[スポンサーリンク]

日本人化学者インタビュー

第44回「100%の効率を目指せば、誤魔化しのないサイエンスが見える」安達千波矢教授

[スポンサーリンク]

第44回の研究者のインタビューは、九州大学大学院 工学研究院 応用化学部門 / 最先端有機光エレクトロニクス研究センター 教授の 安達 千波矢 先生です!

安達先生は、有機エレクトロニクス全般(有機EL、有機半導体レーザー、ペロブスカイトLEDなど)で非常に多くの成果を残されています。2012年にNatureに報告された熱活性化遅延蛍光材料を利用した高効率OLEDの報告は特に有名ですね! 重金属を含まない有機物を電気励起で100パーセントの効率で光らせるという偉業を達成されています。安達先生が研究を始められたときは有機ELの研究者は世界で数人しかいなかった、というお話をよく伺うのですが、そこから現在の分野を築くような素晴らしい研究の発展をされているのは本当に驚嘆します。

安達先生の一連のご研究は、国内外から高く評価されており、日本化学会から「2016 トムソンロイター リサーチフロントアワード」、「2017年第63回 仁科記念賞」などその他さまざまな賞を受賞されています。また、2018年、2019年と連続でクラリベイトアナリティクス社からHighly Cited Researcherに選出されています。

安達先生には、本日(10月9日)の夕方18:00より配信される第1回ケムステVプレミアレクチャー「光化学のこれから~ 未来を照らす光反応・光機能 ~」で二人目のスピーカーとしてご登壇いただきます。
講演タイトルは「有機発光デバイス ー過去・現在・未来ー」。安達先生が現在に至るまで時々刻々どのようなことを考えながら研究を発展させてこられたか、現在の挑戦、そして将来の方向性のお話をいただきます。若手研究者や学生に向けてのメッセージもたくさんいただきました。お時間のある方は、是非ご覧いただければ幸いです。

有機エレクトロニクスの分野を築き上げられてきた安達先生のメッセージの詰まったインタビューです!どうぞ、お楽しみください!

Q. あなたが化学者になった理由は?

大学院の時に直感的に新しいエレクトロニクスの開拓をやってみたいと感じていました。エレクトロニクスと有機分子の融合に突破口があると感じ、新しい有機材料で自分の作りたいデバイスや新機能など、夢が実現できると感じた凄い瞬間があったからです。化学で新しいエレクトロニクスを開拓して行きたいと思っています。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

小さいときは飛行機好きで絶対にパイロットか飛行機の設計に携わりたいと思っていました。今は、たまに、建築や工業デザインをやって見たいと強く感じることがあります。素敵なデザインは、人の心に訴えるものがあるし、機能美が出てくるところがとっても面白いと感じます。分子デザインと共通かもしれませんね。

Q. 現在、どんな研究をしていますか?また、どのように展開していきたいですか?

それは秘密ですね。もちろん、TADF、有機半導体レーザーはベースとしてやっていますけど。できたら、あっと驚く2つの新しい課題にチャレンジしています。スーパー機能の発現で、日本の産業を支えたいし、社会を大きく発展させたいと思っています。大きな方向性としては、最後は命が尽きるまで分子エレクトロニクスへ挑戦して、バイオとの融合へ進めたいと思っています

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

科学者ではないですが、溢れる情熱のSteve Jobsと食事をしてみたいですね。何か新しいインスピレーションをもらえそうな気がします。

[amazonjs asin=”B0081BLON2″ locale=”JP” title=”スティーブ・ジョブズ全発言 世界を動かした142の言葉 (PHPビジネス新書)”]

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

2018年、有機半導体レーザー発振に関する重要な成果がでたのですが、それを確認するためにデバイスから素子作製までをFirst Authorとがっちり実験を行いました。最近は、若い人にファンドを獲ってもらって、再び、実験に没頭したいと思っています。体力が心配ですけども、、、

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

きっと、とりあえず脱出したいので、サバイバルの本かな。音楽はバンゲリスを聞き、夜空を見ながら宇宙と一体になりたいですね。

[amazonjs asin=”4391124130″ locale=”JP” title=”実践サバイバルのすすめ―ひと目でわかる図解 (ひと目でわかる!図解)”] [amazonjs asin=”B00BS6XKIE” locale=”JP” title=”オデッセイ~ザ・ベスト・コレクション”]

Q. 次にインタビューをして欲しい人を紹介してください。

学際領域の研究者として、東大の竹内昌治先生、竹谷純一先生、千葉大の石井久夫先生のお話を聞いてみたいですね。

関連リンク

安達教授の略歴

1991年、九州大学大学院総合理工学研究科 博士課程修了後、リコー化成品技術研究所 研究員。1996年、信州大学線維学部の助手、1999年 プリンストン大学 研究員を経て、2001年に千歳科学技術大学光科学部 助教授、2004年に教授へ昇任。2005年から九州大学 未来化学創造センターの教授に着任。2010年から九州大学 最先端有機光エレクトロニクス研究センター長・主幹教授。現在に至る。

*本インタビューは2020年9月30日に行われたものです

spectol21

投稿者の記事一覧

ニューヨークでポスドクやってました。今は旧帝大JKJ。専門は超高速レーザー分光で、分子集合体の電子ダイナミクスや、有機固体と無機固体の境界、化学反応の実時間観測に特に興味を持っています。

関連記事

  1. 第34回 生物学と合成化学のハイブリッド高分子材料を開発する―J…
  2. 第73回「分子混合物の分離特性を制御する機能性分離膜の創製」金指…
  3. 第64回―「ホウ素を含むポルフィリン・コロール錯体の研究」Pen…
  4. 第73回―「Nature Chemistryの編集者として」Ga…
  5. 第四回 期待したいものを創りだすー村橋哲郎教授
  6. 第153回―「ネットワーク無機材料の結晶学」Micheal O&…
  7. 第40回「分子設計で実現する次世代バイオイメージング」山東信介教…
  8. 第89回―「タンパク質間相互作用阻害や自己集積を生み出す低分子」…

注目情報

ピックアップ記事

  1. キムワイプLINEスタンプを使ってみよう!
  2. フライパンの空焚きで有毒ガス発生!?
  3. iPhone/iPodTouchで使える化学アプリケーション
  4. エピスルフィド合成 Episulfide Synthesis
  5. 2つ輪っかで何作ろう?
  6. 遺伝子の転写調節因子LmrRの疎水性ポケットを利用した有機触媒反応
  7. 結晶学分野に女性研究者が多いのは何故か?
  8. リンダウ会議に行ってきた①
  9. 化学者がMidjourneyで遊んでみた
  10. 炭素を1つスズに置き換えてみたらどうなる?

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年10月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

第58回Vシンポ「天然物フィロソフィ2」を開催します!

第58回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!今回のVシンポは、コロナ蔓延の年202…

第76回「目指すは生涯現役!ロマンを追い求めて」櫛田 創 助教

第76回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第75回「デジタル技術は化学研究を革新できるのか?」熊田佳菜子 主任研究員

第75回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第74回「理想的な医薬品原薬の製造法を目指して」細谷 昌弘 サブグループ長

第74回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第57回ケムステVシンポ「祝ノーベル化学賞!金属有機構造体–MOF」を開催します!

第57回ケムステVシンポは、北川 進 先生らの2025年ノーベル化学賞受賞を記念して…

櫛田 創 Soh Kushida

櫛田 創(くしだそう)は日本の化学者である。筑波大学 数理物質系 物質工学域・助教。専門は物理化学、…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP