[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

【Vol.1】研究室ってどんな設備があるの? 〜ロータリーエバポレーター〜

[スポンサーリンク]

こんにちは.いよいよ新年度となり,年号も発表され,新生活の時期が訪れましたね.
これから大学に進学だっ!って方も,いよいよ研究室に配属だっ!って方も沢山いると思います.

そんな学生の方々,そして化学に興味があってこのサイトに辿り着いた方に,研究室で使われている器具や設備をご紹介します.
研究室でどんな器具や装置が使われているのかを知って,これからの学びや研究に役立つ事を祈ってます.

 

今回ご紹介する装置はロータリーエバポレーター.通称”エバポ“.簡単に言ってしまうと濃縮装置だ.

しかしその原理は初見だと意外にも複雑で面白い装置なのです.

ロータリーエバポレーター

まずは写真から.

このエバポは東京理化器械(EYELA)のモデル.

 

ロータリーエバポレーターの原理としては,減圧&加熱によって沸点を制御し,効率よく溶媒の除去ができる装置です.

つまりは,有機合成の研究室ではなくてはならない相棒なのです.

ではその原理をもう少し詳しく知って行きましょう.

濃縮の原理

ロータリーエバポレーターはその名の通り,試料フラスコを回転させながら減圧し,ウォーターバスやオイルバスで加温する.

減圧により溶媒の沸点を降下させ,素早く分留し試料の濃縮を行います.

余談ですが溶媒の物性はTCI(東京化成)より一覧がリリースされています.一家に一枚”溶媒物性情報”のノリで,デスクや自宅のトイレに貼りましょう!

TCI おもな有機溶媒の物性

コンデンサー部分には冷却水循環装置(チラー)より冷却水(不凍液:エチレングリコール等)を循環させ,気化した溶媒を液化します.

エバポのポイントは回転に意味がある事です.回転させることにより,フラスコ内面に試料の膜が張り,液面より広い面積で薄層のため溶媒が気化し易い環境を作っています.

濃縮してみた

濃縮できる素晴らしい装置ということで紹介させて頂きましたが,濃縮できるということは薬品以外でもできるのでは?

純粋に興味湧きますよね.エバポを使ったことが無い方にも,こんな事できるんだぞっ!ってことをお伝えしたく,

筆者の研究室でも”あるモノ”を濃縮してみました.

それは...カルピスです!!!

しかもタイミングよく,新品のエバポを導入したので,飲めます(笑)そして普段は薄めて飲む物というだけあって結果が楽しみでした.

では濃縮スタートです!

カルピスを濃縮してみた(使用したカルピス:「カルピス」Lパック  使用量:15 ml )

ちなみにですがバスの上に映る箱型の機械は真空コントローラーです.コントローラーを使用することにより,任意の真空度に設定でき溶媒の沸点をコントロールすることができます.

研究室のエバポには真空コントローラーが装着されていることが殆どです.設置はエバポと真空ポンプの間に接続します.

最近のモデルでは,真空度だけでなくバスの温度やチラーの温度管理も一括して行える最新モデルが出ています.

溶媒が水ということもあり,突沸に気を付けながら6時間回し続けた結果...無事に濃縮できました!!(本当は結晶化までしたかったです)

左:受けフラスコにて回収した液体  右:カルピスの濃縮液

濃縮したカルピスは,においも無く粘性の高い液体となりました.味はとても酸味が強く,カルピスの原型はほぼありません.

受けフラスコにて回収した液体には,カルピス臭がありました.透明カルピスも夢ではなさそうです.

恐らく,カルピスに含まれる香料が溶媒の水と共に飛んだものと思われます.

噂によると,家庭でのカルピス濃度は世帯収入に比例するらしいですね.見栄を張って濃いカルピスを提供したい時は,新品のエバポで濃縮するのも良いかもしれませんね!

各ご家庭に1台,ロータリーエバポレーターがある!なんて時代もいつかは来ると願っています.(価格はエバポ,チラー,ポンプ合わせると100万円程)

 

まとめ

今回はロータリーエバポレーターの紹介をさせて頂きました.

実験装置は意外にも用途が幅広く,本来研究室で使用される使い方以外にもできることが実は沢山あります.

以前,シンポジウムでお会いした香料メーカーの方も大型のエバポを使用しているとのことです.

研究室にはまだまだ沢山の器具達がいます.順次ご紹介予定ですので,次回をお楽しみにお待ちください.

 

関連動画

関連リンク

Avatar photo

Dr.SAKAI

投稿者の記事一覧

国内で唯一の”有機合成化学”をコンセプトにおいたサイエンスバーの経営者。
未来の科学者でもある子供達に、化学を教える活動もしております。世界中に蔓延る謎や問題は、分子の力で解明・解決するという信念を持ち、世界に確変を齎す分子を作ることが僕の夢です。

関連記事

  1. 創薬・医療系ベンチャー支援プログラム”BlockbusterTO…
  2. この輪っか状の分子パないの!
  3. エントロピーを表す記号はなぜSなのか
  4. 化学研究ライフハック: Firefoxアドオンで化学検索をよりス…
  5. ポンコツ博士の海外奮闘録 〜コロナモラトリアム編〜
  6. 文献検索サイトをもっと便利に:X-MOLをレビュー
  7. 事故を未然に防ごう~確認しておきたい心構えと対策~
  8. 温故知新ケミストリー:シクロプロペニルカチオンを活用した有機合成…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 細菌ゲノム、完全合成 米チーム「人工生命」に前進
  2. 学振申請書を磨き上げるポイント ~自己評価欄 編(後編)~
  3. ラジカル機構で一挙に環化!光励起PdによるPAHの合成
  4. カゴ型シルセスキオキサン「ヤヌスキューブ」の合成と構造決定
  5. ケムステイブニングミキサー2016へ参加しよう!
  6. アルキルアミンをボロン酸エステルに変換する
  7. ストリゴラクトン : strigolactone
  8. 材料開発の変革をリードするスタートアップのデータサイエンティストとは?
  9. 輸出貿易管理令
  10. 誤った科学論文は悪か?

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2019年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

フィーゼルマン チオフェン合成/Fiesselmann Thiophene Synthesis

概要フィーゼルマン チオフェン合成(Fiesselmann Thiophene Synthesi…

“とび跳ねる水滴”に潜む物理 〜接触時間とエネルギー源で読む撥水・防氷のテク〜

熱したフライパンに落ちた水滴が、玉になってコロコロと走り回り、冷えた面では、結露水が合体した瞬間に跳…

AI時代に研究者がすでに持っている力・これから伸ばしたい力

論文要約や文献検索など、研究現場でもAI活用が日常化する一方、「自分の仕事の先行き」に漠然とした不安…

miHub®を活用した探索的データ解析の実践

開催概要研究開発においてデータ活用が進む中、機械学習モデルの構築や予測解析に…

“ある特効薬”のはなし ~本田宗一郎氏の回想から

Tshozoです。最近実家に戻っては色々と廃棄するなどの店じまいを少しずつ進めているのですが、中…

高分子鎖を束ねた新しい共重合体「束状共重合体」が誕生

第715回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 工学系研究科(植村研究室)に所属されていた亀谷…

2026年「有機溶媒危機」へのアンサー。北大発・メカノクロスが挑む、溶媒に依存しない新たな合成法 = “メカノケミカル有機合成”の社会実装

株式会社メカノクロスは、メカノケミカル有機合成技術の社会実装に挑む北海道大学発の…

“壊れないよう” に作ってきた半導体ポリマーを、あえて “壊れるよう” に作る化学

半導体ポリマーは長いあいだ、「いかに壊れにくく、長持ちさせるか」といったような安定性を競って進歩して…

有機合成化学協会誌2026年7月号:固体高分子電解質・電子ドナー・アクセプター錯体・機械学習法・trichodermamide類・エナンチオ選択的スキップジエン合成法

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2026年7月号がオンラインで公開されています。…

第62回Vシンポ「見えない空気を科学する~センサによる室内環境・臭気の見える化と快適空間デザインの最前線~」を開催します!

こんにちは、Macyです。第62回Vシンポのご案内をさせていただきます。今回は、前回同様…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP