[スポンサーリンク]

ケムステニュース

インフルエンザ治療薬「CS‐8958」、09年度中にも国内申請へ

[スポンサーリンク]

第一三共は、インフルエンザ治療薬「CS‐8958」の第III相試験を今シーズン中にも終了させ、2009年度の国内申請を目指す。08-09シーズンはインフルエンザの流行開始が記録的に早かったため、昨年11月に開始した第III相試験は、予想以上のスピードで症例登録が進行。流行期ピークの3月にも終了できる見通しが立った。09-10年シーズンには、予防適応の臨床試験も開始させたい考えだ。  「CS‐8958」は、第一三共が創製した長時間作用型ノイラミニダーゼ阻害薬。既存のインフルエンザ治療薬「タミフル」「リレンザ」は、1日2回の5日間投与が必要なのに対し、吸入薬の「CS‐8958」は1回投与での有効性が期待されている。既に国内第II相試験では、「CS‐8958」20mg群とタミフル75mg群で同等の効果が得られたことから、同社は昨年11月に台湾、香港、韓国を含めた国際共同第III相試験を開始した(引用:約時日報)。

今年もインフルエンザ大流行の兆し。というより筆者はすでにかかりましたが。筆者の場合はタミフルで十分でしたが、10代には処方できない、ウィルスがタミフル耐性をすでにもっていて効かないなど問題があるようです。その場合は、グラクソスミスクラインのリレンザ(ザナミビル:Zanamivir)を使う訳です。今回の第一三共が開発している「CS-8958」は見ての通り、非常に似通っていて、専門的に言えばアルコールがメトキシ基に、またもうひとつのアルコールがアシル化されているのみで基本構造は全く同じになります。


構造だけでなく、もちろん作用機序も一緒(ノイラミニダーゼ阻害剤)というわけなんで、残念ながらほとんど変わらないことになります。活性が少し高いということが特徴なわけです。

ちなみにもう一つ日本で開発が進められている富山化学のT-705(下図)はRNAポリメラーゼ阻害薬であり作用機序がタミフル、リレンザ、CS-8958と異なります。簡単にいえば、ウィルスのRNAポリメラーゼに作用して、ウィルスの複製を防ぐという特徴があります。ノイラミニダーゼ阻害剤は複製後のウィルスの遊離を防ぐため、それらに比べてもう少し前の段階で、インフルエンザを止めることができます。

T-705.gif

構造がとても単純で、合成、供給面ではとても助かるのですが、単純なだけに副作用が心配です。現在臨床試験中(フェーズI)です。CS-8958にしてもT-705にしても日本発の未来のインフルエンザ治療薬に注目です!

外部リンク

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 日本プロセス化学会2005サマーシンポジウム
  2. 化学大手、原油高で原料多様化・ナフサ依存下げる
  3. LG化学より発表されたプラスチックに関する研究成果
  4. 京のX線分析装置、国際標準に  島津製・堀場、EU環境規制で好調…
  5. 新コース開講! 東大発の無料オンライン英語講座!
  6. 第47回天然有機化合物討論会
  7. 米化学大手デュポン、EPAと和解か=新生児への汚染めぐり
  8. 医薬品の黄金世代到来?

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 西林 仁昭 Yoshiaki Nishibayashi
  2. 蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)のドナーとして利用される蛍光色素
  3. 天然のナノチューブ「微小管」の中にタンパク質を入れると何が起こる?
  4. 細野 秀雄 Hideo Hosono
  5. ダニエル・ノセラ Daniel G. Nocera
  6. クロスカップリングはどうやって進行しているのか?
  7. 不斉触媒 Asymmetric Catalysis
  8. 第37回 糖・タンパク質の化学から生物学まで―Ben Davis教授
  9. トム・マイモニ Thomas J. Maimone
  10. 化学物質の環境リスクを学べる「かんたん化学物質ガイド」開設

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年1月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

フローマイクロリアクターを活用した多置換アルケンの効率的な合成

第610回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院理学研究科(依光研究室)に在籍されていた江 迤源…

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

光と水で還元的環化反応をリノベーション

第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP