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化学者のつぶやき

アルケニルアミドに2つアリールを入れる

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ニッケル触媒を用いたアルケニルアミドの1,2-ジアリール化反応が開発された。フマル酸エステルを配位子とすることで単純なアミド基をもつアルケンのジアリール化が可能である。

非共役アルケンの1,2-ジアリール化反応

アルケンは、置換基を導入することで複雑な分子構造を構築できる有用なビルディングブロックである。近年、アルケンに対し触媒的に2種類の官能基を位置選択的に導入する手法が注目を集めている。その中で、パラジウムやニッケル触媒を用いたアルケンの1,2-ジアリール化がいくつか開発されてきた[1]。この反応の実現に際し、最大の鍵となるのが触媒中間体のアルキル金属種の望まぬβ水素脱離の抑制である。これまで、この中間体を電子的に安定化できるπアリル錯体やπベンジル錯体を生成可能な1,3-ジエンまたはスチレン類の1,2-ジアリール化が多く報告されてきた(1A)[2]。それ以外のアルケンの例としては、アルキル金属種への配位による安定化が可能なキノリンアミド、イミンやピリジルシランなどの配向基をもつアルケンが1,2-ジアリール化できることが見出されている(1B)[3]

 今回、Engle助教授らはフマル酸エステルを配位子にもつニッケル触媒を用いることで、より一般的なアミド基をもつアルケンの1,2-ジアリール化に成功した(1C)

図1.アルケンの1,2-ジアリール化反応

Nickel-Catalyzed 1,2-Diarylation of Simple Alkenyl Amides

Derosa, J.; Kleinmans, R.; Tran, V. T.; Karunananda, M. K.; Wisniewski, S. R.; Eastgate, M. D.; Engle. K. M.  J. Am. Chem. Soc.2018,140, 17878.

DOI: 10.1021/jacs.8b11942

論文著者の紹介

研究者:Keary M. Engle

研究者の経歴:
2003–2007 B.S. in Chemistry, Economics, Mathematics, and Statistics University of Michigan (Prof. Adam J. Matzger)
2008–2013 Ph.D. in Chemistry, The Scripps Research Institute (Prof. Jin-Quan Yu)
2008–2013 D.Phil. in Biochemistry,University of Oxford (Prof. Veronique Gouverneur and John M. Brown)
2013–2015 NIH Postdoctoral Fellow,Caltech (Prof. Robert H. Grubbs)

2015–Assistant Professor of Chemistry, The Scripps Research Institute

研究内容:アルケンの触媒的な位置選択的官能基化手法の開発

論文の概要

本反応はイソブチルアルコール溶媒中、フマル酸ジメチルを配位子にもつニッケル触媒存在下、水酸化ナトリウムを添加し、アルケニルアミド1とヨードアレーン2とアリールボロン酸エステル3を室温で反応させることで目的の1,2-ジアリール化体が高収率で得られる(2A)。本反応の基質適用範囲は広く、アリールボロン酸エステルに電子供与性の置換基または電子求引性の置換基を有していても良好な収率で反応が進行する。ヨードアレーンに関しては電子供与性の置換基を有するものの使用が適しており、中から高程度の収率で目的物が得られる。またβ,γやγ,δアルケニルアミドが適用可能である。特筆すべき事にアミド窒素上に種々のアルキル基をもつアミドに対しても円滑に反応が進行する。

 DFT計算により、カルボニル基が配向基となることと、電子不足オレフィン配位子であるフマル酸ジメチルが触媒サイクルの還元的脱離を促進していることが明らかになった。以上より、本反応の反応機構は次のように推定されている(2B)。まず、ヨードアレーンがニッケル(0)触媒に酸化的付加し、その後アルケニルアミドに配位する(I)。次に、配位挿入および配位子交換を経てニッケラサイクルを形成する(II)。続いてアリールボロン酸エステルとトランスメタル化を行った後(III)、還元的脱離により1,2-ジアリール化体が得られる(IV)

図2. (A) 基質適用範囲 (B) 推定反応機構

以上、ニッケル触媒とフマル酸ジエチルを用い、非共役なアルケニルアミドの1,2-ジアリール化反応が開発された。アミド結合の変換などにより本手法から複雑な化合物への誘導が容易になることが期待される。

参考文献

  1. (a) Derosa, J.; Tran, V. T.; van der Puyl, V. A.; Engle, K. M. AldrichimicaActa 2018, 51, 21.(b)Giri, R.; KC, S. J. Org. Chem.2018, 83, 3013.DOI: 10.1021/acs.joc.7b03128
  2. (a) Stokes, B. J.; Liao, L.; de Andrade, A. M.; Wang, Q.; Sigman, M. S. Org. Lett. 2014, 16, 4666. DOI: 10.1021/ol502279u (b)Urkalan, K. B.; Sigman, M. S. Angew. Chem., Int. Ed. 2009,48, 3146.DOI: 10.1002/anie.200900218
  3. (a) Derosa, J.; Tran, V. T.; Boulous, M. N.; Chen, J. S.; Engle, K. M. J. Am. Chem. Soc.2017, 139, 10657. DOI: 10.1021/jacs.7b06567 (b) Shrestha, B.; Basnet, P.; Dhungana, R. K.; KC, S.; Thapa, S.; Sears, J. M.; Giri, R. J. Am. Chem. Soc.2017, 139, 10653.DOI: 10.1021/jacs.7b06340 (c)Thapa, S.; Dhungana, R. K.; Magar, R. T.; Shrestha, B.; KC, S.; Giri, R. Chem. Sci.2018, 9, 904.DOI: 10.1039/c7sc04351a (d)Basnet, P.; KC, S.; Dhungana, R. K.; Shrestha, B.; Boyle, T. J.; Giri, R. J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 15586. DOI: 10.1021/jacs.8b09401
山口 研究室

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