[スポンサーリンク]

chemglossary

深共晶溶媒 Deep Eutectic Solvent

[スポンサーリンク]

アイハバ水素結合ドナー、アイハバ水素結合アクセプター、、、んーーーーー!深共晶溶媒(DES)!!。。。失礼しました。

本記事のテーマは深共晶溶媒。イオン液体と似た性質を持ちながら、混ぜるだけで調製でき、なおかつ物性も自由自在。そんな夢のような溶媒の話です。(アイキャッチは論文2より転載、編集)

概要

深共晶溶媒(DES:Deep Eutectic Solvent)とは、「水素結合ドナー性の化合物」と「水素結合アクセプター性の化合物」(これらは両方もしくはどちらか一方が固体である)をある一定の割合で混ぜることでつくる『室温で液体』になる化合物である。水素結合ドナーとアクセプターはそれぞれが室温付近で固体でも、混ぜることで共晶融点降下が起こり、室温付近での液体状態が作り出せる。

イオン液体と類似の特徴を持つ。すなわち、蒸気圧が低く、難燃性であり、熱安定性および電気化学的安定性が高く(電位窓が広い)、任意の物質を溶かしやすいといった特徴を示す。反応溶媒、抽出溶媒、留媒、移動相などに用いることができる。「水素結合ドナー性の化合物」と「水素結合アクセプター性の化合物」を混ざるだけという簡便さから、イオン液体に比べて低コストである。また、イオン液体に比べて環境親和性が高く、有毒なものが少ないのも特徴である。原理上は組み合わせだけで任意の物性をもった溶媒を無限に作り出せる。

不揮発性や不燃性ではイオン液体に劣るものの、多くの点でイオン液体に優っており、新たな溶媒として利用例の報告が増えてきている。

初期の報告が2001年であり、比較的歴史の浅い分野である。

基本文献

  1. First Example of DES: Abbott, A. P.; Capper, G.; Davies, D. L.; Munro, H. L.; Rasheed, R. K.; Tambyrajah, V. Chem. Commun. 2001, 2010. DOI: 10.1039/B106357J
  2. Review on DES: Smith, E. L.; Abbott, A. P.; Ryder, K. S. Chem. Rev. 2014, 114, 11060. DOI: 10.1021/cr300162p
  3. Preparation of DES: Florindo, C.; Oliveira, F. S.; Rebelo, L. P. N.; Fernandes, Ana M.; Marrucho, I. M. ACS Sustainable Chem. Eng. 2014, 2, 2416. DOI: 10.1021/sc500439w

関連書籍

[amazonjs asin=”4339066079″ locale=”JP” title=”イオン液体―常識を覆す不思議な塩”] [amazonjs asin=”4781300235″ locale=”JP” title=”イオン液体の開発と展望 (CMCテクニカルライブラリー)”] [amazonjs asin=”3527345183″ locale=”JP” title=”Deep Eutectic Solvents”]

関連リンク

Avatar photo

Trogery12

投稿者の記事一覧

博士(工学)。九州でポスドク中。専門は有機金属化学、超分子合成、反応開発。趣味は散策。興味は散漫。つれづれなるままにつらつらと書いていきます。よろしくお願いします。

関連記事

  1. 二重可変領域抗体 Dual Variable Domain Im…
  2. アルカロイド alkaloid
  3. 金属-有機構造体 / Metal-Organic Framewo…
  4. 導電性ゲル Conducting Gels: 流れない流体に電気…
  5. メカニカルスターラー
  6. シュレンクフラスコ(Schlenk flask)
  7. 分取薄層クロマトグラフィー PTLC (Preparative …
  8. フラグメント創薬 Fragment-Based Drug Dis…

注目情報

ピックアップ記事

  1. ネオ元素周期表
  2. 高分子マテリアルズ・インフォマティクスのための分子動力学計算自動化ライブラリ「RadonPy」の概要と使い方
  3. 表裏二面性をもつ「ヤヌス型分子」の合成
  4. 分子内架橋ポリマーを触媒ナノリアクターへ応用する
  5. 金属材料・セラミックス材料領域におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用
  6. 第13回 次世代につながる新たな「知」を創造するー相田卓三教授
  7. なぜあなたは論文が書けないのか
  8. マテリアルズ・インフォマティクスにおける従来の実験計画法とベイズ最適化の比較
  9. 【7/28開催】第3回TCIオンラインセミナー 「動物透明化試薬ウェビナー CUBICの基礎と実例」
  10. 付設展示会に行こう!ー和光純薬編ー

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2018年8月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP