[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

アリルC(Sp3)-H結合の直接的ヘテロアリール化

[スポンサーリンク]

アリル位の新しいC–Hカップリングが報告された。Cp*Rh()錯体を用いた脱水素型クロスカップリングによりアリル位へ芳香族ヘテロ環を導入することが可能である。

アリル位のC–H官能基化

活性化されていないC(sp3)-H結合は有機化合物中に遍在しているため、これらの結合の直接的な官能基化はより工程数を短縮でき、かつ原子効率の良い強力な手法となっている[1]。中でもアリル位C(sp3)-Hの活性化反応はこれまで精力的に研究されており、アミノ化[2]、酸素化[3]、およびアルキル化[4]が開発されてきた。その一方で、アリル位C(sp3)-H結合のアリール化の報告はほとんどされておらず、その適用範囲はとても狭い。これまでは既に官能化された基質(アリールGrignard反応剤/シアノ芳香族化合物)、または多フッ素化芳香族化合物のみが使用可能であった(5)(図1A)。

今回、ミュンスター大学のGlorius教授らはロジウム触媒を用いたアリル位の直接ヘテロアリール化反応の開発に成功した(図1B)。両方の基質の予備官能基化を必要とせずに、オレフィンとヘテロアリール(フラン、チオフェン、ピロール及びベンゾチオフェン)の脱水素型クロスカップリングが可能となった。

図1. 従来のアリル位C-H活性化反応及び今回の反応

Non-Directed Cross-Dehydrogenative (Hetero)arylation of Allylic C(sp3)–H bonds enabled by C–H activation

Lerchen, A.; Knecht, T.; Koy, M.; Ernstz, B. J.; Bergander, K.; Daniluc, G, C.; Glorius, F. Angew. Chem., Int. Ed. 2018, early view

DOI: 10.1002/anie.201807047

論文著者の紹介

研究者:Frank Glorius 

研究者の経歴:
1997-2000 Ph.D., University of Basel and Max-Planck-Institute (Prof. D. A. Pfaltz)
2000-2001 Posdoc., Harvard University (Prof. D. A. Evans)
2001-2004 Independent research., the Max-Planck-Institute (Prof. A. Fürstner)
2004-2007 C3-Professor for Organic Chemistry., University of Marburg
2007-        Full Professor for Organic Chemistry., Westfälische Wilhelms-Universität Münster

研究内容:C–H活性化反応、光レドックス触媒、Mechanism-Based Screening、NHC触媒を用いた不斉合成

論文の概要

本反応は、触媒として[Cp*RhCl2]2と添加剤AgBF4及び2当量の酸化剤AgOAc存在下、アリル化合物とヘテロ芳香族化合物の脱水素型クロスカップリングが進行し、生成物を与える。アルキル基、ハロゲン、電子供与基、電子求引基などの官能基耐性があり、チオフェン、フランやピロールなどの様々なヘテロ芳香族化合物やアリル化合物を本反応に適用することができる(図2A)。また、合成終盤での官能基化にも適用できることを示している(論文参照)。

著者らは、本反応の反応機構解明のため次の実験を行った(図2B)。まずアリル化合物に1aおよび1bを、ヘテロアレーンに2aを選択し本反応を行った。その結果、カップリング体として3aのみが生成し、構造異性体3bは生成しなかった。また、予め1aからロジウム–アリル錯体4を調製し、アリル化合物2bとの反応を行なったところカップリング体3cが生成した。このことから、本反応は溝呂木–Heck反応のようなβ水素脱離を伴う反応機構ではなく、ロジウム–π–アリル錯体を経由した機構で進行することが示唆される。

以上、アリルC(sp3)-H結合及びヘテロアレーンC(sp2)-H結合の脱水素型クロスカップリングが開発された。本反応は、基質の予備官能基化を必要としないため、医薬品などの後期過程での官能基化への応用が期待できる。

図2. (A)基質適用範囲 (B)反応機構解析

参考文献

  1. Jazzar, R.; Hitce, J.; Renaudat, A.; Sofack-Kreutzer, J.; Baudoin, O. Chem, Eur. J. 2010, 16, 2654. DOI: 10.1002/chem.200902374
  2. For recent example: Ma, R.; White, M. C. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 3202. DOI: 10.1021/jacs.7b13492
  3. For recent example: Li, C.; Li, M.; Li, J.; Liao, J.; Wu, W.; Jiang, H. J. Org. Chem.2017, 82, 10912. DOI: 10.1021/acs.joc.7b01729
  4. For recent example: Hu, R.-B.; Wang, C.-H.; Ren, W.; Liu, Z.; Yang, S.-D. ACS Catal. 2017, 7, 7400. DOI: 1021/acscatal.7b02965

(a) Sekine, M.; Ilies, L.; Nakamura, E. Org. Lett.,2013, 15, 714. DOI: 10.1021/ol400056z(b) Cuthbertson, J. D.; MacMillan, D. W. C. Nature 2015, 519, 74. DOI: 10.1038/nature14255. (c) Wang, G. -W.; Zhou, A.-X.; Li, S.-X.; Yang, S.-D. Org. Lett. 2014, 16, 3118. DOI: 10.1021/ol501247b.(d)Jiang,H.; Yang, W.; Chen, H.; Li, J.; Wu, W. Chem. Commun., 2014, 50, 7202. DOI: 10.1039/c4cc02023e

The following two tabs change content below.
山口 研究室
早稲田大学山口研究室の抄録会からピックアップした研究紹介記事。

関連記事

  1. 18万匹のトコジラミ大行進 ~誘因フェロモンを求めて②~
  2. 研究者・技術系ベンチャー向けアクセラレーションプログラムR…
  3. 銀を使ってリンをいれる
  4. SlideShareで見る美麗な化学プレゼンテーション
  5. 美麗な分子モデルを描きたい!!
  6. ヒドラジン
  7. 2010年ノーベル化学賞ーお祭り編
  8. 2009年人気記事ランキング

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 岸 義人 Yoshito Kishi
  2. 単一細胞レベルで集団を解析
  3. ケムステイブニングミキサー2019ー報告
  4. チャド・マーキン Chad A. Mirkin
  5. BASF、新規のキラル中間体生産プロセスを開発!
  6. メソポーラスシリカ(1)
  7. メソポーラスシリカ(3)
  8. リチャード・スモーリー Richard E. Smalley
  9. クロロラジカルHAT協働型C-Hクロスカップリングの開発
  10. シス型 ゲラニルゲラニル二リン酸?

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

排ガス原料のSAFでデリバリーフライトを実施

ANAは日本時間の10月30日、排ガスを原料とするSustainable Aviation Fuel…

“つける“と“はがす“の新技術―分子接合と表面制御

お申込み・詳細はこちら日程2020年1月9日(木)・10日(金)定員20名  先着順…

【日産化学】画期的な生物活性を有する新規除草剤の開発  ~ジオキサジン環に苦しみ、笑った日々~

日産化学は、コア技術である「精密有機合成」や「生物評価」を活かして自社独自開発の…

モノクローナル抗体を用いた人工金属酵素によるエナンチオ選択的フリーデル・クラフツ反応

第234回のスポットライトリサーチは、大阪大学大学院理学研究科・安達 琢真さんにお願いしました。…

α,β-不飽和イミンのγ-炭素原子の不斉マイケル付加反応

α,β-不飽和イミンのγ-炭素原子のエナールへのエナンチオ選択的マイケル付加反応が開発された。新規環…

化学者だって数学するっつーの! :定常状態と変数分離

本記事では、原子軌道や分子軌道に電子が安定に存在するときの波動関数を調べるための方程式である、「時間…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP