院 理工学研究科 応用化学専…

材料・製品開発組織における科学的考察の風土のつくりかた ー マテリアルズ・インフォマティクスを活用し最大限の成果を得るための筋の良いテーマとは ー

開催日:2024/03/27 申込みはこちら■開催概要材料開発を取り巻く競争や環境が激し…

石谷教授最終講義「人工光合成を目指して」を聴講してみた

bergです。この度は2024年3月9日(土)に東京工業大学 大岡山キャンパスにて開催された石谷教授…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP