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日本人化学者インタビュー

第14回「らせん」分子の建築家ー八島栄次教授

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さて、第14回目は現在最も推薦者の多く(第2回伊丹健一郎教授第5回浜地格教授、そして前回の第13回相田卓三教授)大人気の八島栄次先生(名古屋大学)です。実は1年ほど前にオファーさせていただき、ご快諾を得ましたがご多忙でなかなか実現しませんでした。この度相田卓三先生のプッシュと、ある学生に「楽しみにしているので早く書いてください!とせがまれ(本人よりお聞きしました)、満を期して登場していただきました。

コイル、階段、建築物、DNAと「らせん」という構造は人々の心を魅了するカタチと機能を有しています。八島先生はそんな「らせん」構造の分子レベルでの”建築家”であり、興味深い研究で人々を魅了しています。人柄も抜群でステキな化学者です。

八島先生はどのように研究に興味をもち、どのように展開していきたいのか。ぜひ御覧ください。

Q. あなたが化学者になった理由は?

小さい頃からデッサン(当時はクロッキーと呼んでいました)が好きで、よく祖父や祖母の顔や姿を墨汁とお箸の先を削ったペンで描いては「上手だね」とおだてられてはお小遣いをもらい、それが嬉しくていろいろな人のクロッキーをしていたことを憶えています。中・高とバスケットボールに明け暮れる毎日が続き、そろそろ受験にさしかかった頃、デッサンが受験科目にある建築学科を第一志望にしました。美術の先生についていろいろと教わりましたが、いろいろな事情もあって、結局、第二志望の合成化学科に入学することになりました。
化学(実験)が面白いと感じ始めたのは、4年生になって、結城先生・畑田先生の講座に配属されてからだったと思います。これも第一志望の講座ではなかったことも、今後の人生を大きく左右することになりました。当時、助手をされていた岡本佳男 先生の下で「不斉選択重合」の研究を始め、少しずつ実験の面白さに目覚めてきました。当然、修士で卒業し会社に行こうと思っていた矢先、思いがけず岡本先生から「博士に行ったらどや、どや、どや?」と熱烈なお誘いを頂き、余り深く考えずに博士課程に進学しました。それでもアカデミックに行こうとはさらさら思っていませんでした。実験は好きで相当やりましたが、それでも画期的といえるような成果は出せず、悶々とする中で、博士2年の時に、鹿児島大学の助手にならないかというお誘いを明石満先生から頂き、有り難くお受けしたことを憶えています。思えばこれが大学に残るきっかけとなりました。

岡本佳男

岡本佳男

鹿児島での5年間は、良い学生にも恵まれ、また、明石先生の懐の深い明るい人柄のお陰もあって、これといった成果は残せなかったものの私の研究者人生にとって、大変有意義な5年間となりました。この間、米国にも留学し、遺伝子工学を学ぶ機会にも恵まれたことはその後の研究に間接的ではありますが、大いにプラスになりました。明石先生からは「八島さんの鹿児島での最大の成果は嫁さんを見つけたこと」と言われ返す言葉がありませんでした。その後、恩師の岡本先生とまた、ご一緒する機会にも恵まれ、現在に至っています。思い起こしますと決して自分の意志で自分の道を決めて来たわけではなく、時々のいろいろな選択肢のある中で偶然とは言え、岡本先生や明石先生らとの出会いがあり、これがなければ、大学に残って化学者の道を歩むことも決してなかったと思います。

 

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

もし、初志貫徹するだけの勇気と自信があれば、多分、今でもスランプの時に思い描く、建築家(?)になっていたような気がします。ただ、どうひいき目に見てもそのようなセンスがあるとは思えず、学生さんらとわいわいがやがやできる今の職業に就けて良かったと今では思っています。周りに流されてたどり着いた道ですが、人生とは得てしてこんなもんではないでしょうか。興味と好奇心は後から付いてくるもののような気がします。

 

Q. 現在、どんな研究をしていますか?また、どのように展開していきたいですか?

「らせん」の形をした分子や超分子、高分子の合成と機能の開発に取り組んでいます。らせん高分子の先駆者である岡本佳男先生、Mark Green教授、Roeland Nolte教授ら偉大な先達の先生方との出会いもあって、この世界にのめり込んでいます。
70歳を過ぎようとしておられる(過ぎておられる?)にも関わらず、いまだに現役で子どものような好奇心に満ちあれた独自の研究を続けておられる先生方を見ては、自分には到底真似できないと感じます。
今は、「二重らせん」に興味があり、いろいろな二重らせんを作っています。不斉触媒や分子バネとしての機能も付与できたりして、ワクワクしています。この何とも言えない小さい喜びがあるから、研究を続けられます。「らせんを究める」といろいろな機会に書いたりしていますが、まったく青写真がありません。ただ、将来は、天然物を一切使わずに、人工らせんを使った自己複製の完成を目標にしていますが、どうなるんでしょうか...
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Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

JIN(仁)に触発されたわけではないですが、タイムスリップすることができれば、江戸時代後期の化学者やお医者さんらが実験や治療をしている様子を見てみたいと思います。知識だけは当時を遙かに上回るものがある反面、分析や合成の多くを高価な装置や市販品に頼っている現在、当時にいきつけたとして、いったい我々に何かできるのか?日本の先駆者たちの当時の熱い思い、好奇心、発想などを垣間見たいです。

 

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

かなり前のことで記憶が定かではありませんが、30代半ば、多糖誘導体をTLCプレートにのせ、それを使った光学分割だったように思います。NMRが好きで、二次元NMRを使った構造解析などは研究室を持つまでは自分でもやっていたように思います。学生時代、午後5時を過ぎ、クーラーが切れた真夏の汗ばむ中でアニオン重合をしていた時が懐かしいです。

 

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

ビートルズの赤盤・青盤、それに、ゴルゴ13全巻でしょうか。自宅に化学の蔵書がほとんどなく、家族、特に子ども達はわたしの職業を誤解している可能性があると危惧しています。

 

Q. 次にインタビューをして欲しい人を紹介してください。

京都大学の澤本光男先生をご推薦します。我々の間では「ドン・ガバチョ」先生と呼ばれています。とても近寄りがたい威厳に満ちあふれた雰囲気がありますが、実はお茶目な一面もお持ちの先生です。

 

基本的な質問は以上になります。残念ながら「関西弁」でのインタビュー実現はなりませんでしたが、「えべっさん」に関する面白い造詣(第13回相田卓三教授インタビュー参照)を教えて頂きました。

 

化学者に通じる魂ー覆面レスラー「えべっさん」

この一連のインタビューの品位をおとさないようにと努力しつつも、相田先生のご要望(第13回)にお答えし、昔のプロレスファンの一人として、大阪プロレスの覆面レスラー初代「えべっさん」への、”相田先生と共通する”個人的な思いを記したいと思います。

この方のちまたでの評判とは無関係に、以前テレビで一瞬垣間見た「えべっさん」の闘う姿を見て、化学者に通じる魂を感じた次第です。殴られても、マットに沈んでも、べそかいている顔をみんなに見せず、最後まで「えべっさんのポーカーフェース」を死守することが宿命づけられたプロレスラー、これが「えべっさん」です。ぼこぼこにされているにも関わらず、左斜め45°から見る彼の微笑んだ雄志はかっこよく、虎の穴で鍛えられたタイガーマスクよりも今の世の中、はるかに貴重な存在です。こういう人に私はなりたい(ぼこぼこにされたくは無いですが...)と密かに思っています。

2005.5.1ebe7

 

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八島栄次教授の略歴

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1982年大阪大学基礎工学部合成化学科卒業後、修士課程進学。1986年同大学院博士課程を退学後、鹿児島大学助手となる。1988年工学博士号取得。マサチューセッツ大学博士研究員を経て、1991年名古屋大学助手となる、講師、助教授を経て、1998年名古屋大学教授となり現在に至る。その間、2002年ERATO八島超構造らせん高分子プロジェクトプロジェクトリーダー兼任。受賞歴は2002年IBM化学賞、2008年高分子学会賞など多数。

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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