[スポンサーリンク]

ケムステニュース

小林製薬、「神薬」2種類を今春刷新

[スポンサーリンク]

 小林製薬は訪日外国人に人気がある医薬品を拡充する。4月に消炎鎮痛剤「アンメルツ」でシリーズ最高級品を発売するほか、液体ばんそうこう「サカムケア」には靴擦れ予防用を追加する。いずれも中国人客が訪日時に買うことが多い「神薬」とも呼ばれており、商品刷新でさらなる売り上げ拡大を目指す。

アンメルツシリーズの新商品「アンメルツNEO」は血行促進成分を3種類配合している。本体の長さを伸ばして背中にも届きやすくした。「サカムケア靴ずれ傷ガード」は、かかとにも塗りやすくなっている(引用:日本経済新聞 2016年1月29日)。

いつも画期的な商品名で、もはや大きな製薬会社よりも有名な小林製薬。実際に「製薬」しているわけではなく、既存の材料を混ぜているだけなのにこれだけ知名度があるのは商品開発の賜物でしょう。見習いたいものです。

ただ、色々気になったので記事にしてみました。まずは「新薬」ってなんだそれ?ってところから。

 

12種類の神薬

昨年10月に中国ウェブサイトで爆買い対象の薬として話題になった薬らしいです。12種類の”神薬”が上げられていて、小林製薬はなんと5種類もランクイン。確かに日本でも有名なものばかりです。

wst1507300003-p1

(出典:産経West)

せっかくなので、来春から新しい製品が投入される小林製薬の”神薬”、「アンメルツヨコヨコ」、「サカムケア」ついて化学的に少し紹介しましょう。

 

ロングセラー商品ーアンメルツ

今年で50周年を迎える消炎鎮痛剤「アンメルツ」。知らない人はいないというぐらいに知名度が高い商品です。歴史は他のウェブサイトにお任せするとして、化学者でも知らない(調べたこと無い)アンメルツの成分についてちょっと覗いて見たいと思います。小林製薬のウェブサイトからアンメルツの一商品「ニューアンメルツヨコヨコA」の成分表を見てみました。下の表になります。

ニューアンメルツヨコヨコAの成分

ニューアンメルツヨコヨコAの成分

 

化学者の皆様、すぐに構造式がでてきますか?サリチル酸やメントール、マレイン酸、ニコチン酸ベンジルエステルあたりは化学を学んでいる方ならならば、かけてほしいものです。では成分の構造式はこちら。

2016-01-30_08-51-50

 

サリチル酸グリコールは、サリチル酸の誘導体で類似品には必ずはいっている鎮痛、消炎剤。メントールは爽快な臭いと清涼感の成分ですね。クロルフェニラミン マレイン酸塩は抗ヒスタミン薬、ニコチン酸ベンジルエステルは吸収促進剤であり、ノナン酸バニリルアミドは血行促進成分といわれています。ノナン酸バニリルアミドは唐辛子辛味成分カプサイシンによく構造が似ていますね。

 

ニューとかゴールドExとか何が違うの?

アンメルツには色々姉妹製品があり、通常のアンメルツヨコヨコに加えて、上述したニューアンメルツヨコヨコA、アンメルツゴールドExなどが発売されています。なんとなく色と名前的にアンメルツヨコヨコ<ニューアンメルツヨコヨコA<アンメルツゴールドExの順番で良さそうな気がしますが、一体何が違うのでしょうか?

成分を覗いてみました。一言でいうと、鎮痛、消炎剤の中身が異なります。アンメルツヨコヨコはサリチル酸メチル、ニューアンメルツヨコヨコAはサリチル酸グリコールです。同じサリチル酸誘導体なので、結局はサリチル酸を放出するため同じように思えますが、おそらく少し効率がよいのでしょう。一方で、アンメルツゴールドExではサリチル酸誘導体ではなく「フェルビナク」という化合物です。サリチル酸誘導体に比べてちょっぴり効果が強いと思ってくれれば良いと思います。そのためか、以前はフェルビナクは医療用医薬品として病院だけで詳報できる薬でした。現在では、薬局でも購入することが可能となっています。

 

2016-01-31_22-54-23

 

ちなみに、「アンメルツヨコヨコ」の”ヨコヨコ”ってボトルの形が塗りやすい横になっているのでヨコヨコだって知っていましたか?さらに、最近アンメルツゴールドExグリグリという商品が出ていて(2012年発売)、なんとこれは塗布部のローラーにステンレス製の鉄球を採用しているとのこと。さすが小林製薬、気になるけどわかると直感的に理解できる恐るべしネーミングセンス。

 

2016-01-30_09-00-53

 

液体の絆創膏ーサカムケア

さて、もう一個の神薬、サカムケアも成分表を見てみました。それが下の表。

2016-01-30_09-02-08

え、これだけ??と思われた方も多いでしょう。また、化学者の皆様ならば「ピロキシリン」ってなに?と思われた方も多いでしょう。筆者はなにかのアルカロイドを想像しましたが、調べてみると非常に簡単、そして構造式はこちら。

Unknown

そう、高校化学でも習うニトロセルロース(セルロース硝酸エステル)なんですね。糖のヒドロキシ基が2箇所硝酸エステルに変わったものがピロキシリンらしいです。化学者なのに知らなかった。勉強になりました。

 

というわけで、化学のウェブサイトだけに成分をのぞいてみましたが、化学者といえども身近に売られているものでも知らないものいっぱいあると思いませんか?知ってどうなるという声も聞こえてきそうですが、構造式をみて理解できるのが化学者の強みです。自分の身近な分子を探してみてはいかがでしょうか。

 

関連商品

[amazonjs asin=”B000WSHV02″ locale=”JP” title=”【第3類医薬品】ニューアンメルツヨコヨコA 80mL”][amazonjs asin=”B005UJ1988″ locale=”JP” title=”【第2類医薬品】アンメルツゴールドEX 80mL”][amazonjs asin=”B00D4M4E12″ locale=”JP” title=”【第2類医薬品】アンメルツゴールドEXグリグリ 46mL”][amazonjs asin=”B000YZL4GK” locale=”JP” title=”【第3類医薬品】サカムケア 10g”]

 

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. アステラス製薬、過活動膀胱治療剤「ベシケア錠」製造販売承認取得
  2. 存命化学者達のハーシュ指数ランキングが発表
  3. 「サガミオリジナル001」、今月から販売再開 相模ゴム
  4. 2009年ノーベル賞受賞者会議:会議の一部始終をオンラインで
  5. トンボ手本にUV対策 産総研など 分泌物の主成分を解明
  6. 被ばく少ない造影剤開発 PETがん診断に応用へ
  7. 福井県内において一酸化炭素中毒事故(軽症2名)が発生
  8. 武田薬品、糖尿病薬「アクトス」に抗炎症作用報告

注目情報

ピックアップ記事

  1. キャピラリー電気泳動の基礎知識
  2. SPhos
  3. サイエンス・コミュニケーションをマスターする
  4. CAS番号の登録が1億個突破!
  5. アンリ・カガン Henri B. Kagan
  6. 東レ工場炎上2人重傷 名古屋
  7. ポンコツ博士の海外奮闘録⑤ 〜博士,アメ飯を食す。バーガー編〜
  8. 3.11 14:46 ①
  9. リスト・バルバス アルドール反応 List-Barbas Aldol Reaction
  10. 2005年9-10月分の気になる化学関連ニュース投票結果

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年2月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
29  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP