[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

多検体パラレルエバポレーションを使ってみた:ビュッヒ Multivapor™

[スポンサーリンク]

化合物を合成して、精製し、純品の生成物ができたとき、どこかに保存すると思います。もしくは、反応がうまくいかなくともすぐに捨てないで保存しておくひともいるでしょうか。そう、最終的に合成された化合物君たちの行き先はバイアル瓶か何かの小さな容器。合成反応の基質一般性を検討している人やメディシナルケミストリーに関わっている人は10〜100個、下手したら数百個の化合物をつくるひともいるでしょう。

バイアル瓶

 

何にせよ、ナスフラスコも限りがありますからバイアル瓶にどんどん移しましょう。というのが普通の研究室。多検体を扱っている人はいちいち溶媒を留去する(エバポする)のが面倒ですし、エバポレーターを占拠してしてしまいます。といううちの研究室も例外ではなく、場所が限られ多数のエバポーレーターが置けない状況ですと、「エバポ律速」(溶媒を留去することに時間がかかること)という状態に陥ります。できればバイアル便で飛ばすところは別枠でほしいところです。

そのような経緯で、パラレルエバポレーションシステムを探していました。今回は、ビュッヒから発売されている多検体パラレルエバポレーションシステムMultivapor™ を紹介したいと思います。

原理はロータリーエバポレーターと同じ

「パラレルエバポレーションシステム」なんてかっこいい名前がついていますが、原理はロータリーエバポレーターとほぼ同じ。ポンプで減圧し、気化熱として熱を奪われるので、ヒーティングバスにつけて、溶媒を留去するだけです。ロータリーエバポレーターと少し違うところは、回転するかわりに、「振とう」すること。バス全体が振とうして突沸を防ぐわけです。

Multivapor(通称:マルチ君)の原理(出典:日本ビュッヒ)

 

最大12サンプルを同時に処理できる

マルチ君のなかはそれぞれ区分けされた透明バスがついていて、その数が6個のもの(P-6)と12個のもの(P12)があります。つまり、12個のものは12個のサンプルを同時にエバポできるわけです。とはいってももちろん全部付ける必要はなく、1つからエバポすることができます。使える容器は多種類。アダプターさえ変えれば、ネジ口付きの容器ならば試験管でもバイアルでも、バスに入る大きさならなんでも使えます。接続するのは溶媒回収装置付きのエバポレーターでもよいですし、専用の溶媒回収ユニット付きのポンプをつかってもいいかもしれません。

2種類のマルチ君:6検体用と12検体用(出典:日本ビュッヒ)

 

と、簡単な操作で多検体の溶媒を留去できるということで、早速デモしてみました。

Multivapor(マルチ君)を設置してみた

実際にデモしたのは、12検体用のMultivapor™ P-12。ビュッヒのエバポレーターに接続してみた状態が以下の写真になります。

エバポレーターに接続してみた(左がマルチ君)

まず、見た目の感想。

「意外とでかいぞ」

うちでエバポしたいサンプルはほとんどが20mLバイアル瓶以下のものだったので、勝手ながらもっと小型なものを想像していまいましたが、でかい。もう少し小型バージョンが欲しいなあと思いました。カタログをみてみると、大きさは幅27cm✕40cmです。つまり、A3サイズ紙が置くことができれば設置できます。このサイズならば試験管の溶媒も飛ばせますし、最終的にはよかったのですが、僕のイメージはA4サイズ程度だったので少し大きいものでした。

マルチ君の大きさ(出典:日本ビュッヒ)

Multivapor(マルチ君)をデモしてみた

というわけで実際に使用してみました。動画はこちら。

まずは使用してみた感想。

「意外に激しいぞ」

振とうする機器をよく使っている方は、普通なのかもしれないですが意外に激しく動きます。これは突沸はしないですね。ダイアルで自由に速さを変えれるようなので、突沸しやすいやつは早く振とうさせたほうがよいのかもしれません。

というわけで、今回はビュッヒの多検体パラレルエバポレーションシステムMultivapor™ を紹介しました。結局もう少し小型サイズが欲しくて購入には至りませんでしたが、多検体を同時に扱っている方はぜひとも検討してみてはいかがでしょうか。実際にデモもできるので、デモを申し込んでみるのもおすすめです。お問合わせは以下!

日本ビュッヒ株式会社
住所:〒1100-0008東京都台東区池之端2-7-17IMONビル3F
電話:03-3821-4777
E-mail: nihon@buchi.com

関連リンク

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 分子間相互作用によりお椀反転の遷移状態を安定化する
  2. 日本語で得る学術情報 -CiNiiのご紹介-
  3. ADC薬基礎編: 着想の歴史的背景と小分子薬・抗体薬との比較
  4. CEMS Topical Meeting Online 超分子ポ…
  5. アズワンが第一回ケムステVプレミアレクチャーに協賛しました
  6. 冬虫夏草由来の画期的新薬がこん平さんを救う?ーFTY720
  7. マテリアルズ・インフォマティクスの基礎から実践技術まで学ぶワンス…
  8. AIによる創薬に新たな可能性 その研究と最新技術に迫る ~米・I…

注目情報

ピックアップ記事

  1. ⾦属触媒・バイオ触媒の⼒で⽣物活性分⼦群の⾻格を不⻫合成
  2. アレ?アレノン使えばノンラセミ化?!
  3. カルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)ヒドリド:Carbonyltris(triphenylphosphine)rhodium(I) Hydride
  4. 専門用語(科学英単語)の発音
  5. 工程フローからみた「どんな会社が?」~タイヤ編 その3
  6. ロバート・レフコウィッツ Robert J. Lefkowitz
  7. メラノーマ治療薬のリード化合物を発見
  8. クライオ電子顕微鏡でATP合成酵素の回転の細かなステップを捉えた!
  9. 4つの性がある小鳥と超遺伝子
  10. 新しい糖尿病治療薬認可へ~人体機能高めるタイプから吸入式まで

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年9月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP