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リチウムイオン電池の課題のはなし-1

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Tshozoです。

以前リチウムイオン電池に関するトピックを2つほど紹介した(記事:リチウムイオン電池のはなし~1~; 水と塩とリチウム電池 ~リチウムイオン電池のはなし2にかえて~)のですが、皆様ご存知のとおりS社製電池(正確にはその子会社)がボーボー燃えていたという事故がここ1年くらい起こっていましたね。しかも、対策したと発表したはずのS社からその後製品もボーボー燃えてしまったため結局航空各社が対象品の機内持ち込みを制限するという異例の対応を取ることになったのは記憶に新しいことと思います。

S社関係の時系列の一覧表 筆者が昨年内に把握したぶんだけですので追記ご指摘願います
なおリコール前に対策品を1回出したものの、その対策品すらも発煙してしまったもよう

http://time.com/4485396/samsung-note-7-battery-fire-why/

例のアレの炎上を扱った動画

懸命な回収作業が行われたもようで根本解決が出来ているのか心配な状況だったのですが、最終的に評価会社各社や元SANYOの雨堤氏がS社へ公式な電池アドバイザーとして入るなどした結果、だいぶ事態が収束したという印象を受けます。それをまとめた記事がTech-on社のこちらの記事日刊工業新聞のこちらの記事で、噂に聞く伝説のSANYO組・・・もといSANYOの電池研究グループ員であった同氏の活躍ぶりがうかがえます。実際にWebに公開された同社のプレゼン資料(ICAO International Civil Aviation Organization 国際民間航空機関 こちら)によると下記のようなことがわかりました。

①炎上したのには、大きく2つの理由があった
②ひとつは電極端部の(構造と)始末が悪かった(不具合:2種類)
③もうひとつは電極タブ周辺の溶接状態と部品管理が甘かった(不具合:2種類)

ということのようです。

ただ、供給元は子会社のサムソンSDI、あとTDK子会社のATL(香港)で、どっちの電池にどのくらい不具合があって設計責任がどのくらい発生したのかは言及していないはモヤモヤします。まぁ有耶無耶にするのが今後の関係上良いと判断したのかもしれません。特に今回の新型電池は信頼性とウェブハンドリングのほぼ限界とも言える5um前後の極薄セパレータ(絶縁多孔フィルム)を使っているとの話が分解報告書を見るとわかるので、そこらへんの問題点は今後出てきてしまう可能性は残っている気がしています。

上記のプレゼン資料とS社のサイトから引っ張ってきた資料 まとめ
リンクは右記(S社の今年1月の報告集)
特にULの資料の方はそれ以外の問題も色々書いてあってわかりやすい

同社の電池を分解したことを報告している 米国Dream Weaver社の報告書より引用(こちら)
正極と負極を隔てる膜が6.6umしかないのがわかる
同社はFreudenbergやElectrovayaなどと競合するセパレータサプライヤ

 というわけでこれをハード的に改めるだけでなく、ほぼ全品を回収し、ソフトウェアアップデートを行い、デバイスと電池の動作試験を実行して動作に問題が無いかを確認する対策を行って安全宣言を出して幕引きとする模様ですが、政治的には色々とにおう噂を聞いています(こちらのブログが筆者の認識ともかなり近いです)。

資料から問題点に対する対策を抜粋してまとめた図
内容的にはあたりまえと言えばあたりまえかも・・・

しかしこの「リチウムイオン電池が燃える」事象はS社に限らず「どこでもどの会社が作ったものでも確率的に発生し得る」わけで、この部品を製造している宿命であると言えます。もちろん、電池を製造する関係各社は材料類・部品類を精密につくり、材料類で厳重な品質管理を行い、適切と考えた制御方法で動かし、試作品に対し厳しい試験を行っているのは間違いありません。しかしそれでも発生してしまっている。

理由としては下図のような可燃性液体を電解液を使用してるからじゃねーかというのが一つの結論であり、前回紹介した論文の成果がそれをひっくり返すポテンシャルを持っているのも事実なのですが、色々なバランスを考えると当面は同じ系統の可燃性電解液を使わざるを得ないのではないかと筆者は予想しております。

前回の記事から引用 どう見ても燃えやすそうな連中
(実際には燃えにくくする成分が鼻薬的に添加されていることが多い)

で、そうした背景をふまえ今回は冒頭のはなしも含め、「何故発煙したり燃えたりしてしもたのか」の原因を時系列的にちっと詳細に見てみようと思います。化学系の話とはまた外れるのですが、最終製品についてまわる宿命という点で非常に重要なことではないかと考えてみました。お付き合いください。(注:電池外の漏電や短絡による事故など、他のタイプの電池でも発生しうる事象については今回は取り扱いません

リチウムイオン電池の概念図 おさらいのため再掲
紫色のものが可燃性の有機溶剤を主成分としている電解液

【燃えの経緯と種類】

例のアレな写真の再掲 前回の記事より

これまで火災・発煙が起きたリチウム系電池について、一応時系列で起きた順に、特に新聞やWeb媒体に大きく載ったものを分類、発生年月、メーカ、事象概要、推定原因、の順に並べてみました。かの国でよく発生している細かい発熱事故などは本件には含んでおりませんのでご注意ください。

採り上げたのは主要メーカのみ 各種新聞・雑誌より1990年代からの事象をまとめました
(実際には他メーカでも多数トラブルが起きており、カナダ航空局によるこちらの資料など参照
あとUS関係で発生した事象をまとめたアメリカ連邦航空局によるこちらの資料も必見)

このように、基本的にはほとんどのケースが製造工程で発生したものですね。

しかし、実際には大きく3つに分類されます。1つは材料に異常が発生していた場合、1つは電池の製造工程内でその原因が発生してしまった場合。もう1つは電池の設計が悪かった場合。上記のS社のアドバイザーとなった「雨堤 徹」氏が日経テクノロジーオンライン版に同様の視点から書かれていたので、切り口としてはまず間違いがないと思います。それぞれの点につき、それぞれ代表例を通じてみていきましょう。

・・・と思ったのですが、かなり記事のサイズが大きくなりそうなので続きは後半へ・・・

 

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Tshozo

Tshozo

メーカ開発経験者(電気)。56歳。コンピュータを電算機と呼ぶ程度の老人。クラウジウスの論文から化学の世界に入る。ショーペンハウアーが嫌い。

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