[スポンサーリンク]

元素

窒素 Nitrogen -アミノ酸、タンパク質、DNAの主要元素

[スポンサーリンク]

 空気の80%を占める窒素は、アミノ酸やDNAなど、生体分子の主要構成元素として知られています。その一方で窒素酸化物は、大気汚染の原因としても知られています。

 

窒素の基本物性データ

分類 非金属
原子番号・原子量 (14.0067)
電子配置 2s22p3
密度 1.2506 kg/m
融点 – 209.86℃
沸点 –195.8℃
硬度
色・形状 無色・気体
存在度 地球 25ppm、宇宙3.17✕106
クラーク数 0.03%(16位)
発見者 ダニエル・ラザフォード(1772年)
主な同位体 14N (99.632%), 15N (0.368%)
用途例 アミノ酸、タンパク質、DNAの主要元素、冷却材(液体窒素)、アンモニア生産の原料、狭心症の薬(NO)
前後の元素 炭素窒素酸素

「生命がない」気体?

密閉容器内でろうそくを燃やすと、酸素が消費され、二酸化炭素が発生します。次は、徐々に消え、残った気体は燃えません。この現象は昔から知られていました。

スコットランドの化学者であったラザフォードは、二酸化炭素を吸収する溶液に通すことで、その残りの気体を単離することに成功しました。その気体中ではネズミなどの生き物がすぐに窒息死することから、「有毒な空気」(noxious air)と呼びました。

その後、1789年にラボアジェ(水素参照)によってこれが元素であることが証明され、フランス語で「生命がない」という意味のazoteと命名されました。現在の窒素の英語名(Nitrogen)は、ギリシャ語のNitron(硝石の意)とgennen(「作る」の意)に由来しています。

 

ダニエル・ラザフォード

Daniel Rutherford

Daniel Rutherford

1749-1819年 スコットランドの医者、化学者。エディンバラ大学植物学教授(エディンバラ大学はスコットランドの首都エディンバラにある)。ラザホージウムの由来である、ラザフォードとは別人である。

 

アミノ酸・たんぱく質の主要元素

窒素は、私達の体を構成するたんぱく質の元であるアミノ酸や、遺伝子情報などを伝達するDNA(デオキシリポ核酸)の構成成分である核酸塩基(ヌクレオチド)などに多く含まれており、人間にとって必須の元素であるといえます。

2016-02-13_21-16-49

 

何でも凍る?液体窒素

「バナナで釘を叩くことができます!」

こんなフレーズ一度は聞いたことがあると思います。これは、窒素を液化した液体窒素でバナナを凍らせることによって可能にしています。液体窒素の温度はおよそ−196℃です。液体ヘリウムよりは沸点が高温ですが、価格は10分の1程度であるため、各種分析機器や高温超伝導体、実験室での低温実験などで冷却材として用いられています。

2016-02-13_21-20-44

 

大気汚染の原因、ノックス(NOx)

ノックス(NOx)は工場や自動車の排気ガスから排出される窒素酸化物の総称です。ものが燃えるときに空気中の酸素と高温で結びつくことにより、一酸化窒素(NO)や二酸化窒素(NO2)などとして発生します。呼吸障害、肺水腫、肺がんの原因物質であり、人体に悪い影響を与えるだけでなく、酸性雨の原因としても知られています。

2016-02-13_21-25-45

 

アンモニアの合成

窒素の水素酸化物であるアンモニア(NH3は、それ自体は有害で、強烈な刺激臭があります。

しかし、工業的には非常に重要な化合物です。高校でも学ぶ、炭酸ナトリウムの原料(アンモニアソーダ法)や、硝酸の原料(オストワルト法)となる他、重要な肥料である尿素や各種窒素酸化物の原料となります。

工業的には、窒素と水素に鉄化合物などの触媒を用いて、500℃、1000気圧付近で直接反応させ精算します(ハーバー・ボッシュ法)。この反応が開発されたのおかげで、大量の食料生産が可能となりました。しかし最近では、ハーバー・ボッシュ法のような高温、高圧を必要としない温和な条件でのアンモニア生産が研究されています。

マメ科の植物の根に共生する根粒バクテリアの中に存在するニトロゲナーゼ(窒素固定酵素)という酵素を用いて、新たな省エネルギー工業プロセスの開発に利用する試みがなされているのです。生命の力は素晴らしいですね。

 

2016-02-13_21-48-05

 

窒素に関するケムステ関連記事

 

関連動画

 

関連書籍

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. リン Phosphorusー体の中の重要分子DNAの構成成分。肥…
  2. 「元素戦略プロジェクト」に関する研究開発課題の募集について
  3. クリスマス化学史 元素記号Hの発見
  4. 硫黄 Sulfurーニンニク、タマネギから加硫剤まで
  5. ヘリウム Helium -空気より軽い! 超伝導磁石の冷却材
  6. 希少金属
  7. えれめんトランプをやってみた
  8. 元素のふるさと図鑑

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 【第11回Vシンポ特別企画】講師紹介①:東原 知哉 先生
  2. 非対称化合成戦略:レセルピン合成
  3. アクセラレーションプログラム 「BRAVE 2021 Spring」 参加チームのエントリー受付中!(5/10〆切)
  4. ストリゴラクトン類縁体の構造活性相関研究 ―海外企業ポスドク―
  5. 定番フィルム「ベルビア100」が米国で販売中止。含まれている化学薬品が有害指定に
  6. 売切れ必至!?ガロン瓶をまもるうわさの「ガロテクト」試してみた
  7. CSJカレントレビューシリーズ書評
  8. ハラスメントから自分を守るために。他人を守るために【アメリカで Ph.D. を取る –オリエンテーションの巻 その 2-】
  9. ミニスキ反応 Minisci Reaction
  10. ジョージ・スミス George P Smith

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年2月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
29  

注目情報

最新記事

実験条件検討・最適化特化サービス miHubのメジャーアップデートのご紹介 -実験点検討と試行錯誤プラットフォーム-

開催日:2023/12/13 申し込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の…

カルボン酸β位のC–Hをベターに臭素化できる配位子さん!

カルボン酸のb位C(sp3)–H結合を直接臭素化できるイソキノリン配位子が開発された。イソキノリンに…

【12月開催】第十四回 マツモトファインケミカル技術セミナー   有機金属化合物 オルガチックスの性状、反応性とその用途

■セミナー概要当社ではチタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素等の有機金属化合物を“オルガチッ…

保護基の使用を最小限に抑えたペプチド伸長反応の開発

第584回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 薬学系研究科 有機合成化学教室(金井研究室)の…

【ナード研究所】新卒採用情報(2025年卒)

NARDでの業務は、「研究すること」。入社から、30代・40代・50代……

書類選考は3分で決まる!面接に進める人、進めない人

人事担当者は面接に進む人、進まない人をどう判断しているのか?転職活動中の方から、…

期待度⭘!サンドイッチ化合物の新顔「シクロセン」

π共役系配位子と金属が交互に配位しながら環を形成したサンドイッチ化合物の合成が達成された。嵩高い置換…

塩基が肝!シクロヘキセンのcis-1,3-カルボホウ素化反応

ニッケル触媒を用いたシクロヘキセンの位置および立体選択的なカルボホウ素化反応が開発された。用いる塩基…

中国へ行ってきました 西安・上海・北京編①

2015年(もう8年前ですね)、中国に講演旅行に行った際に記事を書きました(実は途中で断念し最後まで…

アゾ重合開始剤の特徴と選び方

ラジカル重合はビニルモノマーなどの重合に用いられる方法で、開始反応、成長反応、停止反応を素反応とする…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP