[スポンサーリンク]

D

DABSOを用いるSO2導入反応 SO2 incorporation using DABSO

[スポンサーリンク]

概要

二酸化硫黄(SO2)は合成化学的に活用可能な硫黄源であるが、毒性気体として存在するため、化学反応に用いるにはドラフトなどの排気システム下で取り扱う必要があった。

SO2とDABCOとの電荷移動錯体(DABSO)は、吸湿性だが取り扱い容易な固体であり、SO2等価体として安全に用いることができる。DABSOは市販もされている。

これをGrignard試薬やパラジウム触媒を用いるカップリング条件に伏すことで、スルホン誘導体を簡便に得ることができる。

基本文献

  • Santos, P. S.; Mello, M. T. S. J. Mol. Struct. 1988, 178, 121. doi:10.1016/0022-2860(88)85010-5
  • Nguyen, B.; Emmett, E. J.; Willis, M. C. J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 16372. doi:10.1021/ja1081124
  • Woolven, H.; Gonzalez-Rodriguez, C.; Marco, I.; Thompsono, A. L.; Willis, M. C. Org. Lett. 2011, 13, 4876. DOI: 10.1021/ol201957n
<review>

開発の経緯

2010年、オックスフォード大学のMichael C. Willisによって、SO2等価体としての有用性が示された。

Michael C. Willis

反応例

有機金属試薬を用いるスルホンアミド・スルホン合成[1]

DABSO_4

DABSO_5

パラジウム触媒を用いる1工程スルホニルヒドラジン合成[2]

DABSO_6

N-トシルヒドラゾンからの1ステップスルホンアミド合成[3]:芳香族ケトン由来の原料以外では収率が低めに出る。DABSOの代わりにK2S2O5も使用可能。

DABSO_2

実験手順

DABSOの合成:市販品は高価であるが、カール・フィッシャー試薬からSO2ガスを使用せず安価に合成できる調製法が報告されている[4]。※Karl-Fischer試薬solution Aは、ピリジン-SO2付加体として、約15-20%のSO2を含む。

DABSO_3

テフロン製スターラーバーを備えた500mLの乾燥丸底フラスコに、室温下1,4-diazabicyclo[2.2.2]octane (DABCO) (15.0 g, 134 mmol, 1 eq), 無水THF (180mL)を加え、容器内をアルゴン置換する。溶解後に氷冷し、Karl-Fischer試薬(solution A, 120 mL, ca. 280-375 mmol SO2)をシリンジで滴下し、攪拌する。滴下開始後すぐさまDABSOの沈殿が観測される。0℃で30分攪拌したのち、氷浴を外し、懸濁液を室温でさらに3時間攪拌する。懸濁液をグラスフィルターで吸引濾過し、白色固体をジエチルエーテル(50 mL)を加えて粉砕、フラスコに移してジエチルエーテル(200mL)を加えて窒素雰囲気下に15分攪拌、グラスフィルターでろ過。この過程を2回繰り返す。DABSOは吸湿性のため、これをすぐさまデシケータに入れて12時間減圧乾燥することでDABSO (30.9-31.0g, 96-97%, mp 143℃)を白色固体として得る。

別法として亜硫酸ナトリウムからCOware経由で製造する方法も報告されている[5]。

参考文献

  1. Woolven, H.; Gonzalez-Rodriguez, C.; Marco, I.; Thompsono, A. L.; Willis, M. C. Org. Lett. 2011, 13, 4876. DOI: 10.1021/ol201957n
  2. Nguyen, B.; Emmett, E. J.; Willis, M. C. J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 16372. doi:10.1021/ja1081124
  3. Tsai, A. S. et al. Org. Lett. 2016, 18, 508. doi:10.1021/acs.orglett.5b03545
  4. Martial, L; Bischoff, L. Org. Synth. 2013, 90, 301. DOI: 10.15227/orgsyn.090.0301
  5. Van Mileghem, S.; De Borggraeve, W. M. Org. Process Res. Dev. 2017, 21, 785. DOI: 10.1021/acs.oprd.7b00083

関連書籍

[amazonjs asin=”019518775X” locale=”JP” title=”The First Miracle Drugs: How the Sulfa Drugs Transformed Medicine”][amazonjs asin=”B00DF3U7FC” locale=”JP” title=”Bioisosteres in Medicinal Chemistry, Volume 54 (Methods and Principles in Medicinal Chemistry)”]

関連リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. ペイン転位 Payne Rearrangement
  2. 秋山・寺田触媒 Akiyama-Terada Catalyst
  3. ミカエリス・アルブゾフ反応 Michaelis-Arbuzov …
  4. O-アシルイソペプチド法 O-acylisopeptide Me…
  5. ヒドロシリル化反応 Hydrosilylation
  6. ヒドロホルミル化反応 Hydroformylation
  7. クロム(η6-アレーン)カルボニル錯体 Cr(η6-arene)…
  8. TPAP(レイ・グリフィス)酸化 TPAP (Ley-Griff…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 年に一度の「事故」のおさらい
  2. 有機合成化学協会誌2022年8月号:二酸化炭素・アリル銅中間体・遺伝子治療・Phaeosphaeride・(−)-11-O-Debenzoyltashironin・(−)-Bilobalide
  3. Dead Endを回避せよ!「全合成・極限からの一手」②(解答編)
  4. 続・企業の研究を通して感じたこと
  5. ラマン分光の基礎知識
  6. ケムステスタッフ徹底紹介!
  7. 第58回Vシンポ「天然物フィロソフィ2」を開催します!
  8. ケムステ10年回顧録― 副代表版
  9. 第123回―「遺伝暗号を拡張して新しいタンパク質を作る」Nick Fisk教授
  10. バイオマス燃料・化学品の合成と触媒の技術動向【終了】

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年8月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

第61回Vシンポ「中分子バイオ医薬品分析の基礎と動向 ~LCからLC/MSまで、研究現場あるあるとその対処~」を開催します!

こんにちは、Macyです。第61回Vシンポのご案内をさせていただきます。今回は、Agilen…

水分はどこにあるのか【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

「MI×データ科学」コース 〜LLM・自動実験・計算・画像とベイズ最適化ハンズオン〜

1 開講期間2026年5月26日(火)、29日(金) 計2日間2 コースのねらい、特色近…

材料の数理モデリング – マルチスケール材料シミュレーション –

材料の数理モデリング概要材料科学分野におけるシミュレーションを「マルチスケール」で理解するた…

第59回天然物化学談話会@宮崎(7/8~10)

ごあいさつ天然物化学談話会は、全国の天然物化学および有機合成化学を研究する大学生…

トッド・ハイスター Todd K. Hyster

トッド・カート・ハイスター(Todd Kurt Hyster、1985年10月10日–)はアメリカ出…

“最難関アリル化”を劇的に加速する固定化触媒の開発

第 703回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院 理工学府 博士課程前期で…

「ニューモダリティと有機合成化学」 第5回公開講演会

従来の低分子、抗体だけでなく、核酸、ペプチド、あるいはその複合体(例えばADC(抗体薬物複合体))、…

溶融する半導体配位高分子の開発に成功!~MOFの成形加工性の向上に期待~

第702回のスポットライトリサーチは、関西学院大学理学部(田中研究室)にて助教をされていた秋吉亮平 …

ミン・ユー・ガイ Ming-Yu Ngai

魏明宇(Ming-Yu Ngai、1981年X月XX日–)は米国の有機化学者である。米国パデュー大学…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP