[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

ジェフリー·ロング Jeffrey R. Long

ジェフリー·ロング(Jeffrey R. Long, 1969年xx月xx日-)は、アメリカの無機材料化学者である。カリフォルニア大学バークレー校化学科教授, 化学工学&生物分子工学科教授。ローレンス ·バークレー国立研究所 (Lawrence Berkeley National Laboratory: Berkeley Lab) 材料科学部門所属。UC Berkeley ガス分離センター監督。(トップ画像はカリフォルニア大学バークレー校ホームページより引用)

経歴

1991 コーネル大学 卒業 (Roald Hoffmann 教授)
1995 ハーバード大学博士号 取得(Richard Hadley Holm 教授), Office of Naval Research Predoctral Fellow (1991–1994)
1995–1996 ハーバード大学 博士研究員(Richard Hadley Holm 教授)
1996–1997 カリフォルニア大学バークレー校 博士研究員 (A. Paul Alivisatos 教授), National Science Foundation Postdoctral Fellow
1997–2003 カリフォルニア大学バークレー校 化学科 助教授
2003–2007 カリフォルニア大学バークレー校 化学科 准教授, 副学科長
2003–2009 ローレンス·バークレー国立研究所 材料科学部門 職員科学者
2008– カリフォルニア大学バークレー校 化学科 教授
2009– ローレンス·バークレー国立研究所 材料科学部門 上位職員科学者
2015– カリフォルニア大学バークレー校 化学工学&生物分子工学科 教授

受賞歴

1998 Research Corporation Research Innovation Award
1999 Hellman Family Faculty Award
2000 Camille Dreyfus Teacher-Scholar Award
2002 Wilson Prize (Harvard University)
2002 TR100 Award
2003–2005, 2009–2011 National Science Foundation Special Creativity Award
2004 National Fresenius Award
2011 Miller Research Professor
2013 Honorary Professor (Jilin University)
2014 UC Berkeley Graduate Assembly Faculty Mentor Award
2014 France-Berkeley Fund Early-Career Research Award
2016 Department of Energy Hydrogen and Fuel Cells Program R&D Award

研究業績

水素燃料電池車への応用に向けた水素貯蔵 MOF の開発【配位不飽和な金属部位を持つ MOF の応用】

水素燃料電池車は発電時に水しか排出しないため、ガソリン車に変わるエコカーとして期待されている。しかし水素燃料は密度が低いため、自動車が走行するのに十分な量を水素を室温下で積載することは難しい。

Long らは、配位不飽和な金属部位を持つ MOF に着目し、室温かつ温和な圧力下で水素の出し入れができ、かつ高い水素貯蔵容量を持つ MOF の開発に取り組んでいる。例えば配位不飽和部位を高い密度で持つ M2(dobdc) (別名: MOF-74) の有機リンカーの対称性を変更することで、金属と水素の相互作用を強め、高い水素貯蔵能力を実現した[1]

dobdc4-=2,5-dioxido-1,4-benzenedicarboxylate, m-dobdc4-=4,6-dioxido1,3-benzenedicarboxylate. 左の図は文献 [2] から、右の図は文献 [1] から一部改変して引用.

火力発電所の CO2 排ガス分離の応用に向けた MOF の開発【協同的なガス吸着挙動を持つ MOF の開発】

典型的なガス貯蔵材料や分離材料において、特定のガスと高い親和性を持つ吸着材は、吸着したガスを放出しにくいため、作業効率 (working capacity) が悪くなるジレンマを抱える。

Long らは、1 分子目の吸着が引き金となり、2分子目, 3 分子目… の吸着が促進されるメカニズム (協同的吸着: cooperative binding) を開発することで、高効率なガス分離 MOF の開発に取り組んでいる。例えば、 M2(dobpdc) の配位不飽和部位にジアミンを配位させることで、協同的な CO2 吸着挙動を示す分離材料 mmen-M2(dobpbc) を合成した[3,4]

dobpdc4-=4,4’-dioxidobiphenyl-3,3’-dicarboxylate, mmen=N,N’-dimethylethylenediamine. (図は文献 [3] から引用)

mmen-M2(dobpbc) の協同的 CO2 吸着のメカニズム. (1) 金属に結合した N 原子が CO2 を捕捉する. このとき、隣接部位のジアミンの末端の N 原子による脱プロトン化が同時に起こる. (2) (1) で形成されたカルバメートがアンモニウムを引き寄せることで、隣接したジアミン (図の左から 2 番目) の N—M 結合を歪ませる. その N—M 結合の歪みによりカルバメート形成が促進され、CO2 の捕捉が連鎖する. (3) カルバメートが金属に配位する. (図は文献 [4] から引用)

他にも、圧力に応答した MOF の孔の開閉によるメタンの協同的吸着[5]やスピンクロスオーバーによる金属—配位子の結合長の変化を引き金とする一酸化炭素協同的吸着[6]を実現している.

MOF に吸着したガスの in-situ 観察

MOF に吸着されたガスの状態を観察する技術 (in-situe 観察) は、吸着の機構や MOF 内での吸着ガスの分布を知るために利用できる。

Long らは、in-situ 単結晶 X 線回折を用いてCo2(dobdc) における小分子の吸着を様子を同定した。これにより、M2(dobdc) シリーズにおける N2, O2 およびAr の二次吸着サイトや O2 の三次吸着サイトをも明らかにした。くわえて、この結果を高温および低温の吸着等温線と比較することで、吸着の振舞いと MOF 内の構造を関連づけることにも成功した[2]

図は文献[2] から引用

名言集

コメント&その他

  1. アカデミアに多くの卒業生を輩出している (MIT の Mircea Dincă や Northwestern University の T. David Harris, Danna Freedman など)。
  2. お酒好き。

関連動画

関連文献

  1. Kapelewski, M. T.; Geier, S. J.; Hudson, M. R.; Stück, D.; Mason, J. A.; Nelson, J. N.; Xiao, D. J.; Hulvey, Z.; Gilmour, E.; FitzGerald S. A.; Head-Gordon, M.; Brown, C. M.; Long, J. F. J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 12119–12129. DOI: 10.1021/ja506230r.
  2. Gonzalez, M. I.; Mason, J. A.; Bloch, E. D.; Teat, S. M.; Gagnon, K. J.; Morrison, G. Y.; Queen, W. L.; Long, J. R. Chem. Sci. 2017, 8, 4387. DOI: 10.1039/c7sc00449d.
  3. McDonald, T. M.; Mason, J. A.; Kong, X.; Bloch, E. D.; Gygi, D.; Dani, A.; Crocella, V.; Giordanino, F.; Odoh, S. O.;Drisdell, W.; Vlaisavljevich, B.; Dzubak, A. L.; Poloni, R.; Schnell, S. K.; Planas, N.; Lee, K.; Pascal, T.; Wan, L. F.; Prendergast, D.; Neaton, J. B.; Smit, B.; Kortright, J. B.; Gagliardi, L.; Bordiga, S.; Reimer, J. A.; Long, J. R. Nature 2015519, 303-308. DOI: 10.1038/nature14327.
  4. Siegelman, R. L.; McDonald, T. M.; Gonzalez, M. I.; Martell, J. D.; Milner, P. J.; Mason, J. A.; Berger, A. H.; Bhown, A. S.; Long, J. R. J. Am. Chem. Soc. 2017139, 10526-10538. DOI: 10.1021/jacs.7b05858.
  5. Mason, J. A.; Oktawiec, J.; Taylor, M. K.; Hudson, M. R.; Rodriguez, J.; Bachman, J. E.; Gonzalez, M. I.; Cervellino, A.; Guagliardi, A.; Brown, C. M.; Llewellyn, P. L.; Masciocchi, N.; Long, J. R. Nature 2015527, 357-361. DOI: 10.1038/nature15732.
  6. Reed, D. A.; Keitz, B. K.; Oktawiec, J.; Mason, J. A.; Runčevski, T.; Xiao, D. J.; Darago, L. E.; Crocellà, V.; Bordiga, S.; Long, J. R. Nature 2017550, 96–100. DOI :10.1038/nature23674.

関連書籍

関連リンク

The following two tabs change content below.

関連記事

  1. ハロルド・クロトー Harold Walter Kroto
  2. アビシェック・チャッタージー Abhishek Chatterj…
  3. グラーメ・モード Graeme Moad
  4. アンソニー・アルジュンゴ Anthony J. Arduengo…
  5. リチャード・ゼア Richard N. Zare
  6. トム・メイヤー Thomas J. Meyer
  7. アレクサンダー・リッチ Alexander Rich
  8. 小坂田 耕太郎 Kohtaro Osakada

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. メタロペプチド触媒を用いるFc領域選択的な抗体修飾法
  2. 地位確認求め労働審判
  3. ちっちゃい異性を好む不思議な生物の愛を仲立ちするフェロモン
  4. 化学Webギャラリー@Flickr 【Part1】
  5. 日本薬学会第125年会
  6. 犬の「肥満治療薬」を認可=米食品医薬品局
  7. リンダウ会議に行ってきた④
  8. 一重項酸素 Singlet Oxygen
  9. 日本化学会:次期会長に藤嶋昭氏を選出--初の直接選挙で
  10. ナノチューブブラシ!?

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

ウラジミール・ゲヴォルギャン Vladimir Gevorgyan

ウラジミール・ゲヴォルギャン(Vladimir Gevorgyan、1956年8月12日-)は、アメ…

有機合成化学協会誌2018年11月号:オープンアクセス・英文号!

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2018年11月号がオンライン公開されました。今月…

観客が分泌する化学物質を測定することで映画のレーティングが可能になるかもしれない

映画には、年齢による鑑賞制限が設けられているものがあります。その制限は映画の内容に応じて各国の審査団…

庄野酸化 Shono Oxidation

概要アルコール溶媒中にアミドまたはカルバメートを電解酸化し、N,O-アセタールを得る反応。アミン…

ゲルセジン型アルカロイドの網羅的全合成

ゲルセジン型アルカロイドを網羅的に合成する手法が開発された。巧みな短工程骨格構築法により4種類の同ア…

3級C-H結合選択的な触媒的不斉カルベン挿入反応

2017年、エモリー大学・Huw M. L. Daviesらは独自に設計した不斉二核ロジウム触媒を用…

PAGE TOP