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一般的な話題

ゴジラ級のエルニーニョに…出会った!

 記録的なエルニーニョの発生のために発生している異常気象。その発生の初期段階に偶然にもある研究チームが出会った。

 

ネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)の出版している日本語の科学まとめ雑誌である「Natureダイジェスト」1月号から。昨年後半から、個人的に興味を持った記事を定期的に紹介しています*。過去の記事は関連記事を御覧ください。

では、本年も記事をピックアップして少しだけ紹介しましょう。

 

最大級のエルニーニョが世界にもたらしたもの

 エルニーニョは太平洋赤道域で海面水温が平年に比べ高くなる現象です。観測史上最強と言われるのは1997-1998年。その際の海水気温の気温差は高いところでは平均の+5℃にも達しました。その影響からの異常気象と洪水により、数千人が命を落とし、アジアでは2億5000万人もの人々が家を失ったと言われています。

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1997年11月における海面水温の平年偏差(出典:気象庁)

 

そのエルニーニョ現象でも最大規模、「ゴジラ級」と例えられるものが昨年からはじまっているのです。

2015年8月ハワイ大学マノア校の海洋学者Kelvin Richardsらは太平洋の赤道付近に調査航海にでていたところ、偶然にもその徴候に遭遇しました。記事ではその調査の物語を読むことができます。

 

「エルニーニョがいつ発生し、どのくらいの規模になるのか?」

その予測ができれば、干ばつや洪水が発生する数カ月前に警告を出せるようになるかもしれません。しかし、タイミングよく太平洋の真ん中に調査のために船を出すことは大変難しいことです。今回の”偶然”により多くのデータが得られ、エルニーニョ現象の予測に役にたつかもしれませんね。

 さて、その最大規模エルニーニョの影響で昨年末から多くの災害が発生しています(関連記事)。特に大きいのは昨年12月27日に起こった南米パラグアイ、アルゼンチン、ウルグアイの集中豪雨。15万人以上が避難を余儀なくされたということです。

洪水にみまわれたウルグアイの都市(出典:AFP BB News)

洪水にみまわれたウルグアイの都市(出典:AFP BB News)

 

さらに、今年度は世界中で「史上最も暑い年」とされ、米国では暖房需要の減少観測から天然ガス価格が16年ぶりの安値をつけています。世界的な農作物の不作で食料品のインフレ圧力への懸念も高まっているという状況です。

変動気候に対応できる予測研究の進展を願うばかりです。

 

炭素を大気から取り出す技術が事業化?

「2015年10月9日、カーボン・エンジニアリング社は炭素補足・再生を行う新しいプラントを正式に稼働させた」

 大気から二酸化炭素を取り込み、炭素源として使う。そんなことは非現実なことだと考えられていました。しかし、昨年カナダと、スイスの企業がこの方法で商業化の手前までこぎつけたのです。その2つの企業はカーボン・エンジニアリング(Carbon Engineering Ltd.)クライムワークス(Climeworks)。今回の記事では、これらの事業に対する取り組みとコストを考慮した実現性について読むことができます。

2社のロゴ

2社のロゴ

 

ではどのように二酸化炭素を変換するのでしょうか。

カーボン・エンジニアリング社は大気中から抽出した二酸化炭素を原料としてディーゼル燃料を製造し、地元のバスの燃料にしようとしています。プラントの概略は下図のとおり。

ファンを使って、タワーに空気を通す。タワーには水酸化カリウム溶液(KOH、補足溶液)が入っていて、これを二酸化炭素(CO2)と反応させ、炭酸カリウム(K2CO3)として捕捉する。補足した純粋な二酸化炭素を分離した後、残った溶液は補足溶液として再利用するというわけです。

 

二酸化炭素回収プラント(出典:同社HPより)

二酸化炭素回収プラント(出典:同社HPより)

 

このプラントの状況と仕組みを解説した動画も紹介されています。とってもシンプルですが、これで採算がとれるのかが最も気になるところですね。

 

一方で、クライムワークス社は同様な手法で抽出した二酸化炭素を顧客企業に販売することを計画しており、さらにその顧客企業は、二酸化炭素を利用して温室内の作物の増進を促進しようとしているとのことです。

カーボンニュートラル(二酸化炭素の発生と固定を制御し、地球上の二酸化炭素を一定に保つという概念)が叫ばれる中、貢献できるかわからないですが、面白い取り組みだと思います。

 

細菌から新しい遺伝子カッター発見

 「CRISPR/Cas9の難点を解消できるかもしれない新しい酵素が見つかった」

  昨年のScience誌が選ぶ「2015年のブレイクスルー研究」にも選ばれた、ゲノム編集技術「CRISPR/Cas9」。超ノーベル賞級の発見ともいわれ、開発者のジェニファー・ダウドナ エマニュエル・シャルパンティエは早くもノーベル賞の最有力候補者として名前があがっています。

 この技術の先駆者であり、ビジネスにつなげようとしている若き天才Feng Zhang(MIT)が、昨年9月にこの技術の「新プロセス」を発見し、報告しました(Cell DOI: 10.1016/j.cell.2015.09.038)。その内容が本記事では読めます。

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Feng Zhang

 

発見されたのは「Cpf1」という酵素。CRISPR/Cas9ではDNAを切断するのにCas9というタンパク質(酵素)を使いますが、その際、2分子のRNAが必要でした。代わりにCpf1を使えば、1分子だけで切断できる

そうなるとCas9はいらないの?と思うかもしれませんが、両たんぱく質はDNAの切断する場所もことなるため、相補的に使うことができるということです。

トップジャーナルでは毎月といいぐらい目にする本技術は、日進月歩であり、多くの研究者の参入により磨きがかかることは疑いないようです。それにしても、このFeng Zangはまだ若干33歳。岡崎アワードのシンポジウムで拝見しましたが、いやはやびっくりするぐらい優秀でした。

 

その他の記事

上記記事の他にも、今月号も盛り沢山。まず、「ゲノム編集ブタ、ペット販売へ」という記事が無料公開されています。また、筋萎縮の治療法につながる研究を執筆した記事、「筋ジストロフィーモデルの子犬を救った予想外の変異」やグーグルなどの巨大テクノロジー企業が、生命科学分野の一流研究者を引き入れていることに関する記事「生命科学界の頭脳が続々とテクノロジー企業へ」もオススメです。

さらに、日本人の研究者を紹介する「Japanese Author」からは、老化の仕組みの解明研究を行っているワシントン大学医学部の今井眞一郎教授を紹介しています。

今井教授は、老化制御の中核となる「サーチュイン遺伝子」の機能を2000年に発見し(Nature, DOI:10.1038/35001622)、最近さらに脳の視床下部がコントロールセンターとしての役割をになっていること、また、脂肪組織と骨格筋での働きが重要だということを報告しています。

今井眞一郎教授

今井眞一郎教授

 

日本語で読める最新科学記事

さて、Natureダイジェストの今月号のほんの一部を紹介しましたが、どうでしょうか。日頃から自身の化学研究で集中しているテーマとは全く異なると思います。

もちろん、自身の関連分野のプロになるのはとっても重要なことですが、サイエンスの最新研究もフォローしておくことは、研究の非線形展開のためにも、科学者としての教養としても重要なことです。最新科学研究を日本語で簡単にフォローできる雑誌は、他にはないと思いますので、興味のある方はぜひ購読を!

 

*本記事はNatureダイジェストの内容を筆者が個人的な感想を含めて紹介したものであり、記事自体の内容とは異なります。

 

Natureダイジェスト関連過去記事

 

外部リンク

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院准教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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