[スポンサーリンク]

一般的な話題

酵素の真実!?

[スポンサーリンク]

巷に酵素と言う言葉があふれるようになりました。
酵素を研究しているものとしてはなんともうれしい限りですが、酵素飲料、酵素ダイエット、酵素栄養学…

あれれ?本来の酵素とは異なる、なんだかおかしな機能が付け加わった”酵素”が広がっている現状を考えると、一言申し上げる必要があると思います。

今回は単純に酵素について一般的な話を一言二言(もしくはそれ以上?)つぶやいてみようと思います。ご存じの方はご容赦いただければと思います。

酵素は元素?

酵素果物

新鮮な果物には酵素がいっぱい?

酵素は、酵”素”と書いてあるところからして、もしかすると、水素とか酸素などの仲間?と誤解されているのかもしれません。

もちろん、酵素の中には水素やら酸素等、いろいろありますが、それは酵素を構成する元素の名前なのであります。ですが、酵素という名前の元素は存在しません

周期表というものをご存じでしょうか?周期表はこちらをご覧ください。

AK0037

文部科学省:一家に一枚周期表より

ご覧のように、元素周期表のなかには全く酵素は見つかりませんね。あんまり知られていない、すいへ~り~べ~、などの元素より下の方にもありませんよ。

酵素はこれら元素がたくさんつながってできた分子です。

 

酵素って栄養の一種なの?

さて、お次は、栄養素という観点から酵素をみていきましょう。

古くは家庭科で習った”三大栄養素”を覚えていらっしゃるでしょうか?

炭水化物・脂質・蛋白質

でしたね。このうち蛋白質は、アミノ酸が数珠つなぎになってできあがった分子です。蛋白質とはこんなものです。

 

AK0038

文部科学省:一家に一枚たんぱく質より

これら3代栄養素は、消化管で分解され、吸収されて我々の栄養分になっていくのであります。蛋白質の場合、アミノ酸まで分解されたのち吸収され、主として我々の体の中の蛋白質となって活躍することとなります。

ところで、酵素というものは,その体のほとんどは蛋白質でできています(蛋白質以外のものもありますが、それはごくごく小数ですので、ここでは言及しません)。

ということで、酵素は経口で摂取すると、ご多分に漏れず消化酵素で分解され、酵素としては全く機能しないアミノ酸になってしまいます。また、酵素はデリケートな分子でして、もちろん分解されたら全く機能しませんし、ごく一部分解されただけでも全く機能しません。仮に,消化酵素から逃れられたとしても、本来働くはずの条件と異なるだけで何の役にも立たなくなります。

あ、ちなみに酵素の働きとは、化学反応の触媒です。消化管内で蛋白質を分解するのも酵素反応ですし、体の構成成分、例えばコラーゲンを作るのも酵素反応のおかげです。

もちろん、酵素自身も酵素の働きで必要なときに必要なだけ作られます。すなわち、食事から摂取した蛋白質をアミノ酸まで分解し、改めてアミノ酸から作り直しているのです。

ですから、通常の食事をしていれば、酵素は必要なだけ供給されます

ただし、すべての酵素が蛋白質だけで触媒作用を示すわけではないので、金属イオンやその他ビタミンなどの分子を食事から摂取する必要があります。

酵素は時として有用な分子を作る触媒として非常に素晴らしい作用を示しますが、決して魔法でもないし、超越した能力もありません。蛋白質でできた触媒に過ぎないのです。

もし、酵素の真実をもっと知りたい方がいらっしゃったら、まずは以下の本をお読みになると良いと思います。

藤本大三郎さんの本はとても読みやすいですのでおすすめです。
[amazonjs asin=”4062571528″ locale=”JP” title=”酵素反応のしくみ―現代化学の最大の謎をさぐる (ブルーバックス)”]

こちらもおすすめですが、絶版かもしれません・・・。
[amazonjs asin=”4762218766″ locale=”JP” title=”酵素のA・B・C”]

Avatar photo

あぽとーしす

投稿者の記事一覧

微生物から動物、遺伝子工学から有機合成化学まで広く 浅く研究してきました。論文紹介や学会報告などを通じて、研究者間の橋掛けのお手 伝いをできればと思います。一応、大学教員で、糖や酵素の研究をしております。

関連記事

  1. 難分解性高分子を分解する画期的アプローチ:側鎖のC-H結合を活性…
  2. 新奇蛍光分子トリアザペンタレンの極小蛍光標識基への展開
  3. 高分解能顕微鏡の進展:化学結合・電子軌道の観測から、元素種の特定…
  4. pH応答性硫化水素ドナー分子の開発
  5. 研究リーダーがPJを成功に導く秘訣
  6. 味の素グループの化学メーカー「味の素ファインテクノ社」を紹介しま…
  7. 2014年ノーベル化学賞・物理学賞解説講演会
  8. 研究室での英語【Part 2】

注目情報

ピックアップ記事

  1. 留学せずに英語をマスターできるかやってみた(2年目)
  2. 大井貴史 Takashi Ooi
  3. 学生に化学論文の書き方をどうやって教えるか?
  4. 第85回―「オープン・サイエンス潮流の推進」Cameron Neylon教授
  5. 従来製品の100 倍以上の光耐久性を持つペンタセン誘導体の開発に成功
  6. アミン化合物をワンポットで簡便に合成 -新規還元的アミノ化触媒-:関東化学
  7. 香りで女性のイライラ解消 長崎大が発見、製品化も
  8. 核酸医薬の物語1「化学と生物学が交差するとき」
  9. 分子糊 モレキュラーグルー (Molecular Glue)
  10. チャールズ・リーバー Charles M. Lieber

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2014年11月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP