[スポンサーリンク]

ケムステニュース

“クモの糸”が「ザ・ノース・フェイス」のジャケットになった

[スポンサーリンク]

 ゴールドウインが、11年にわたってクモの糸の人工生成に取り組んでいるバイオ分野のベンチャー企業スパイバー(Spiber)と共同開発したプロトタイプ「ムーン・パーカ(MOON PARKA)」を発表した。アパレル工業ラインで製造された、人工タンパク質素材が使われる世界で初めての衣服になる(引用:Fashion Press 2015年10月8日, 画像: SpiberHP)。

 

なんと、“クモの糸”が有名ブランド「ザ・ノース・フェイス」のアウタージャケットの素材に使われたのこと。ゴールドウイン(GOLDWIN)は同ブランドなどを配するスポーツアパレルメーカー。対して、Spiberは大学発のベンチャー企業。大量合成は不可能と言われていた当時、クモ糸のたんぱく質が作れるよう合成した遺伝子をバクテリアに組み込んで培養、紡績技術を確立。その合成クモの糸からつくった繊維を「QMONOS」と名付け、量産化および製品化を検討してきました(下図のようなポリペプチド構造を有するタンパク質)。

GREEN2013fibroin

クモの糸にみられる繰り返し構造。実際の素材の構造は明らかとしていない

 

トヨタ系列の小島プレス工業と提携し、量産技術の開発に成功、織り上げたドレスを発表したのがおよそ2年前(関連記事:日本企業クモ糸の量産技術確立:強さと柔らかさあわせもつ究極の素材)。今年5月に、本社のある山形県鶴岡市に研究棟を建設し、最終的な繊維の生産能力は年産20トン規模のパイロットラインを開発しました。9月初旬にゴールドウィンが開発を加速させ早期の実用化を支援するため30億円出資すると発表されたばかり。

スパイバー本社研究棟(出典:SpiberHPより)

スパイバー本社研究棟(出典:SpiberHPより)

 

今回発表された、ジャケットはいまだプロトタイプで発売はされていないものの、実際の製造ラインでつくられた初の製品であるそうです。そもそも”クモの糸”は地球上で最もタフネスの高い素材であるといわれており、スポーツウェアなどの用途にぴったりです。

今回のプロトタイプはザ・ノース・フェイスの原宿店(10月10日〜18日)、堀江店(10月23日〜11月1日)、キャナルシティ博多店(11月6日〜15日)、白馬店(11月20日〜29日)、サッポロファクトリー店(12月4日〜18日)、仙台店(12月25日〜16年1月10日)で一般公開するらしいですよ。

ちなみに今回の製品の「ムーン・パーカ(MOON PARKA)」という名前の由来は以下の通り。

月(Moon)は人類が到達した中で最も遠く、過酷な極地です。アポロ計画は “Moonshot” の意味を変えました。不可能で馬鹿げているという意味から、ハイリスク・ハイインパクトで壮大な挑戦という意味に。不可能と言われてきたクモの糸の実用化という夢はまさに “Moonshot”。工業素材の歴史上最も大きなイノベーションは、“THE MOON PARKA” とともに幕をあけます。

 

うまいですね。若手研究者達のつくった夢の素材を使った製品の発売を楽しみに待ちたいと思います。

 

関連動画

 

外部リンク

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 住友化学、Dow Chemical社から高分子有機EL用材料事業…
  2. コケに注目!:薬や香料や食品としても
  3. 持田製薬、創薬研究所を新設
  4. “加熱しない”短時間窒化プロセスの開発 -チタン合金の多機能化を…
  5. はやぶさ2が持ち帰った有機化合物
  6. COX2阻害薬 リウマチ鎮痛薬に副作用
  7. 有機超伝導候補が室温超高速光応答材料に変身
  8. 1回飲むだけのインフル新薬、5月発売へ 塩野義製薬

注目情報

ピックアップ記事

  1. ウェブサイトのリニューアル
  2. 第三回 ナノレベルのものづくり研究 – James Tour教授
  3. 化学系スタートアップ2社の代表が語る、事業の未来〜業界の可能性と働き方のリアルとは〜
  4. ガスマン インドール合成 Gassman Indole Synthesis
  5. 日本初の化学専用オープンコミュニティ、ケムステSlack始動!
  6. 電池で空を飛ぶ
  7. 受賞者は1000人以上!”21世紀のノーベル賞”
  8. 日本の化学産業を支える静岡県
  9. アルキンメタセシス Alkyne Metathesis
  10. 有機合成化学協会誌6月号:ポリフィリン・ブチルアニリド・ヘテロ環合成・モノアシル酒石酸触媒・不斉ヒドロアリール化・機能性ポリペプチド

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2015年10月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

マティアス・クリストマン Mathias Christmann

マティアス・クリストマン(Mathias Christmann, 1972年10…

ケムステイブニングミキサー2025に参加しよう!

化学の研究者が1年に一度、一斉に集まる日本化学会春季年会。第105回となる今年は、3月26日(水…

有機合成化学協会誌2025年1月号:完全キャップ化メッセンジャーRNA・COVID-19経口治療薬・発光機能分子・感圧化学センサー・キュバンScaffold Editing

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年1月号がオンライン公開されています。…

配位子が酸化??触媒サイクルに参加!!

C(sp3)–Hヒドロキシ化に効果的に働く、ヘテロレプティックなルテニウム(II)触媒が報告された。…

精密質量計算の盲点:不正確なデータ提出を防ぐために

ご存じの通り、近年では化学の世界でもデータ駆動アプローチが重要視されています。高精度質量分析(HRM…

第71回「分子制御で楽しく固体化学を開拓する」林正太郎教授

第71回目の研究者インタビューです! 今回は第51回ケムステVシンポ「光化学最前線2025」の講演者…

第70回「ケイ素はなぜ生体組織に必要なのか?」城﨑由紀准教授

第70回目の研究者インタビューです! 今回は第52回ケムステVシンポ「生体関連セラミックス科学が切り…

第69回「見えないものを見えるようにする」野々山貴行准教授

第69回目の研究者インタビューです! 今回は第52回ケムステVシンポ「生体関連セラミックス科学が切り…

第68回「表面・界面の科学からバイオセラミックスの未来に輝きを」多賀谷 基博 准教授

第68回目の研究者インタビューです! 今回は第52回ケムステVシンポ「生体関連セラミックス科学が切り…

配座制御が鍵!(–)-Rauvomine Bの全合成

シクロプロパン環をもつインドールアルカロイド(–)-rauvomine Bの初の全合成が達成された。…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP