[スポンサーリンク]

ナノ化学

ジェームス・ツアー James M. Tour

[スポンサーリンク]

ジェームス・ミッチェル・ツアー(James Mitchell Tour、1959年生まれ)は、アメリカの化学者・ナノテクノロジー研究者であり、ライス大学のT. T. and W. F. Chao化学教授、材料科学・ナノエンジニアリング教授、コンピューターサイエンス教授を務めています(写真:The People of Rice)。

経歴

  • 1981年: シラキュース大学 化学学士号取得
  • 1986年: パデュー大学 博士号取得(指導教官:根岸英一教授)
  • 1986年–1987年: ウィスコンシン大学マディソン校 博士研究員
  • 1987年–1988年: スタンフォード大学 博士研究員
  • 1988年–1999年: サウスカロライナ大学 化学・生化学科 教授
  • 1999年–現在: ライス大学 ナノスケール科学技術センター 教授

受賞歴

  • 2005年: Honda Innovation Award for Nanocars
  • 2007年: アーサー・C・コープ スカラー賞
  • 2008年: NASA Space Act Award
  • 2008年: フェインマン賞(実験ナノテクノロジー部門)
  • 2009年: アメリカ科学振興協会(AAAS)フェロー
  • 2013年: R&D Magazine’s Scientist of the Year
  • 2014年: TheBestSchools.org 「世界で最も影響力のある科学者50人」選出
  • 2015年: 全米発明家アカデミー会員
  • 2020年: 王立化学会フェロー、王立化学会センテナリープライズ
  • 2021年: アメリカ化学会 オエスパー賞

研究

分子エレクトロニクス・ナノエレクトロニクスに関する研究[1-3]

分子エレクトロニクスやシリコン酸化物エレクトロニクスの分野で革新的な研究を行っています。たとえばグラフェンナノリボンの合成やその応用、レーザー誘起グラフェン(LIG)の開発、フラッシュグラフェンの大量生産技術など、グラフェンに関連する多岐にわたる研究を推進しています。カーボンスーパ―キャパシター、リチウムイオン電池、CO₂捕捉、水の電気分解による水素・酸素生成など、エネルギー変換・貯蔵材料の開発にも取り組んでいます。廃棄物からのグラフェン合成技術や、水質浄化技術の開発など、環境に優しい技術の研究にも注力しています。

ナノプシャン・ナノカーの合成[4-5]

人間の形状に見える小人分子「ナノプシャン」を合成。子供たちにナノテクノロジーへの興味を促す、教育プロジェクトの一環として実施されました。nanoputian.gifまた、カルボランを車輪とした「ナノカー」も合成しています。

Wikipediaより引用

医療への応用

カーボンナノベクターを用いた薬物送達システムの開発や、ナノマシンを利用したがん治療など、ナノテクノロジーの医療分野への応用研究を行っています。

 

名言集

  • 「私は生業として分子を作っています。その仕事がいかに難しいか、言葉では言い表せません。神が創造を通して成し遂げたことに畏敬の念を抱きます。研究を通じて、私の信仰は深まりました。科学が信仰を奪うと言うのは、科学を何も知らない初心者だけです。本当に科学を学べば、神に近づくことができるでしょう。」AZQuotes

コメント&その他

  • 約650の研究論文と200以上の特許を有し、H指数は129、i10指数は538、総引用数は77,000を超えています(Google Scholar)
  • ナノスケール科学の教育にも熱心で、K-12教育向けに「NanoKids」や「SciRave」などのナノサイエンス教育プログラムを開発し、450以上の学区と40,000人以上の教師に利用されています。

関連文献

  1. Tour, J. M. Molecular Electronics: A Synthetic Perspective. Acc. Chem. Res. 2000, 33, 791–804. doi:10.1021/ar0000612
  2. Marcano, D. C.; Kosynkin, D. V.; Berlin, J. M.; Sinitskii, A.; Sun, Z.; Slesarev, A.; Alemany, L. B.; Lu, W.; Tour, J. M. Improved Synthesis of Graphene Oxide. ACS Nano 2010, 4(8), 4806–4814. DOI: 10.1021/nn1006368
  3. Kosynkin, D. V.; Higginbotham, A. L.; Sinitskii, A.; Lomeda, J. R.; Dimiev, A.; Price, B. K.; Tour, J. M. Longitudinal Unzipping of Carbon Nanotubes to Form Graphene Nanoribbons. Nature 2009, 458(7240), 872–876. DOI: 10.1038/nature07872
  4. (a) Chanteau, S. H.; Tour, J. M. Synthesis of Anthropomorphic Molecules:  The NanoPutians. J. Org. Chem. 2003, 68, 8750. DOI: 10.1021/jo0349227
  5. Vives, G.; Tour, J. M. Synthesis of Single-Molecule Nanocars. Acc. Chem. Res. 2008, 42, 473-487. doi:10.1021/ar8002317

関連書籍

関連リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. ジェームズ・ロスマン James Rothman
  2. アレクサンダー・リッチ Alexander Rich
  3. ビル・モランディ Bill Morandi
  4. モウンジ・バウェンディ Moungi G Bawendi
  5. ハロルド・クロトー Harold Walter Kroto
  6. アメリ化学会創造的有機合成化学賞・受賞者一覧
  7. ジェフリー·ロング Jeffrey R. Long
  8. ジョアン・スタビー JoAnne Stubbe

注目情報

ピックアップ記事

  1. 最新 創薬化学 ~探索研究から開発まで~
  2. サイエンス・ダイレクトがリニューアル
  3. 第4回ICReDD国際シンポジウム開催のお知らせ
  4. マクドナルドなど9社を提訴、発がん性物質の警告表示求め=カリフォルニア州
  5. 有機合成化学協会誌2022年11月号:英文特別号
  6. 世界初!炭素で架橋した“真の”1,3-ビスゲルミレンの合成に成功
  7. 食品アクリルアミド低減を 国連専門委「有害の恐れ」
  8. 常温・常圧で二酸化炭素から多孔性材料をつくる
  9. MOFはイオンのふるい~リチウム-硫黄電池への応用事例~
  10. Org. Proc. Res. Devのススメ

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年2月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
232425262728  

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP