[スポンサーリンク]

一般的な話題

超若手科学者の発表会、サイエンス・インカレの優秀者インタビュー

[スポンサーリンク]

大学生・高専生による自主研究の祭典、サイエンス・インカレの研究発表会に参加しました。発表会の様子と化学分野で審査員ポスター賞を受賞した藤田 祐輝さんへのインタビューをお伝えします。

サイエンス・インカレ発表会

以前、ケムステニュースでお伝えしましたが、サイエンス・インカレは、学生の能力・研究意欲を高め、創造性豊かな科学技術人材を学部生から育成することを目的に、自然科学分野を学ぶ全国の学生が自主研究の成果を発表し競い合う場として文部科学省、JSTと協力企業が共同で開催している企画です。分野は、化学に限らず、物理、生物、数学など様々な分野の研究が対象です。

発表会では、書類選考を勝ち抜いたチームが口頭発表かポスター発表を行い、その中でも特に優秀な発表が表彰されます。さらに、優秀者の中から選ばれたメンバーは、欧州やアメリカなどの一流研究機関の見学ツアーに無償で招待されます。今年の発表会は、3月3日と4日に筑波大学春日キャンパスで行われました。

2022年4月追記 2021年度からサイエンス・インカレの枠を高校生まで広げた「サイエンス・カンファレンス」という企画に変わったようです。

発表会の様子

一日目は開会式の後、各分野に分かれて口頭発表が行われました。化学分野は残念ながら少なく、数学分野と合同のセッションでした。一方で工学というセッションの方が化学に関する発表が多く、そちらを聴講していました。とても初々しく、原稿をしっかり暗記して読んでいたり時間きっちりと終わらせていたりと自分の初めての発表を思い出しました。ポスター発表では、ポスターだけでなく様々な小道具を用意してアピールしている場面も見受けられ大変面白かったです。一方で、英語のポスターを準備している学生さんもいて将来の国際学会参加も視野に入れているように見えました。

一日目の後の懇親会では、ほとんどの学生が集まり学生同士や協力企業の社員さんといろいろな話をしていました。学生にはサイエンスインカレオリジナルの名刺が準備され、企業交流会さながらの名刺交換により交流が深まれていました。ただし、未成年の学生さんもいるのでお酒の提供ありませんでした。。。。。。

懇親会の様子。会場にすし詰めでした。

二日目は、基調講演の後、表彰式が執り行われました。文部科学大臣賞、審査員賞などの受賞者が表彰されていました。協力企業が独自に評価し受賞者を決定する企業賞では、各企業の思い入れの強い発表が受賞していた気がします。

協力企業の紹介

受賞者インタビュー

化学分野で審査員ポスター賞を受賞した東北大学理学部化学科の藤田 祐輝さんに受賞後インタビューを行いました。藤田さんは大学四年生で、有機物理化学研究室に所属しています。光環境変化に応答した光合成アンテナタンパク質の膜内移動の検証という研究内容で受賞しました。

藤田 祐輝さん

  • 受賞した発表は、どのような研究についてですか?

    私が所属する研究室で新たに開発された顕微鏡を用いることで、細胞を壊さずに光合成タンパク質の葉緑体内の分布を観測することができます。その観測結果をもとに光合成タンパク質が光環境に応答してどのように移動するのか検証を行いました。

  • 研究で自分で工夫したところはどこですか?

    研究が行き詰っていたとき、得られたデータをとりあえず様々な観点から解析してみましたそうすることで面白い相関を発見することができ、今回の研究発表までもっていくことができました。

  • 逆に研究で苦労したところはどこですか?

    研究室で測定に用いる単細胞緑藻を培養しているのですが、身近に生物の培養に詳しい人がいなかったので、その培養方法を確立するのはとても苦労しました。

  • 将来は、どのようなキャリアを考えていますか?

    博士号を取得し、その後企業の研究員として働きたいと考えています。具体的な企業はまだ考えていませんが、光学系に関する装置開発を行う仕事をしたいです。

  • 研究奨励金はどのように使う予定ですか?

    将来のために貯金します。(笑)

  • 最後にケムステ読者にメッセージをお願いします。

    私の研究をこのような形で評価していただけて、とても嬉しいです。研究者としてはまだまだ未熟ですので、これからさらに精進していこうと思います。ありがとうございました。

このように、国際学会での発表や論文執筆など今後の活躍が非常に期待される超若手研究者でした。

感想

発表を聞いて、学生が本当に主体で研究を行っていることが感じられました。ただ化学分野の研究発表は少なく、日々の生活と化学は密着しているだけにより活発な学生主体の研究が期待されます。

大学や研究期間も以前と比べてオープンに分析機器を利用公開しているため、研究室に属していなくてもいろいろな研究ができると思います。交流会では多くの学生と話す機会があり、研究への思いを強く感じることができました。一方で、大学四年生で就職するという話もよく聞かれ、せっかく面白い研究を行っているので少し残念に感じられました。また、参加常連校も多く見受けられました。

そのため今後より広く多くの学生が参加し、このイベントが研究者の登竜門的なイベントになることを個人的に期待しています。

関連書籍

関連リンク

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. [5+1]環化戦略による触媒的置換シクロヘキサン合成
  2. 電化で実現する脱炭素化ソリューション 〜蒸留・焼成・ケミカルリ…
  3. 世界最高の活性を示すアンモニア合成触媒の開発
  4. 有機電解合成プラットフォーム「SynLectro」
  5. Retraction watch リトラクション・ウオッチ
  6. Reaxys Prize 2017ファイナリスト発表
  7. ご注文は海外大学院ですか?〜出願編〜
  8. 2007年ノーベル化学賞『固体表面上の化学反応の研究』

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 日本薬学会第125年会
  2. キラル情報を保存したまま水に溶ける不斉結晶
  3. アカデミアからバイオベンチャーへ 40代の挑戦を成功させた「ビジョンマッチング」
  4. 2010年ノーベル化学賞予想ーケムステ版
  5. その化合物、信じて大丈夫ですか? 〜創薬におけるワルいヤツら〜
  6. ナノ合金の結晶構造制御法の開発に成功 -革新的材料の創製へ-
  7. AIによる創薬に新たな可能性 その研究と最新技術に迫る ~米・Insitro社 / 英・ケンブリッジ大学の研究から~
  8. 科学部をもっと増やそうよ
  9. キャロル転位 Carroll Rearrangement
  10. フロイド・ロムスバーグ Floyd E. Romesberg

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年3月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

【12月開催】第十四回 マツモトファインケミカル技術セミナー   有機金属化合物 オルガチックスの性状、反応性とその用途

■セミナー概要当社ではチタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素等の有機金属化合物を“オルガチッ…

保護基の使用を最小限に抑えたペプチド伸長反応の開発

第584回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 薬学系研究科 有機合成化学教室(金井研究室)の…

【ナード研究所】新卒採用情報(2025年卒)

NARDでの業務は、「研究すること」。入社から、30代・40代・50代……

書類選考は3分で決まる!面接に進める人、進めない人

人事担当者は面接に進む人、進まない人をどう判断しているのか?転職活動中の方から、…

期待度⭘!サンドイッチ化合物の新顔「シクロセン」

π共役系配位子と金属が交互に配位しながら環を形成したサンドイッチ化合物の合成が達成された。嵩高い置換…

塩基が肝!シクロヘキセンのcis-1,3-カルボホウ素化反応

ニッケル触媒を用いたシクロヘキセンの位置および立体選択的なカルボホウ素化反応が開発された。用いる塩基…

中国へ行ってきました 西安・上海・北京編①

2015年(もう8年前ですね)、中国に講演旅行に行った際に記事を書きました(実は途中で断念し最後まで…

アゾ重合開始剤の特徴と選び方

ラジカル重合はビニルモノマーなどの重合に用いられる方法で、開始反応、成長反応、停止反応を素反応とする…

先端事例から深掘りする、マテリアルズ・インフォマティクスと計算科学の融合

開催日:2023/12/20 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

最新の電子顕微鏡法によりポリエチレン分子鎖の向きを可視化することに成功

第583回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院 工学研究科 応用化学専攻 陣内研究室の狩野見 …

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP