[スポンサーリンク]

ケムステニュース

114番元素生成の追試に成功

[スポンサーリンク]

114番元素・ウンウンクアジウム(Uuq)生成の追試に、このたび米ローレンス・バークリー国立研究所のチーム(写真:EurekAlert !)が成功しました。

1999年にロシアのドゥブナ研究所にて初の生成が観測されて以来、10年を経ての追試成功となります。

新元素の追試というのは、得てしてこういったスパンで時間がかかるものなのです。

核物理学の世界では「特定数の陽子+中性子からなる元素が異常な安定性を誇る」とする、魔法数理論(magic number theory)が知られています。

過去確認されているなかで最大の魔法数をもつのは鉛の同位体(21286Pb)で、地球の年齢以上の半減期を持つことが判明しています。

114番元素の同位体の一つ(298114Uuq)は、それよりも大きな魔法数をもちます。それゆえ、数分以上きわめて安定に存在すると期待されています。この予測のため、114番元素は俗に安定の島(Island of Stability)と呼ばれる元素群の候補のひとつとされています。

それゆえこの確認作業は、超長寿命を持つ新元素の実用という意味合いも持っています。他の超重元素生成・確認以上の意義があるというわけです。

今回バークリーグループは、カルシウム(4820Ca)とプルトニウム(24294Pu )を加速器で衝突させ、114番元素の二つの同位体(286114Uuq, 287114Uuq)を得ました。しかしこれらは残念なことに魔法数を持たないせいか、数ミリ秒を経た後に分解してしまったそうです。ともあれ114番元素生成の追試としては認められる成果です。

今後とも新元素の発見研究・追試研究は継続していくでしょう。それが実用された暁には、何かしら超越的なものすら生み出されるようになるかもしれません。科学者たちの抱く夢は果てがありませんね。

話は変わりますが、この事実は米国だとLos Angeles Timesという一般紙でも取り上げられているほどのニュースですが、「安定の島」や実験内容などにも言及があり、なかなかにしっかりした記事で驚くばかりです。
日本国内新聞の科学欄も、分かりやすさを追うあまり必要以上に単純化したり、取材元・読者に媚びてミスリーディングなどせず、自信を持ってこれぐらいのクオリティで書いても一向に構わないのでは、と思えます。難しすぎることを嫌う風潮は、読者獲得という観点からしてみれば理解できなくもありませんが、読者の多くは馬鹿ではないと思いますよ。

【追記】 ところで読者のTwitterで知ったんですけど、こんなボーカロイド自作曲があるんですね。ウンウンクアジウムたん・・・超マニアックだ。

 

関連動画

関連文献

“Independent Verification of Element 114 Production in the 48Ca+242Pu Reaction”
Nitsche, H. et al. Phys. Rev. Lett. 2009, 103, 132502. doi:10.1103/PhysRevLett.103.132502

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4062578050″ locale=”JP” title=”元素111の新知識 第2版増補版 (ブルーバックス)”][amazonjs asin=”4759811672″ locale=”JP” title=”元素生活 Wonderful Life With The ELEMENTS”][amazonjs asin=”4759811672″ locale=”JP” title=”元素生活 Wonderful Life With The ELEMENTS”][amazonjs asin=”431551876X” locale=”JP” title=”完全図解周期表―ありとあらゆる「物質」の基礎がわかる (ニュートンムック Newton別冊サイエンステキストシリーズ)”]

 

外部リンク

Ununquadium – Wikipedia

ウンウンクアジウム – Wikipedia

魔法数  – Wikipedia

Island of Stability – Wikipedia

Superheavy element 114 confirmed by Berkeley Lab nuclear scientists (Science Blog)

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 一家に1枚周期表を 理科離れ防止狙い文科省
  2. 世界初 ソフトワーム用自発光液 「ケミホタルペイント」が発売
  3. 170年前のワインの味を化学する
  4. 製薬各社 2010年度 第2四半期決算を発表
  5. タンニンでさび防ぐ効果 八王子の会社
  6. 元素ネイルワークショップー元素ネイルってなに?
  7. IBM,high-k絶縁膜用ハフニウムの特性解析にスパコン「Bl…
  8. 1回の実験で高活性な金属ナノ粒子触媒

注目情報

ピックアップ記事

  1. フッ素が実現する高効率なレアメタルフリー水電解酸素生成触媒
  2. 創薬化学における「フッ素のダークサイド」
  3. 地球外生命体を化学する
  4. カルボン酸だけを触媒的にエノラート化する
  5. 中国へ講演旅行へいってきました②
  6. NIMSの「新しいウェブサイト」が熱い!
  7. フェルキン・アーン モデル Felkin-Anh Model
  8. 【ケムステSlackに訊いて見た④】化学系学生の意外な就職先?
  9. 【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都
  10. η6配位アルキルベンゼンで全炭素(3+2)環化付加

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年9月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP