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「原子」が見えた! なんと一眼レフで撮影に成功

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An Oxford University student who captured an image of a single atom has won a top science photography prize. (引用:Nationalgeographic 2月19日)

英オックスフォード大学で、量子コンピューターに使う原子を閉じこめる研究をしていたデビッド・ナドリンガー氏は2017年8月7日、一般的なデジタル一眼レフカメラを使ってストロンチウム一原子を撮影することに成功し、その写真は英国の工学・物理科学研究会議(EPSRC)による科学写真コンテストで表彰されたそうです。

黒い部分の中心にうっすらと青い光が見える。(PHOTOGRAPH BY DAVID NADLINGER, UNIVERSITY OF OXFORD)

黒い背景の前で青紫色のライトに照らされているのはプラスに帯電したストロンチウム原子で、イオントラップと呼ばれる、両側の2つの金属電極の間に電解を発生させる装置で原子をほぼ静止させています。小さな2つの針の先端の間の距離は2ミリにも満たず、イオントラップの超高真空室の窓をのぞきこむようにして写真を撮影したそうですカメラには、50mmレンズと接写をする際に使うエクステンションチューブ、そしてカラーフィルターをつけた2つのフラッシュ装置を装備して撮影しました。写真で原子を見ることができるのは、カメラの露光時間を長くして、原子がレーザー光を吸収して再放出する様子をとらえているからです。

接写のためのエクステンションチューブ

表彰されたことに関してデビッド・ナドリンガー氏は、下記のようにコメントしています。

肉眼で単一の原子を見ることができるというアイデアは、極小の量子の世界と私たちの世界をつなげる素晴らしく直接的かつ理屈抜きの橋渡しになると私は感じていました。大雑把な計算をしたうえで、ある静かな日曜日の午後に、カメラを実験室にセットすると、淡い青色の点、この特徴的な小さな写真を取ることができました。(引用訳)

デビッド・ナドリンガー氏は、オックスフォード大学のイオントラップ量子コンピューター研究室に属している博士課程の学生で、研究室のHPによるとまだ学術論文の発表はないようですが、今後の活躍が期待されます。

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関連リンク

  • EPSRC news: EPCRCの受賞サイト。他の受賞した写真も見ることができる。
  • Oxford Science Blog:オックスフォード大学の公式プレスリリース
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ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

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