[スポンサーリンク]

一般的な話題

異分野交流のススメ:ヨーロッパ若手研究者交流会参加体験より

[スポンサーリンク]

2か月ほど前、ヨーロッパ若手研究者交流会( A cross-disciplinary Network for Japanese Young Scientists in Europe)というイベントに参加してきました。今回はそんな国外の超マイナーな異分野交流会のお話をしようかと思います。今回は完全に化学の話ではありませんのでご容赦ください。

どんな組織なの?

この組織、2013年にドイツで研究されていたポスドクが中心となって、折角ヨーロッパに来て研究している人がたくさんいるのだから分野を超えて研究者どうしの交流しようよ!という思いから、立ち上げられたのがきっかけとなっています。その後、毎年夏に、ドイツを中心にヨーロッパの各地で一泊二日のイベントが開かれています。

過去の開催地はこんな感じです。

どんな人が参加するの?

2017年の交流会の参加者は総勢50名。参加者の研究分野は化学、生物学、地質学、素粒子物理学、臨床医学などのサイエンスに関わる研究者の方が大半ですが、中には心理学や哲学を研究されている方も何人かおられました。世代別では私のような博士課程の学生が15%程度、75%がポスドク、その他10%がこちらでポストをとったPIとマスターの学生といった感じです。ちなみに普通の学会とは異なり、子供連れで参加されている方も多くおられます。

のらりくらりと学生として研究をしている小生と違い、多くの方々が論文をバシバシ出している研究者ばかりです。日本のポジションを捨てて来ている人(小生には絶対できない芸当)、すでにこっちでPIになるつもりの学生など、皆さん意識が高くて、とてもエネルギッシュです。小生の師匠の師匠であられるK先生に会ってるみたい。

交流会のスケジュール

今年の交流会のスケジュールはこんな感じでした。セッションでは参加者全員が自己紹介と簡単な研究内容の紹介を1人8分程度(質問込み)で行います。

一日目

  • 13:00 受付
  • 13:15 開会
  • 13:30-15:00 午後のセッション1
  • 15:20-16:10 集合写真 その他
  • 16:10-17:40 午後のセッション2
  • 18:00-19:00 午後のセッション3
  • 20:00夕食、懇親会~2:00ホテル泊

二日目

  • 09:00-10:30 午前のセッション1
  • 11:10-12:20 午前のセッション2
  • 12:20 散会

異分野交流

みなさん、大学や研究所の外で異分野の方と交流する機会って、意外と少ないのではないでしょうか? 例えば、博士研究員の奨学金のリトリートなど()では、分野横断的な若手研究者が集まり、研究についてはもちろんその他将来のことについて語り合う機会が設けられています。また、大学や研究機関が主宰するワークショップなどでも同様な試みが行われています。

ですが、普通は学会など、同じ分野の研究者との交流の機会が圧倒的に多く、自然科学系から人文系まで、様々な様々な専門分野と研究経歴を持つ研究者と熱い議論ができる機会というのは国内外でも限られているのが現状かと思われます。このイベントの参加者の経歴は様々で、どうやって研究を進めてきたのか? どうやって今までのキャリアを歩んできたのか?など, 聞いて見たくなる魅力的な研究者がたくさん集まるので、そういった方々と話すのはとてもワクワクします。自分の今まで知らなかった世界を知ることもできます。エネルギーもたっぷりもらえます。仕事へのモチベーションも上がります。ラボで研究するのも大事ですが、たまには外に出て空気を吸ってみるのも気分をリフレッシュするのにいいのかもしれませんね。

まとめ

個人的には、このような機会が国内外でさらに発展することにより、一人の若手の研究者が多岐にわたる分野の研究者と出会い、密度の濃いディスカッションをし、斬新なアイディアが生まれたり、インスピレーションが得たりできるのではないかと期待しています。将来的にどのような科学研究にこういった場で培ったことが役に立つのかは分かりませんが、たまにはこういった分野外の研究を覗いてみるのも、自分のキャリアを見つめ、研究に磨きをかけるのにはいいのではないでしょうか?そして、こういった異分野交流に端を発した共同研究などが将来できると、とても面白いことになるのではないかと思っています。

と、かっこよく書いてしまいましたが、実際には、海外で研究しているということもあり、日本人というだけである意味親近感を覚え、酒を飲んでいるだけじゃないの? と言われれば、正直そうなのかもしれません(笑)。それでも、何かしらこういう機会からコネクションを作り、研究の幅を広げていくのも悪くはないかと思う次第で私も参加しています。こういったイベント, 身近には、理研やOISTなどの研究機関のワークショップなんかを探してみると見つかるかと思います。他にも、海外の大学や企業のサマースクールなども面白いかと思いますのでぜひ興味関心のある方は応募してみてください。今回はこの辺で。

不定期ではZurich ETH日本人会や、ボストンの研究者交流会などの組織など、研究者がたくさんおられるような大都市では、類似のセミナーなどが行われているようです。

Gakushi

投稿者の記事一覧

東京の大学で修士を修了後、インターンを挟み、スイスで博士課程の学生として働いていました。現在オーストリアでポスドクをしています。博士号は取れたものの、ハンドルネームは変えられないようなので、今後もGakushiで通します。

関連記事

  1. 無金属、温和な条件下で多置換ピリジンを構築する
  2. 逐次的ラジカル重合によるモノマー配列制御法
  3. 光電変換機能を有するナノシートの合成
  4. ビシナルジハライドテルペノイドの高効率全合成
  5. アメリカ企業研究員の生活③:新入社員の採用プロセス
  6. 留学せずに英語をマスターできるかやってみた(2年目)
  7. 細胞同士の相互作用を1細胞解析するための光反応性表面を開発
  8. 工業製品コストはどのように決まる?

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. ハメット則
  2. 酸窒化物合成の最前線:低温合成法の開発
  3. ウィリアム・モーナー William E. Moerner
  4. 有機反応を俯瞰する ー付加脱離
  5. 【8/25 20:00- 開催!】オンラインイベント「研究者と描くAI社会の未来設計」
  6. 大陽日酸の産業ガスへの挑戦
  7. 活性ベースタンパク質プロファイリング Activity-Based Protein Profiling
  8. ゲルハルト・エルトゥル Gerhard Ertl
  9. 理化学研究所が新元素発見 名前は「リケニウム」?
  10. リチウムを用いたメカノケミカル脱水素環化法によるナノグラフェン合成

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年10月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

アゾ重合開始剤の特徴と選び方

ラジカル重合はビニルモノマーなどの重合に用いられる方法で、開始反応、成長反応、停止反応を素反応とする…

先端事例から深掘りする、マテリアルズ・インフォマティクスと計算科学の融合

開催日:2023/12/20 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

最新の電子顕微鏡法によりポリエチレン分子鎖の向きを可視化することに成功

第583回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院 工学研究科 応用化学専攻 陣内研究室の狩野見 …

\脱炭素・サーキュラーエコノミーの実現/  マイクロ波を用いたケミカルリサイクル・金属製錬プロセスのご紹介

※本セミナーは、技術者および事業担当者向けです。脱炭素化と省エネに貢献するモノづくり技術の一つと…

【書籍】女性が科学の扉を開くとき:偏見と差別に対峙した六〇年 NSF(米国国立科学財団)長官を務めた科学者が語る

概要米国の女性科学者たちは科学界のジェンダーギャップにどのように向き合い,変えてきたのか ……

【太陽ホールディングス】新卒採用情報(2025卒)

■■求める人物像■■「大きな志と好奇心を持ちまだ見ぬ価値造像のために前進できる人…

細胞代謝学術セミナー全3回 主催:同仁化学研究所

細胞代謝研究をテーマに第一線でご活躍されている先生方をお招きし、同仁化学研究所主催の学術セミナーを全…

マテリアルズ・インフォマティクスにおける回帰手法の基礎

開催日:2023/12/06 申込みはこちら■開催概要マテリアルズ・インフォマティクスを…

プロトン共役電子移動を用いた半導体キャリア密度の精密制御

第582回のスポットライトリサーチは、物質・材料研究機構(NIMS) ナノアーキテクトニクス材料研究…

有機合成化学協会誌2023年11月号:英文特別号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2023年11月号がオンライン公開されています。…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP