[スポンサーリンク]

一般的な話題

糖鎖合成化学は芸術か?

有機合成化学者の中でも恐れられている合成反応はなんでしょうか?やはり爆発の可能性のある反応かもしれません。

でも、生成する結合の構造の重要さにかかわらずいやがられている反応があります。

それはグリコシド形成反応ではないでしょうか?異論はたくさんあると思いますが、話の都合上受け付けません。

グリコシド結合とは、糖と糖、または、糖と糖以外の分子をつなぐ結合で、一般的にはアセタールのことを言います。アセタールなんてそんなに難しいの?と思われるかもしれませんが、糖は多くのヒドロキシ基からなる化合物群であるため、位置や立体の選択性を制御することがとんでもなく面倒くさいのです。

こんな反応を取り扱いをする研究者達は、キット芸術家に違いないと思います。

今日はそんな思いを何となくつぶやきます。

配糖体

 

理解できないことが理解できたあの日

筆者が最初に出席した学会(まだスライドを使用している時代ですが)では、当時4年生と言うこともあり、どこの会場に行ったらいいのかわからないので仕方なく、「糖鎖工学」のセッションにいきました。

4年生と言っても卒論終了時なので、いろいろな糖鎖の構造があり、多種多様な生理活性を示すことはある程度理解していました。
が、しかし、糖鎖合成のセッションに半日いた結果は、
「何も理解できない」と言うことが理解できた、ということでした。
構成している単糖の構造はわかるんですが、最初に提示されたオリゴ糖をどう組み立てるのかが全く検討つかないし、発表者は当たり前のようにいとも簡単に話を進めていきます。
そりゃぁ,話について行けるわけもありません。

WS000001

糖鎖合成反応の流れ。見た目は単純なんです。

 

時間が経てばわかった気になる

現在、そんな話もある程度笑い話になりつつあります。まあ、うん十年も経てばグリコシド結合形成反応(リンク先は一例です)や保護基にどういったものがあるのかは、だいたい知っていますから。

しかし、どういったグリコシド形成反応を選択するのか、どの手順でつなげるのか、保護基はどうするの?

なんて話は未だに理屈だけでは到底理解できません。各々の反応を理解するのは簡単なんですけどね。

糖以外の天然物でも構造は複雑だし合成戦略はキット大変なんだと容易に想像できますが、糖はひたすらOHだけ。

その手順などの発想は、もはや芸術的というしかないんです。匠の技、という言い方もできるかもしれません。

ということで、もしこれから糖鎖工学の研究者を目指すのであれば、芸術の心も育てることをおすすめします。

ケムステの記事をたくさん読んでも良し、ご存じの方も多いかと思いますが、有機化学美術館なんていうサイトもあるのでじっくり分子の芸術を見るというのも良し。

やっぱり分子を書くのが一番かもしれません。習うより慣れよ、的に。

いずれにせよ、是非糖鎖工学の世界に行ってみてください。何か新しいものを感じることができるかもしれませんよ。

糖の世界を知りたい方は是非こちらへ→Forum of Carbohydrate: Coming of Age

ただ私は基本的に芸術鑑賞をする方を楽しみたいと思います。あまり芸術を作るというセンスはないもので。

 

関連書籍

The following two tabs change content below.
あぽとーしす

あぽとーしす

微生物から動物、遺伝子工学から有機合成化学まで広く 浅く研究してきました。論文紹介や学会報告などを通じて、研究者間の橋掛けのお手 伝いをできればと思います。一応、大学教員で、糖や酵素の研究をしております。
あぽとーしす

最新記事 by あぽとーしす (全て見る)

関連記事

  1. “かぼちゃ分子”内で分子内Diels–Alder反応
  2. 化学のちからで抗体医薬を武装する
  3. 構造式を美しく書くために【準備編】
  4. 実験化学のピアレビューブログ: Blog Syn
  5. 中国へ講演旅行へいってきました②
  6. 複雑化合物合成にも適用可能なC-H酸化反応
  7. 摩訶不思議なルイス酸・トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン
  8. ビタミンと金属錯体から合成した人工の酵素

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 日本化学会 平成17年度各賞受賞者決まる
  2. 化学グランプリ 参加者を募集
  3. 黒田 玲子 Reiko Kuroda
  4. Ph.D. Comics – Piled Higher and Deeper
  5. 玉尾・フレミング酸化 Tamao-Fleming Oxidation
  6. アカデミックの世界は理不尽か?
  7. 梅干し入れると食中毒を起こしにくい?
  8. 有機反応を俯瞰する ーリンの化学 その 1 (Wittig 型シン脱離)ー
  9. 「フラストレイティド・ルイスペアが拓く革新的変換」ミュンスター大学・Erker研より
  10. トリメチレンメタン付加環化 Trimethylenemethane(TMM) Cycloaddition

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

二重可変領域抗体 Dual Variable Domain Immunoglobulin

抗体医薬はリウマチやガンなどの難治性疾患治療に有効であり、現在までに活発に開発が進められてきた。…

サイエンスイングリッシュキャンプin東京工科大学

産業のグローバル化が進み、エンジニアにも国際的なセンスや語学力が求められているなか、東京工科大学(東…

特定の場所の遺伝子を活性化できる新しい分子の開発

ついにスポットライトリサーチも150回。第150回目は理化学研究所 博士研究員の谷口 純一 (たにぐ…

出光・昭和シェル、統合を発表

石油元売り2位の出光興産と4位の昭和シェル石油は10日、2019年4月に経営統合すると正式に発表した…

天然物の全合成研究ーChemical Times特集より

関東化学が発行する化学情報誌「ケミカルタイムズ」。年4回発行のこの無料雑誌の紹介をしています。…

「アジア発メジャー」狙う大陽日酸、欧州市場に参入

大陽日酸は北米に次ぐ成長が見込める欧州市場に参入を果たす。同業の米プラクスエアが欧州で展開する産業ガ…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP