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有機合成化学協会誌2023年3月号:Cynaropicri・DPAGT1阻害薬・トリフルオロメチル基・イソキサゾール・触媒的イソシアノ化反応

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有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2023年3月号がオンライン公開されました。

早いもので今年度も終わりますね。日本化学会年会にはみなさま参加予定でしょうか。筆者は参加します。楽しみです。

有機合成化学協会誌は今月号も充実の内容です。

キーワードは、Cynaropicri・DPAGT1阻害薬・トリフルオロメチル基・イソキサゾール・触媒的イソシアノ化反応です。

今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。

巻頭言 胡蝶の夢

今月号の巻頭言は、東京農工大学大学院工学研究院 平野雅文 教授による寄稿記事です。高校の教科書については知らないことが多いです。非常に勉強になる記事でした。みなさまもぜひ。

Cynaropicrinの全合成と構造活性相関

臼杵豊展*

*上智大学理工学部物質生命理工学科

本論文では、アフリカ睡眠病の原因となる原虫に対する殺傷作用を有するグアイアノライド系天然物 cynaropicrin の全合成、ならびに半合成的手法による構造活性相関研究について述べられており、cynaropicrin を中心とする有機合成化学が織りなす包括的な内容となっております。

Tunicamycin V類縁天然物の合成に基づいた新規DPAGT1阻害剤の開発研究

三田地克彦、黒須三千夫*

*University of Tennessee Health Science Center, College of Pharmacy, Department of Pharmaceutical Sciences

本論文は、ヌクレオシド系抗生物質として知られるTunicamycin V (TN-V)、およびその類縁体の合成研究について述べています。さらに、効率的な合成戦略に基づいた各種類縁体の合成により、TN-Vで問題となっていた非選択的細胞毒性を改善した選択的DPAGT1阻害薬を創出し、より創薬を指向した形での新規リード化合物の開発、および今後の展望を述べています。この周辺の研究者にとっては、今後参考になる内容の論文かと思います。

トリフルオロメチル基を有するp-キノンメチドを経由した四置換炭素骨格の構築

寺島 究、高須賀(川崎)智子、山崎 孝*

*東京農工大学大学院工学研究院応用化学部門 

医農薬を始めとするファインケミカルズには、トリフルオロメチル基を含む四置換炭素骨格を含む化合物がしばしば利用されています。こうした化合物を構築するために、p-キノンメチドを鍵活性種とする新たな手法を開発することに成功しました。この経路を可能にしたフッ素の役割に是非注目して下さい。

イソオキサゾールの新規官能基化法の開発

盛田大輝、中村浩之*

*東京工業大学科学技術創成研究院化学生命科学研究所

イソキサゾールは医薬品として利用頻度の高いヘテロ芳香環である。筆者らは、これまで未確立であった無置換イソキサゾール環への直接的置換基導入法を検討し、3,4,5位に逐次的かつ位置選択的に置換基を導入する方法を確立した。また、イソキサゾール環の特性を活かした他のヘテロ環への変換法も見い出している。本論文の合成法は医薬探索研究の誘導体合成において有用性が高いと考えられるため、創薬研究者には是非読んでいただきたい。

アンビデントな反応性の精密制御に基づく触媒的イソシアノ化反応の開発

百合野大雅*、大熊 毅*

*北海道大学大学院工学研究院応用化学部門・フロンティア化学教育研究センター

筆者らは、種々のイソニトリル化合物の合成反応を開発しました。合成容易な基質と入手容易な触媒を用いた非常に簡便な反応です。得られたイソニトリルは連続反応によりヘテロ環化合物へと導くこともできます。これまでイソニトリル合成の選択肢は限定的であったため、本反応は今後様々な場面での利用が期待されます。

Review de Debut

今月号のReview de Debutは1件です。オープンアクセスですのでぜひ。

メタルフリーアリル位C-Hアミノ化反応 (神戸大学大学院理学研究科)村上 賢

感動の瞬間 天然物に学ぶ:TN84物語 

今月号の感動の瞬間は、千葉大学大学院薬学研究院 石橋正己 教授による寄稿記事です。後日譚も含め、非常に示唆に富む内容でした。オープンアクセスですのでみなさま必読です。

 

これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズを参照してください。

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博士(理学)。大学教員。娘の育児に奮闘しつつも、分子の世界に思いを馳せる日々。

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