[スポンサーリンク]

ケムステニュース

LG化学より発表されたプラスチックに関する研究成果

[スポンサーリンク]

  • LG Chem develops advanced plastic materials that prevent battery’s thermal runaway.  (引用:4月25日LG化学プレスリリース)
  • LG Chem-KIST manufacture raw materials for plastic with carbon dioxide in the air. (引用:5月9日LG化学プレスリリース)
  • LG Chem – KIST Opens Joint Research Lab for Commercializing Carbon Neutrality Technologies. (引用:4月26日LG化学プレスリリース)

韓国の大手化学メーカー、LG化学よりプラスチックに関する研究成果がプレスリリースにて発表されましたので紹介させていただきます。

まず1件目は、バッテリーの熱暴走を防ぐ難燃性プラスチックを開発したというニュースです。電気自動車が普及していく中、事故や自動車の異常などでバッテリーが熱暴走し、火災が発生する事態も想定されます。そのため、乗員の退避時間を確保するためにバッテリーが高温になっても火炎伝搬をなるべく長い時間防ぐことができるバッテリーの保護素材が求められています。

そこでLG化学では、世界で最も長い火炎防止時間を持つプラスチックを開発しました。このプラスチックは、ポリフェニレンオキシド(PPO)やポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などが配合されており、LG化学の試験では、1000℃の熱に400秒以上火炎伝搬を防ぐことが示され、一般的な防炎プラスチックよりも45倍長い時間耐えられることが分かりました。このプラスチックについてLG化学では製造準備を進めており、2023年にはフルスケールの製造を始めるそうです。

以前、ケムスケニュースでは似たような研究成果を紹介しましたが、それはポリマーと無機材料の複合材を使用していました。対象の技術に関する特許はまだ公開されていないようで、どのような素材を使ったのか気になるところです。韓国には現代自動車といった有数の自動車メーカーがあり、バッテリーに関する共同事業も行われているようです。LG化学としてはカスタマーと近い距離にいることで、粘り強く研究開発を続け、成果が出てからは迅速に製品化を行うことができた予想されます。

2件目は、空気中のに二酸化炭素からプラスチックの原料を作ることにKIST(Korea Institute of Science and Technology)と共同で成功したというニュースです。

二酸化炭素を他の化学種に変換して資源化する研究は盛んに行われていますが、LG化学とKISTでは、電気還元によって90%以上の高率で一酸化炭素などへの還元に成功しました。また開発した電気還元のリアクターについて、発生する水素と一酸化炭素の比率を電圧によってコントロールでき、様々な種類の合成ガスを製造できるとしています。

LG化学とKISTでは研究を続け、10倍のスケールでの成功に挑戦します。そして、将来的には空気中の二酸化炭素を回収してエチレンを合成できるようにする技術を開発していくようです。KISTでは、ほぼ同時に二酸化炭素をギ酸変換するフッ素をドープした酸化スズ触媒の開発に成功したことを報告しており、同様の研究が活発に研究が行われていることが推測されます。

3件目のニュースは、2件目に関連しておりLG化学とKISTではカーボンニュートラルに関する共同研究室を開設したという内容です。KISTは、日本の産総研(AIST)に近い研究機関であり、半導体やAI、環境、アドバンストマテリアル、クリーンエナジー、生物医学などに関する研究を行っています。

この共同研究では、2件目の二酸化炭素の変換に加えてバイオマスを原料に有機酸のバイオ生産の研究も行われる予定です。そして水素製造など種々の分野への共同研究の拡大や、KISTの研究学生への援助、LG化学の研究者への博士課程出向プログラムなど様々な面で強力な関係を築いていくようです。

具体的な内容に欠けるニュースの紹介になってしまいましたが、韓国の化学メーカーも日本同様に二酸化炭素変換やバッテリーといった流行りの研究に注力していることが分かりました。日本メーカーも日本だけでなく世界で競い合い技術を深化させていってほしいと思います。

関連書籍

関連リンク

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. 「サンゴ礁に有害」な日焼け止め禁止法を施行、パラオ
  2. 最少の実験回数で高い予測精度を与える汎用的AI技術を開発 ~材料…
  3. オカモトが過去最高益を記録
  4. 甘草は虫歯を予防する?!
  5. イチゴ生育に燃料電池
  6. 植物改良の薬開発 金大・染井教授 根を伸ばす薬剤や、落果防止のも…
  7. AIで世界最高精度のNMR化学シフト予測を達成
  8. 積水化学、工業用接着剤で米最大手と提携

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. PCに眠る未採択申請書を活用して、外部資金を狙う新たな手法
  2. 第47回―「ロタキサン・カテナン・クラウンエーテルの超分子化学」Harry Gibson教授
  3. Spin-component-scaled second-order Møller–Plesset perturbation theory (SCS-MP2)
  4. Biotage Selekt のバリュープライス版 Enkel を試してみた
  5. プレヴォスト/ウッドワード ジヒドロキシル化反応 Prevost/Woodward Dihydroxylation
  6. 「原子」が見えた! なんと一眼レフで撮影に成功
  7. 生きたカタツムリで発電
  8. Q&A型ウェビナー カーボンニュートラル実現のためのマイクロ波プロセス 〜ケミカルリサイクル・乾燥・濃縮・焼成・剥離〜
  9. リピンスキーの「ルール・オブ・ファイブ」 Lipinski’s “Rule of Five”
  10. BO triple bond

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2022年5月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

最新の電子顕微鏡法によりポリエチレン分子鎖の向きを可視化することに成功

第583回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院 工学研究科 応用化学専攻 陣内研究室の狩野見 …

\脱炭素・サーキュラーエコノミーの実現/  マイクロ波を用いたケミカルリサイクル・金属製錬プロセスのご紹介

※本セミナーは、技術者および事業担当者向けです。脱炭素化と省エネに貢献するモノづくり技術の一つと…

【書籍】女性が科学の扉を開くとき:偏見と差別に対峙した六〇年 NSF(米国国立科学財団)長官を務めた科学者が語る

概要米国の女性科学者たちは科学界のジェンダーギャップにどのように向き合い,変えてきたのか ……

【太陽ホールディングス】新卒採用情報(2025卒)

■■求める人物像■■「大きな志と好奇心を持ちまだ見ぬ価値造像のために前進できる人…

細胞代謝学術セミナー全3回 主催:同仁化学研究所

細胞代謝研究をテーマに第一線でご活躍されている先生方をお招きし、同仁化学研究所主催の学術セミナーを全…

マテリアルズ・インフォマティクスにおける回帰手法の基礎

開催日:2023/12/06 申込みはこちら■開催概要マテリアルズ・インフォマティクスを…

プロトン共役電子移動を用いた半導体キャリア密度の精密制御

第582回のスポットライトリサーチは、物質・材料研究機構(NIMS) ナノアーキテクトニクス材料研究…

有機合成化学協会誌2023年11月号:英文特別号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2023年11月号がオンライン公開されています。…

高懸濁試料のろ過に最適なGFXシリンジフィルターを試してみた

久々の、試してみたシリーズ。今回試したのはアドビオン・インターチム・サイエンティフィ…

細胞内で酵素のようにヒストンを修飾する化学触媒の開発

第581回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 薬学系研究科 有機合成化学教室(金井研究室)の…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP