[スポンサーリンク]

odos 有機反応データベース

歪み促進逆電子要請型Diels-Alder反応 SPIEDAC reaction

[スポンサーリンク]

概要

テトラジンやトリアジンなどの極めて電子不足な複素環は、ノルボルネン・trans-シクロオクテン・シクロオクチンといった歪C-C多重結合化合物に対して高い反応性を示す。

この歪み促進逆電子要請型Diels-Alder反応(Strain-Promoted Inverse Electron-demand Diels-Alder Cycloaddition, SPIEDACは、様々な官能基が共存しても選択的に進行する「クリックケミストリー」の特性を備え、生体共役反応として用いられている。他の反応と比べても、金属触媒などを必要とせず、圧倒的に高速なことが最大の特徴である。

基本文献

  • Carboni, R. A.; Lindsey, R. V. J. Am. Chem. Soc. 1959, 81, 4342. DOI: 10.1021/ja01525a060
  • Devaraj, N. K.; Weissleder, R.; Hilderbrand, S. A. Bioconjugate Chem. 2008, 19, 2297. doi:10.1021/bc8004446
  • Blackman, M. L.; Royzen, M.; Fox, J. M. J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 13518.  DOI: 10.1021/ja8053805
  • Devaraj, N. K.; Upadhyay, R.; Haun, J. B.; Hilderbran, S.; Weissleder, R. Angew. Chem. Int. Ed. 2009, 48, 7013. doi:10.1002/anie.200903233
  • Devaraj, N. K.; Hilderbran, S.; Upadhyay, R.; Mazitschek, R.; Weissleder, R. Angew. Chem. Int. Ed. 2010, 49, 2869. doi:10.1002/anie.200906120
  • Darko, A.; Wallace, S.; Dmitrenko, O.; Machovina, M. M.; Mehl, R. A.; Chin, J. W.; Fox, J. M. Chem. Sci. 2014, 5, 3770. doi:10.1039/C4SC01348D
<review>
<applications to in vivo Click Chemistry>
  • Seckute, J.; Devaraj, N. K. Curr. Opin. Chem. Biol. 2013, 17, 761. doi: 10.1016/j.cbpa.2013.08.004
  • Debets, M. F.; van Berkel,  S. S.; Dommerholt, J.; Dirks, A. J.; Rutjes, F. P. T. J.; van Delft, F. L. Nat. Rev. Chem. 2018, 2, 202. DOI: 10.1038/s41570-018-0030-x

反応機構

Diels-Alder反応の項目も参照。

SPAAC反応がおよそk = 10-2 ~ 10-1 M-1s-1程度であることに比べ、テトラジンSPIEDAC反応はk = 1 ~ 106 M-1s-1と極めて高速に進行することが特徴である。大まかな傾向としては、テトラジンが電子不足で立体障害が少ないほど、またアルケン・アルキン側の歪みが大きいほど反応速度は大きくなる(下図:

Synthesis 2017, 49, 830より引用・改変)。ただし反応の速い分子は不安定でもあり、生体系のシステインなどと反応して壊れて行きやすい。

反応例

生細胞内Click反応への応用[1]:細胞内反応への活用のためには104M-1s-1以上の速度定数が必要とされる(uM-nM濃度で数分以内に完結する速度)が、本反応はこの基準に適する。Mehlらはテトラジン部位を備えた細胞内GFPに対し、trans-シクロオクテンを反応させて速度定数を見積もっている[2]。また細胞内RNAを標的にした変換も検討されている[3]。

直交型SPIEDAC反応[4]:Lemkeらは、シクロオクチンは立体障害を理由に1置換テトラジンと優先的に反応し、trans-シクロオクテンは1置換・2置換テトラジン両者とも反応することを見いだしている。これを利用して連続的な直交的生体ラベル化を達成している。

化学decagingへの応用[5]:下図のように、カルバメート型trans-シクロオクテンはテトラジンとの生体直交反応により脱離を引き起こし、アミンを露出させる。この反応を利用して、低分子プロドラッグ化[6]、抗体―薬物複合体の薬物リリース[7]、細胞内酵素活性化目的[8]などにも活用されている。

 

参考文献

  1. Liu, D. S.; Tangpeerachaikul, A.; Selvaraj, R.; Taylor, M. T.; Fox, J. M.; Ting, A. Y. J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 792. DOI: 10.1021/ja209325n
  2. Blizzard, R. J.; Backus, D. R.; Brown, W.; Bazewicz, C. G.; Li, Y.; Mehl, R. A. J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 10044. doi: 10.1021/jacs.5b03275
  3. Pyka, A. M.; Domnick, C.; Braun, F.; Kath-Schorr, S. Bioconjugate Chem. 2014, 25, 1438. DOI: 10.1021/bc500302y
  4. Nikic, I.; Plass, T.; Schraidt, O.; Szymanski, J.; Briggs, J. A.; Schultz, C.; Lemke, E. A. Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 53, 2245. doi:10.1002/anie.201309847
  5. Fan, X.; Ge, Y.; Lin, F.; Yang, Y.; Zhang, G.; Ngai, W. S.; Lin, Z.; Zheng, S.; Wang, J.; Zhao, J.; Li, J.; Chen, P. R. Angew. Chem. Int. Ed. 2016, 55, 14046. doi:10.1002/anie.201608009
  6. Versteegen, R. M.; Rossin, R.; ten Hoeve, W.; Janssen, H. M.; Robillard, M. S. Angew. Chem. Int. Ed. 2013, 52, 14112. doi:10.1002/anie.201305969
  7. Rossin, R.; van Duijnhoven, S. M.; ten Hoeve, W.; Janssen, H. M.; Kleijn, L. H.; Hoeben, F. J.; Versteegen, R. M.; Robillard, M. S. Bioconjugate Chem. 2016, 27, 1697. DOI: 10.1021/acs.bioconjchem.6b00231
  8. (a) Li, J.; Jia, S.; Chen, P. R. Nat. Chem. Biol. 2014, 10, 1003. doi:10.1038/nchembio.1656 (b) Zhang, G.; Li, J.; Xie, R.; Fan, X.; Liu, Y.; Zheng, S.; Ge, Y.; Chen, P. R. ACS Cent. Sci. 2016, 2, 325. DOI: 10.1021/acscentsci.6b00024

関連書籍

外部リンク

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. グロブ開裂 Grob Fragmentation
  2. マクマリーカップリング McMurry Coupling
  3. シャープレス不斉ジヒドロキシル化 Sharpless Asyem…
  4. マクミラン触媒 MacMillan’s Cataly…
  5. ブラウンヒドロホウ素化反応 Brown Hydroboratio…
  6. ガスマン インドール合成 Gassman Indole Synt…
  7. 北エステル化反応 Kita Esterification
  8. パーコウ反応 Perkow Reaction

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 研究倫理問題について学んでおこう
  2. SHIPS uniform worksとのコラボ!話題の白衣「WHITECOAT」を試してみた
  3. 変異体鏡像Rasタンパクの化学全合成
  4. フリードリヒ・ヴェーラー Friedrich Wohler
  5. 世界の中分子医薬品市場について調査結果を発表
  6. ちょっと変わったイオン液体
  7. 官能基化オレフィンのクロスカップリング
  8. 学部4年間の教育を振り返る
  9. 求電子的フッ素化剤 Electrophilic Fluorination Reagent
  10. 還元的脱硫反応 Reductive Desulfurization

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2019年1月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

注目情報

注目情報

最新記事

国内最大級の研究者向けDeepTech Company Creation Program「BRAVE FRONTIER」 2022年度の受付開始 (7/15 〆切)

Beyond Next Ventures株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社⻑:伊藤毅、以下「…

イミンアニオン型Smiles転位によるオルトヒドロキシフェニルケチミン合成法の開発

第394回のスポットライトリサーチは、東京農工大学 大学院工学府 応用化学専攻 森研究室の神野 峻輝…

マテリアルズ・インフォマティクスで用いられる統計[超入門]-研究者が0から始めるデータの見方・考え方-

開催日:2022/07/06 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

表面酸化した銅ナノ粒子による低温焼結に成功~銀が主流のプリンテッドエレクトロニクスに、銅という選択肢を提示~

第393回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院工学院 材料科学専攻 マテリアル設計講座 先…

高分子材料におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用とは?

 申込みはこちら■セミナー概要本動画は、20022年5月18日に開催されたセミナー「高分…

元素のふるさと図鑑

2022年も折り返しに差し掛かりました。2022年は皆さんにとってどんな年になり…

Q&A型ウェビナー カーボンニュートラル実現のためのマイクロ波プロセス 〜ケミカルリサイクル・乾燥・濃縮・焼成・剥離〜

<内容>本ウェビナーでは脱炭素化を実現するための手段として、マイクロ波プロセスをご紹介いたします…

カルボン酸、窒素をトスしてアミノ酸へ

カルボン酸誘導体の不斉アミノ化によりキラルα-アミノ酸の合成法が報告された。カルボン酸をヒドロキシル…

海洋シアノバクテリアから超強力な細胞増殖阻害物質を発見!

第 392回のスポットライトリサーチは、慶應義塾大学大学院 理工学研究科 博士後期課…

ポンコツ博士の海外奮闘録⑧〜博士,鍵反応を仕込む②〜

ポンコツシリーズ一覧国内編:1話・2話・3話国内外伝:1話・2話・留学TiPs海外編:1…

Chem-Station Twitter

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP