[スポンサーリンク]

一般的な話題

技術セミナー参加体験談(Web開催)

[スポンサーリンク]

自分の知らない分野について手軽に概要をおさえることができるのが技術セミナーです。過去に何度か技術セミナーに参加したことはありましたが、初めてWeb開催の会に参加しましたので技術セミナーについて自分の体験談を踏まえて紹介します。

技術セミナーとは

会社員になると講義を受ける機会はめったになく、新しい知識を得るには文献調査などによる自己学習がほとんどだと思います。しかしながら、図書や論文へのアクセスが限られた中、全く異なる分野を一から独学で勉強することは非常に手間と時間のかかることで、さらに周りにその分野を知っている人がいないと自分の進んでいる道が正しいのかさえも分かりません。そんな中、自分の知らない内容を手軽に勉強できるのが技術セミナーであり、セミナーを専門に取り扱う会社がいくつかあります。

まず取り扱う分野ですが、産業のありとあらゆる分野が網羅されており、化学の開発でいえば、機能性素材や化粧品、半導体関連の化学品についてのセミナーをよく見かけます。また開発だけでなく製造技術の内容もあり、例えば、撹拌、異物検出、洗浄、分析技術などのトピックに関するセミナーが開催されています。さらには特許データサイエンス技術英語といった分野に関係なく共通した内容のセミナーも多くあります。流行りのトピックは需要が高いため、セミナーが頻繁に開催されていますが、ニッチな内容でもセミナーが開催されています。次に講演内容ですが、学会などの研究発表などとは大きく異なり、題目についての基礎から応用までを網羅的に説明するセミナーがほとんどで、大学の夏休みに行われる集中講義のようなスタイルです。講演者ですが、技術トピックのセミナーでは講演するトピックについて長年研究をされていた企業の研究者の方や大学の先生方で、特許関連のセミナーの場合には弁理士の先生であることがほとんどです。公演時間はたいてい一日か半日ですが、特許のセミナーでは、複数日の場合もあります。最後に参加費ですが一人2万から5万円ぐらいが相場で学会の参加費よりも高額です。ただ、一人が支払う金額が高額な分だけ、たくさんの人数が集まらないニッチな分野のセミナーも開催できるのだと思います。また複数人で参加する場合には割引される場合がほとんどです。

島津製作所が開催している分析秘術基礎講座のサンプル動画

参加する意義

このようなセミナーは自分が全く知らないトピックについて全体を把握できる内容になっていて、すでにそのトピックについて精通していて第一線の研究内容について議論するセミナーではありません。むしろ、すぐに現場で役立つような知識や、専門家にとっては常識だが教科書には書いていない内容を知ることができます。また参加費がそれなりの金額なので、講演を行う先生方はたくさんの詳しい資料を準備していて、質問に対しても丁寧に回答し、後日メールでの質問にも受け付けるなどのきめ細かな対応をとってくれる場合が多いようです。

そのため、何か新しい課題に取り組むようになり、周りに詳しい人がいない場合には、これらのセミナーに参加するとその分野の全体を知ることができると思います。また特許については、調べ方ひとつとっても独特でテクニックが必要な分野になりますのでセミナーに参加して弁理士の先生方からコツを聞くことは有用だと思います。データサイエンスに関しては、実習付きのセミナーが多く、勉強したいけど手頃な分析したいデータがない場合には自己学習よりも効率よく学習できると思います。

特許に関連するセミナー動画

Webで参加した感想

筆者は過去に何度か技術セミナーに参加してきましたが、Webでの参加は初めてでした。そこで参加した感触を講義室での参加と比べてメリット、デメリットをまとめました。

メリット

  • 移動の必要がない:セミナーの会場は東京か大阪である場合がほとんどで、セミナー参加のために移動する必要がないのがWeb開催の最大のメリットだと思います。
  • 周りの目を気にせず自由に参加できる:講義室で参加する限り、他の参加者の迷惑となる行動はできません。しかしWeb参加であれば、他の参加者を気にせず飲食したりや立ち上がったり、他の人との会話するなどもできます。
  • 他の仕事も可能:講義室で参加した時は、それなりのお金を支払っているのでしっかりと聞かないとは思いつつも、メールが気になってスマホをこそこそ開いていましたが、Web参加であれば、パソコンを開いて受講するので、いくらでも他の仕事ができてしまいます。Web参加前は、パソコンを使う必要があって講義に集中できないと懸念していましたが、むしろ講義に集中するときと、他の仕事を行いながら話を聞くときとメリハリをつけて参加することができ、講義室よりも集中できたと思います。
  • 質問が容易:講義室で質問する際には途中で挙手するか、休憩中に講演者のところに伺いに行く必要がありますが、他の参加者の前では質問しにくかったり、個別で質問する時間では行列ができていたりします。一方、Web開催ではチャットボックスに質問を入力して回答してもらうスタイルが多く、気兼ねなくしかも質問が思い浮かんだときに投げかけることができ、質問がしやすいと思います。

デメリット

  • 集中する環境が必要:講義会場に行けば、少なくとも講義を受ける環境になりますが、Web開催では自分でその環境を作る必要があります。仕事場で受けるなら、緊急の要件以外のコミュニケーションをシャットアウトする必要があります。また、快適なインターネット回線や長時間の講義でも疲れないヘッドホンなどのも必要になります。
  • 名刺交換ができない:講義室では、セミナー終了後に演者に名刺交換をして共同研究や商談の話をすることがありますが、Web開催ではこのような雑談は基本的にできないです。

メリットとデメリットに挙げたように結局は快適に受講できるかは、Webか講義室かどちらの環境が自分に合っているかに左右されるのではないかと思います。講義室とWebの両方のオプションを提供しているセミナーもあり、感染対策が万全に施された講義室で受講することも可能です。

セミナーから学べることはたくさんありますが、書籍と違って参加した人しか学ぶことはできません。それなりに高額な費用もかかるため、参加するセミナーをよく吟味し参加が決まったら質問を準備しておく必要があると思います。学会発表ではないので特定の研究について質問することはできませんが、先端分野に関する見解や将来のトレンドなど全体に関わる質問を初めてお会いする演者の方にできる機会と考えると魅力的な会ではないでしょうか。

関連書籍

[amazonjs asin=”4759820434″ locale=”JP” title=”すぐにできる! 双方向オンライン授業 ―Zoom、Teams、Googleソフトを活用して、質の高い講義と化学実験を実現”] [amazonjs asin=”B08R6YD1L9″ locale=”JP” title=”すぐにできる! 双方向オンライン授業 【試験・評価編】 インターネットを活用した学習評価”]

関連リンク

セミナーを予約できるサイトの一例

Avatar photo

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. 材料開発におけるインフォマティクス 〜DBによる材料探索、スペク…
  2. 【ナード研究所】新卒採用情報(2025年卒)
  3. ブラックマネーに御用心
  4. 「脱芳香族的二重官能基修飾化反応の研究」ーイリノイ大学David…
  5. 危険ドラッグ:創薬化学の視点から
  6. 【読者特典】第92回日本化学会付設展示会を楽しもう!PartII…
  7. マテリアルズ・インフォマティクスにおける分子生成の基礎
  8. 特許にまつわる初歩的なあれこれ その1

注目情報

ピックアップ記事

  1. 尿から薬?! ~意外な由来の医薬品~ その1
  2. HTTPS化とサーバー移転
  3. アンモニアで走る自動車 国内初、工学院大が開発
  4. 第61回「セラミックス粉体の合成から評価解析に至るまでのハイスループット化を目指す」藤本 憲次郎 教授
  5. アセタールで極性転換!CF3カルビニルラジカルの求核付加反応
  6. 旭化成 繊維事業がようやく底入れ
  7. Post-Itのはなし ~吸盤ではない 2~
  8. 化学Webギャラリー@Flickr 【Part 3】
  9. 重水は甘い!?
  10. 第82回―「金属を活用する超分子化学」Michaele Hardie教授

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年12月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

注目情報

最新記事

先端の質量分析:GC-MSおよびLC-MSデータ処理における機械学習の応用

キャラクタライゼーションの機械学習応用は、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)およびラボオートメ…

原子半径・電気陰性度・中間体の安定性に起因する課題を打破〜担持Niナノ粒子触媒の協奏的触媒作用〜

第648回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院工学系研究科(山口研究室)博士課程後期2年の松山…

リビングラジカル重合ガイドブック -材料設計のための反応制御-

概要高機能高分子材料の合成法として必須となったリビングラジカル重合を、ラジカル重合の基礎から、各…

高硬度なのに高速に生分解する超分子バイオプラスチックのはなし

Tshozoです。これまでプラスチックの選別の話やマイクロプラスチックの話、およびナノプラスチッ…

新発想の分子モーター ―分子機械の新たなパラダイム―

第646回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機反応論研究室 助教の …

大人気の超純水製造装置を組み立ててみた

化学・生物系の研究室に欠かせない超純水装置。その中でも最も知名度が高いのは、やはりメルクの Mill…

Carl Boschの人生 その11

Tshozoです。間が空きましたが前回の続きです。時系列が前後しますが窒素固定の開発を始めたころ、B…

PythonとChatGPTを活用するスペクトル解析実践ガイド

概要ケモメトリクスと機械学習によるスペクトル解析を、Pythonの使い方と数学の基礎から実践…

一塩基違いの DNA の迅速な単離: 対照実験がどのように Nature への出版につながったか

第645回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院工学系研究科相田研究室の龚浩 (Gong Hao…

アキラル色素分子にキラル光学特性を付与するミセルを開発

第644回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 総合研究院 応用化学系 化学生命科学研究所 吉沢…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP