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化学者のつぶやき

大学院生のつぶやき:第5回HOPEミーティングに参加してきました

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(文化体験:着物班の記念撮影)

HOPEミーティングとは、アジア・太平洋地域等の博士課程学生/ポスドク約100人がノーベル賞受賞者と1週間合宿しながら、様々なプログラム通じて研究者としての研鑚を行う、日本学術振興会(JSPS)主催の企画です。気ままに有機化学さんでも過去に紹介されています(こちらこちら)。

 

注:講演やプレゼンテーションの写真などは自由な公開が制限されており、この記事では使うことができません。講演やチームプレゼンテーションの様子をご覧になりたい方は公式ホームページ等をご覧ください

今年の対象分野は「生命科学(及び関連分野)」でした(化学、物理、または全分野が対象の年もあります)。もちろん参加者のほとんどは生命科学に関する研究をしているのですが、ガン・植物・生物分類学など、非常に非常に幅広い分野の方が参加されていました。筆者は化学系の学生なのですが、だめもとで応募したところ幸いにも参加者に採用して頂きました。普段生命科学関係の方と関わる機会がないため、何を聞いても興味深い新鮮な話ばかりで好奇心が刺激されっぱなしの1週間でした。

 

主なプログラムは、ノーベル賞受賞者らの講演、ノーベル賞受賞者らとのディスカッション、グループプレゼンテーション、理研見学、日本文化体験でした。特に、ディスカッションではノーベル賞受賞者1名と参加者15名で90分、何でも質問することができました。こんな贅沢な経験はなかなかできるものではないと思います。研究内容についての具体的な質問だけでなく「成功の秘訣は」「ポスドク先のボスとうまくやっていくには」「モチベーションを保つには」など、参加者から様々な質問が飛出し、それに対して真摯かつ熱い回答が返ってきました。

 

(夜遅くまでグループプレゼンテーションの練習を行う)

 

今回のミーティングに参加してみて、「命に関わっている」という意識をお持ちの方が多かったことが印象的でした。ガンの治療法を開発する、魚用ワクチンの効果を高めて発展途上国での生産高を向上させたいなど人の命を救うための研究をしている方が多くいらっしゃいました。中には、医師や獣医として働いた後により基礎的な部分に携わろうと博士課程へ進学した方も。化学分野では医薬品開発などの研究はありますが、直接的に命に関わることが少ないため、直接見てきた患者さんたちの命を救いたい、命のために、という彼らの熱意は新鮮であると同時に自分もこれだけの熱意や逼迫した思いで研究できているのだろうかと感じずにはいられませんでした。

 

また、参加者の中には既婚者・子持ちの学生も多く、「国を代表している」だけではなく「家族を養う」という責任感をひしひしと感じました。家庭は経済的には楽ではないが、奨学金のために母国を離れ研究している、という学生もいました。彼らの責任感に負けない強い気持ちで研究を進めていきたいものです(既婚者の参加者からはプロポーズ方法から結婚生活までいろいろとアドバイスされました)。

 

(最終日は浴衣を着てFarewell Dinner)

講演など真面目なプログラムだけではなく、日本文化体験や東京観光など日本を理解してもらうためのプログラムも用意されていました。将来、各国の研究をリードしていく彼らに日本を理解してもらったり日本を好きになってもらったりすることで、今後の共同研究や学生の派遣といった学術交流が促進されると期待されます。また、今回生まれた国内・国外の研究者の繋がりがFacebook等インターネットの存在によりどんどん広がっていくことを考えると、未来への好影響は計り知れない、非常に有意義な機会であると感じました。

 

また今年も夏には参加者募集が始まると思います。もし対象分野が自分の専攻と異なっていても、採用のチャンスはあります。英語の鍛錬にもなりますし、博士課程学生・ポスドクの方は、応募を検討されてみてはいかがでしょうか。刺激的な1週間が待っています!

P.S. 一度しか参加できないものなので参加者の本ブログへの寄稿をお待ちしております(今回のものも含めます)。将来参加された方はぜひご連絡ください(分野を問いません)。

 

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