[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第29回 適応システムの創製を目指したペプチドナノ化学 ― Rein Ulijn教授

[スポンサーリンク]

第29回の海外研究者インタビューは、Rein Ulijn教授です。Ulijin教授はマンチェスター大学の材料学部とマンチェスター学際的生物学センター(MIB)に所属し、生物医学・技術応用のため、ペプチドベースのナノマテリアルの設計に取り組んでいます。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

学部生でバイオテクノロジーを学んでいたとき、自然界が考案した適応性の高い機能性構造の設計コンセプトに魅了されました。これらのシステムを単純化し、人工システムに効果的に組み込むことができれば、有用な機能性材料およびデバイスの設計可能性は無限に広がるだろうと考えたのです。化学はこのすべての鍵を握っています。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

おそらく建築家になっているでしょう。既定のデザインに基づき、美的・快適・便利な構造を作り上げるという考えは、私にとって魅力的なのです。研究室では同じことをやろうとしていますが、はるかに小規模です。

Q.概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

これはまじめな話ですが、持続可能かつ再生可能なエネルギー源について、最も緊急に貢献が求められています。いつの日か、太陽エネルギーを燃料または電気に効率的に変換する分子デバイスを作れるようになるかもしれません。しかし主要なブレークスルーは、おそらく誰も考えついていない、ほとんど明らかにされていない解決法なのでしょう。私の見解では、こういったアイデアの登場は、この分野における基礎的・非現実的研究にどれだけ資金が投じられるかのみで決まっています。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

可能であれば、鼓舞的な方だと想像している、チャールズ・ダーウィンフランシス・クリックの二人同時にです。進化の過程が限界に到達したとき、最終的に到達しうる複雑さの限界について、彼らの考えを尋ねるでしょう。それから座して耳を傾け、インスピレーションを得るでしょう。

チャールズ・ダーウィン ( 1809 - 1882)

チャールズ・ダーウィン ( 1809 – 1882)

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

私は最高に熱心な実験者ではなかったので、喜んで実験から離れ、才能あるポスドクや大学院生に任せています。しかし過去4年間の中では、約4ヶ月前に1度実験を行いました。芳香族短鎖ペプチド誘導体を用いたカーボンナノ材料の分散試験を含む、概念実証実験です。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

ダグラス・アダムスの「銀河へのヒッチハイクガイド」の全4巻を読んでみます。多くの人が必読だと私に勧めてくれたからです。ある同僚が言うには、現在イギリスに長期滞在しているのだから、その書物にある繊細なユーモアをもっと楽しむべきなのだと!

私の音楽の趣味はとても変わりやすいので、当時の私の車載CDプレーヤーにあったものなら何でもいいと思います。

 

原文:Reactions – Rein Ulijn

※このインタビューは2007年9月7日に公開されました。

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 「生物素材で新規構造材料を作り出す」沼田 圭司 教授
  2. 第61回―「デンドリマーの化学」Donald Tomalia教授…
  3. 第144回―「CO2を捕捉する多孔性金属-有機構造体の開発」My…
  4. 第47回―「ロタキサン・カテナン・クラウンエーテルの超分子化学」…
  5. 第60回―「エネルギー・環境化学に貢献する金属-有機構造体」Ma…
  6. 第57回「製薬会社でVTuber担当?化学者の意外な転身」前川 …
  7. 第104回―「生体分子を用いる有機エレクトロニクス」David …
  8. 第55回―「イオン性液体と化学反応」Tom Welton教授

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. アルコールのアルカンへの還元 Reduction from Alcohol to Alkane
  2. ADC薬 応用編:捨てられたきた天然物は宝の山?・タンパクも有機化学の領域に!
  3. モーテン・メルダル Morten P. Meldal
  4. 国連番号(UN番号)
  5. 5社とも増収 経常利益は過去最高
  6. 「溶融炭酸塩基の脱プロトン化で有用物質をつくる」スタンフォード大学・Kanan研より
  7. がん細胞をマルチカラーに光らせる
  8. フライパンの空焚きで有毒ガス発生!?
  9. 有機合成化学協会誌2021年11月号:英文特集号 Special Issue in English
  10. 抗ガン天然物インゲノールの超短工程全合成

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年12月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

先端事例から深掘りする、マテリアルズ・インフォマティクスと計算科学の融合

開催日:2023/12/20 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

最新の電子顕微鏡法によりポリエチレン分子鎖の向きを可視化することに成功

第583回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院 工学研究科 応用化学専攻 陣内研究室の狩野見 …

\脱炭素・サーキュラーエコノミーの実現/  マイクロ波を用いたケミカルリサイクル・金属製錬プロセスのご紹介

※本セミナーは、技術者および事業担当者向けです。脱炭素化と省エネに貢献するモノづくり技術の一つと…

【書籍】女性が科学の扉を開くとき:偏見と差別に対峙した六〇年 NSF(米国国立科学財団)長官を務めた科学者が語る

概要米国の女性科学者たちは科学界のジェンダーギャップにどのように向き合い,変えてきたのか ……

【太陽ホールディングス】新卒採用情報(2025卒)

■■求める人物像■■「大きな志と好奇心を持ちまだ見ぬ価値造像のために前進できる人…

細胞代謝学術セミナー全3回 主催:同仁化学研究所

細胞代謝研究をテーマに第一線でご活躍されている先生方をお招きし、同仁化学研究所主催の学術セミナーを全…

マテリアルズ・インフォマティクスにおける回帰手法の基礎

開催日:2023/12/06 申込みはこちら■開催概要マテリアルズ・インフォマティクスを…

プロトン共役電子移動を用いた半導体キャリア密度の精密制御

第582回のスポットライトリサーチは、物質・材料研究機構(NIMS) ナノアーキテクトニクス材料研究…

有機合成化学協会誌2023年11月号:英文特別号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2023年11月号がオンライン公開されています。…

高懸濁試料のろ過に最適なGFXシリンジフィルターを試してみた

久々の、試してみたシリーズ。今回試したのはアドビオン・インターチム・サイエンティフィ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP