[スポンサーリンク]

一般的な話題

ICMSE International Conference on Molecular Systems Engineering

[スポンサーリンク]

研究室の新年度も始まり、皆様の研究室でも新入生が加入し慌ただしい日々が続いているのではないでしょうか? 今日はスイスでの国際学会のお知らせです。

近年、ベシクルに立脚する人工細胞モデルや、合成生物学に基づく細胞機能のエンジニアリング代表されるように複雑なシステムを人工的に構築するといった方向性の研究が多く報告されるようになってきました。このような潮流の中で2014年にスイスで発足した、NCCR MSE (Molecular System Engineering)というプロジェクトが8月にスイス、バーゼルで国際学会を主催します。

概要

主催; NCCR

開催日 ; 2017年8月27-29日

会場 ; バーゼル大学 (Petersplatz 1, CH-4051 Basel, Switzerland)

交通 : バーゼル-ユーロエアポートよりバス50番と31番で約20分(スイス国内の公共交通機関はSBBで検索できます)

参加費学生); 450 CHF(250CHF

要旨締め切り; 2017年5月31日

参加申込 : HP参照

問い合わせ先 : Phone: +41 31 311 74 34
E-Mail: icmse17(at)viva-management.ch
Postal address.: Viva Management GmbH, Kramgasse 16, CH-3011 Bern

学会のテーマは機能性分子の開発と、分子間の高次ネットワークの構築、そしてそれらを用いてた応用研究として細胞エンジニアリングなどです。つまり、何か”機能”を発現する”システム”の構築をめざした機能性分子の開発から合成生物学までの広い分野が対象になります。より具体的には、NCCR MSEのHPをご参照ください。Invited speakerとしては、ノーベル化学賞を受賞したStefan E. Hell, Ben L. Feringaを始めとする、以下の方々が予定されています。プログラムはまだ発表されていませんが、招待講演者は以下の通り。(以下、敬称略)

招待講演者

要旨の締め切りは5月31日。口頭発表とポスター発表は提出された1200文字の要旨をもとに事務局から選らばれます。 化学的あるいは生物学的システムエンジニアリングの分野の研究に興味のある方、ラボを抜け出し8月のスイスに遊びに来たい方、現在発表者を絶賛募集中とのことですので奮ってご応募ください。

ところで、本学会を主催するNCCR、NCCR MSEとは一体なんぞや? という方も多いのではないでしょうか? というわけで、ここからはスイスのNCCRと呼ばれるグラントモジュールについて少しだけ紹介します。

NCCRとその目的

NCCR (National centers of competence in research)はSNSF(Swiss National Science Foundation)が企画し、2000年に開始されたプロジェクトベースの研究機関横断型グラントの一つです。領域は社会科学などを含むサイエンス全般で、現在21のプロジェクトが継続されています。この大型グラントの最大の特徴は、参加している研究グループ間の共同研究がとても強く推奨されていることにあります。すなわちNCCRの個々のプロジェクトの中では、これまで各研究グループのが培ってきた強みを生かし、一つのグループでは達成困難な境界領域の研究にチャレンジしたり、コラボレーションによってた新らたな研究分野の開拓することが目的とされています。

NCCRの制度設計

NCCRのプロジェクトの期間は3年単位で最高12年まで継続可能であるので、研究者としては長期的な視点に立って研究を行える利点があります。一方で、適切な共同研究が実施されていないとプロジェクトが終了もしくは、研究の流動性を高めるために研究グループの組み替えの対象とされてしまいます。グラントにつきものの研究の査定はかなり厳しく、ほぼ毎年行われ、 個々の研究グループの強みをコラボレーションにより最大限活用することが求められています。この査定はPIだけでなく、プロジェクトに参画するポスドク、学生全員が審査員の前で発表することを課されるため、プロジェクトに関わる全員がその方向性にある程度合致した研究を行う必要があります。そのために、プロジェクトに関わる全員が研究発表するリトリート(日本で言うと談話会)などを積極的に行うほか、国際学会などを主催することでプロジェクトチームの活性化を図っています。このような厳しい制度設計のもとで、コラボをたくさんして新たな価値を生み出そう!という目標のを掲げ、数多くの研究が推進されています。

NCCR MSE

そのNCCRプロジェクトの一つとして、バーゼル大学とスイス連邦工科大学チューリッヒ校が主導して、2014年より発足したのがNCCR MSE (molecular system engineering)です。このプロジェクトはバーゼル大学とETHのほか、EPFL, ジュネーブ大学、ベルン大学、 PSI(Paul Scherrer Institute)、FMI (Friedrich Miescher Institute)などで構成されており、合成化学、高分子化学、ケミカルバイオロジーから、合成生物学、神経科学までの多岐に渡る研究グループが参加しています。

コラボレーションとグラントの今後

近年名古屋大学のITbMやスイスのNCCRのように、全く毛色の違う研究室同士がお互いの強みを生かした、「分野間の障壁(知識やスキル)が大きく手が出せなかったこと」に挑戦できる共同研究が活発になってきています。その一方で、これまでのように専門分野同士でプロジェクトを形成することはより深い分野の理解には必須ですし、今後も続けていくべきだと筆者は強く考えていますが、毛色の違う研究者同士が集まって新たな価値を生み出すことも可能なはずです。現在、NCCRで行っているような境界領域の研究は増加傾向にあり、今後ますます加速するであろうと考えられます。そういった流れの中で、コラボレーションを研究者に強制することで新たなサイエンスを生み出すことを求めるグラントもそれに応じて今後増加するのではないでしょうか?

最後はコラボとグラントの話になり、話題が若干逸れてしまいましたが、このような境界領域の最先端の研究をバーゼルで見てみるのはいかがでしょうか?本学会で講演される先生方は毎年のようにCNSを出すスラッガーばかりです。私もとても楽しみにしていて、全合成が達成できてボスの許しが出ればめでたく参加できる予定です。今回はこの辺で。

関連リンク

Gakushi

投稿者の記事一覧

東京の大学で修士を修了後、インターンを挟み、スイスで博士課程の学生として働いていました。現在オーストリアでポスドクをしています。博士号は取れたものの、ハンドルネームは変えられないようなので、今後もGakushiで通します。

関連記事

  1. 超原子価ヨウ素試薬PIFAで芳香族アミドをヒドロキシ化
  2. クリーンなラジカル反応で官能基化する
  3. 「決断できる人」がしている3つのこと
  4. 第七回ケムステVプレミアレクチャー「触媒との『掛け算』で研究者を…
  5. 初めてTOEICを受験してみた~学部生の挑戦記録~
  6. Impact Factorかh-indexか、それとも・・・
  7. \課題に対してマイクロ波を試してみたい方へ/オンライン個別相談会…
  8. ハイフン(-)の使い方

注目情報

ピックアップ記事

  1. 結合をアリーヴェデルチ! Agarozizanol Bの全合成
  2. 鉄触媒を用いて効率的かつ選択的な炭素-水素結合どうしのクロスカップリング反応を実現
  3. 白い有機ナノチューブの大量合成に成功
  4. 根岸 英一 Eiichi Negishi
  5. 紅麹を含むサプリメントで重篤な健康被害、原因物質の特定急ぐ
  6. クルチウス転位 Curtius Rearrangement
  7. 株式会社ユーグレナ マザーズに上場
  8. グリーンケミストリー Green Chemistry
  9. NMRの基礎知識【測定・解析編】
  10. 新しい選択的ヨウ素化試薬

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年4月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

注目情報

最新記事

酸素は系内に入り込み続ける【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

アンモニウム構造によりラジカル種の発生位置を完全に制御!

第710回のスポットライトリサーチは、関西学院大学理工学研究科 村上研究室の榊原 陽太(さかきばら …

化学つれづれ草【ある研究者の回想】

概要物理化学者で量子機能材料を専門とする著者によるエッセイ集.化学者としての研究,教育,人生…

第60回有機反応若手の会

開催概要有機反応若手の会は、有機化学分野で研究を行う全国の大学院生を中心とした若手研究者が集い、…

ノーベル賞受賞者と語り合う5日間!「第18回HOPEミーティング」参加者募集!

申し込みはこちら概要主催:独立行政法人 日本学術振興会(JSPS)開催地:神奈川…

光触媒による高効率なCO2還元の実現―まさかの光を弱く当てることが重要だった―

第709回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 理学院(前田研究室)博士後期課程2年の仲田竜一 …

「π-πスタッキング」という言葉が生む誤解【芳香環の相互作用を見直す: 前編】

芳香環が平行に並んで近接しているとき、その構造を「π–π スタッキング」と表されることがよくあります…

一重項酸素によるC(sp2)−P結合切断を用いた長波長光によるリン化合物のアンケージング

第 708 回のスポットライトリサーチは、同志社女子大学 薬学部 医療薬学科 5…

マテリアルズ・インフォマティクスにおける画像解析の活用ガイド

開催概要材料開発において、電子顕微鏡やX線トモグラフィーを用いて材料の微細構造を観察するために画…

世界初のPROTAC医薬、ついに承認 ―「タンパク質を阻害する」から「分解する」時代へ

2026年5月、創薬化学の歴史に残る大きな出来事が起きました。米国 FDA は、…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP