[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第127回―「生物学的に取扱困難な金属イオンを研究する」Ann Valentine教授

[スポンサーリンク]

第127回の海外化学者インタビューはアン・バレンタイン教授です。イェール大学化学科に所属(訳注:現在はテンプル大学に所属)し、加水分解に極めて敏感な金属イオンを生物学的にどのように扱うかを研究しています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

基礎科学が好きだったのですが、生物学は大きすぎて(複雑すぎて)、物理学は小さすぎて(素粒子物理学)・・・そして大きすぎて(宇宙物理学)。化学の「分子スケール」はちょうどよかったです。また、高校2年生の時には、科学部の指導者であるエイダ・マーガレット・ハッチソンが、1年のほとんどを研究室で自由にさせてくれました。たくさんのものに火をつけました。そしてこう思いました:化学へと誘ってください!と。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

中学校の科学教師になりたいと思います。その年齢層の子供たちにアウトリーチプログラムを行うのが好きです。一方で、高校生は怖いです。例外もありますが、彼らはお互いに関心を抱くことに忙しく、科学に夢中になれないことが多いのです。

Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?

今日の午後考えたプロジェクトの一つですが、生体分子とチタン(IV)の基本的な相互作用を研究しています。現在チタンはほとんど不活性であると考えられていますが、信じられないほど豊富で、人間が多くの用途を見出してきたこの元素について、生物学が生産的利用法を見出せなかったということには、受け入れがたい気持ちになります。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

エド・リケッツは1940年代までカリフォルニア州のモントレーで働いていた裏切り者のような海洋生物学者です。彼はジョン・スタインベックの友人であり、『キャナリー・ロウ』の”ドク”というキャラクターの発想元になった人物です。スタインベックは「アバウト・エド・リケッツ」というトリビュートを書いていますが、この本は現在『ザ・ログ・フロム・ザ・シー・オブ・コルテス』という本と一緒に出版されていて、二人の大冒険を描いています。このオマージュを読むと、リケッツと食事をしたくなります。科学的には啓発的機会になると思いますが、おそらく本当に、本当に面白いものになると思います。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

ラボノートの最新エントリーは2007年6月22日です。ラボに入って、すべて自分で行う形で、フェリチンタンパク質精製のトラブルシューティングをしようとしていました。最終的なゲル画像がないのは、いくつかの他の用事に気を取られてしまったので、ゲルを1週間ほど脱染色して放置してしまったからです。今では、自分で何かをしようとするのではなく、大学院生が困っている実験や機器を用いながら、そばで一緒に数時間「手伝う」ことが多くなりました。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

何か高尚なものを選びたい衝動に駆られています。自分を賢く印象的に見せてくれるものを。でも正直に言うと、数年ごとに再読している本といえば、ジョン・アーヴィングの『A Prayer for Owen Meany』です。

そして、いつでも聴きたいアルバムは、マーク・コーンの『Live 04-05』ですね。古い曲と新しい曲が混在しているディスクです。

Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者と、その理由を教えてください。

ハリー・グレイにインタビューしたことはありますか?彼はいつでも面白くて頼りになります。質問にはきっと素晴らしい答えが返ってくるでしょうね。

原文:Reactions – Ann Valentine

※このインタビューは2009年8月7日に公開されました。

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第109回―「サステイナブルな高分子材料の創製」Andrew D…
  2. 第28回「ナノバイオデバイスが拓く未来医療」馬場嘉信教授
  3. 第63回「遊び人は賢者に転職できるのか」― 古川俊輔 助教
  4. 第64回「実際の化学実験現場で役に立つAIを目指して」―小島諒介…
  5. 第62回「分子設計ペプチドで生命機能を制御する!!」―松浦和則 …
  6. 第43回「はっ!」と気づいたときの喜びを味わい続けたい R…
  7. 第67回―「特異な構造・結合を示すランタニド/アクチニド錯体の合…
  8. 第61回「セラミックス粉体の合成から評価解析に至るまでのハイスル…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 未来の科学者を育てる政策~スーパーサイエンスハイスクール(SSH)~
  2. クロロラジカルHAT協働型C-Hクロスカップリングの開発
  3. 研究室の大掃除マニュアル
  4. 林・ヨルゲンセン触媒 Hayashi-Jørgensen Catalyst
  5. ニトログリセリン / nitroglycerin
  6. 超分子ランダム共重合を利用して、二つの”かたち”が調和されたような超分子コポリマーを造り、さらに光反応を利用して別々の”かたち”に分ける
  7. りん酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(トリメチルアンモニオ)エチル : 2-(Methacryloyloxy)ethyl 2-(Trimethylammonio)ethyl Phosphate
  8. ロピニロールのメディシナルケミストリー -iPS創薬でALS治療に光明-
  9. 住友化学、Dow Chemical社から高分子有機EL用材料事業を買収
  10. 有機トリフルオロボレート塩 Organotrifluoroborate Salt

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年11月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

注目情報

最新記事

先端事例から深掘りする、マテリアルズ・インフォマティクスと計算科学の融合

開催日:2023/12/20 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

最新の電子顕微鏡法によりポリエチレン分子鎖の向きを可視化することに成功

第583回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院 工学研究科 応用化学専攻 陣内研究室の狩野見 …

\脱炭素・サーキュラーエコノミーの実現/  マイクロ波を用いたケミカルリサイクル・金属製錬プロセスのご紹介

※本セミナーは、技術者および事業担当者向けです。脱炭素化と省エネに貢献するモノづくり技術の一つと…

【書籍】女性が科学の扉を開くとき:偏見と差別に対峙した六〇年 NSF(米国国立科学財団)長官を務めた科学者が語る

概要米国の女性科学者たちは科学界のジェンダーギャップにどのように向き合い,変えてきたのか ……

【太陽ホールディングス】新卒採用情報(2025卒)

■■求める人物像■■「大きな志と好奇心を持ちまだ見ぬ価値造像のために前進できる人…

細胞代謝学術セミナー全3回 主催:同仁化学研究所

細胞代謝研究をテーマに第一線でご活躍されている先生方をお招きし、同仁化学研究所主催の学術セミナーを全…

マテリアルズ・インフォマティクスにおける回帰手法の基礎

開催日:2023/12/06 申込みはこちら■開催概要マテリアルズ・インフォマティクスを…

プロトン共役電子移動を用いた半導体キャリア密度の精密制御

第582回のスポットライトリサーチは、物質・材料研究機構(NIMS) ナノアーキテクトニクス材料研究…

有機合成化学協会誌2023年11月号:英文特別号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2023年11月号がオンライン公開されています。…

高懸濁試料のろ過に最適なGFXシリンジフィルターを試してみた

久々の、試してみたシリーズ。今回試したのはアドビオン・インターチム・サイエンティフィ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP