[スポンサーリンク]

天然物

フルエッギン Flueggine

[スポンサーリンク]

 

Flueggine は、2011年に植物 Flueggea virosa の小枝や葉から単離された Securinega アルカロイドである[1]。立体化学の決定は NMR、X 線結晶構造解析、CD を用いて行なわれた。漢方薬として、湿疹、アレルギー性皮膚炎、火傷の治療に用いられてきた。

F. virosa からは、様々な Scurinega アルカロイドが単離されており、それらは、神経系に作用したり、細胞毒性を持つなどの生物活性を有している。Flueggine B は、ヒト乳がん細胞 MCF-7、MDA-MB-231 に対して増殖抑制を示す。

 

Flueggine Aの生合成経路研究

Flueggine A は、 isoxazoline 環 を有しており、生合成過程にて Nitrone–Alkene (3+2) Cycloaddition が起きるのではないかと予想されていた。

2014年にDean Tantilloにより、Flueggine A の Nitrone–Alkene (3+2) CycloadditionのDFT 計算が行なわれた[2]

Flueggine_scheme

図は、文献 2 より抜粋

Flueggine A は、tyrosine 由来の化合物 1 と Norsecurinine が分子間で Nitrone–Alkene (3+2) Cycloaddition することで生成する。一方、分子内で反応が進行してしまうと同じく F. virosa から単離されているent-Virosaine A Virosaine B が得られるという、非常に合理的な結果が DFT 計算により得られている。

また、活性化エネルギーは、20-24 kcal/mol 程度であり、この反応は酵素の関与が無くても進行する可能性が示唆された。しかし、酵素が関与することによりエントロピー的に反応の進行を有利にしたり、望まない副反応を避けている可能性もあるかもしれない。

Flueggine は、2011 年に単離されたばかりであり、その生合成遺伝子の同定や酵素機能解析などはまだ行なわれていない。今後の生合成研究に興味が持たれる。

 

動画

Flueggine A、Virosaine の isoxazoline 環の生成過程をそれぞれ次のように動画で見ることが出来る。

Flueggine A Nitrone–Alkene (3+2) Cycloaddition

 

Virosaine Nitrone–Alkene (3+2) Cycloaddition

 

Flueggineの全合成

2013 年に全合成が達成されている[3]。下に、逆合成解析を示す。(推定)生合成経路と同様に Nitrone–Alkene (3+2) Cycloaddition により最終生成物を得ている。

Flueggine_scheme2

図は文献 3 より抜粋

参考文献

1. Org. Lett. 2011, 13, 3888−3891. DOI: 10.1021/ol201410z
2. J. Org. Chem. 2014, 79, 432-435. DOI: 10.1021/jo402487d
3. Angew. Chem. Int. Ed. 2013, 52, 620-624. DOI: 10.1002/anie.201208261

ゼロ

投稿者の記事一覧

女の子。研究所勤務。趣味は読書とハイキング ♪
ハンドルネームは村上龍の「愛と幻想のファシズム」の登場人物にちなんでま〜す。5 分後の世界、ヒュウガ・ウイルスも好き!

関連記事

  1. シガトキシン /ciguatoxin
  2. フッ素ドープ酸化スズ (FTO)
  3. フタロシアニン phthalocyanine
  4. 化学者のためのエレクトロニクス講座~無線の歴史編~
  5. ユーコミン酸 (eucomic acid)
  6. リベロマイシンA /Reveromycin A
  7. パクリタキセル(タキソール) paclitaxel(TAXOL)…
  8. A-ファクター A-factor

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 転職でチャンスを掴める人、掴めない人の違い
  2. 三原色発光するシリコン量子ドットフィルム―太陽光、高温、高湿への高い耐久性は表面構造が鍵―
  3. 中西香爾 Koji Nakanishi
  4. 2008年ノーベル化学賞『緑色蛍光タンパクの発見と応用』
  5. 第118回―「糖鎖のケミカルバイオロジーを追究する」Carolyn Bertozzi教授
  6. フランツ=ウルリッヒ・ハートル Franz-Ulrich Hartl
  7. エノラートのα-アルキル化反応 α-Alkylation of Enolate
  8. 除虫菊に含まれる生理活性成分の生合成酵素を単離
  9. 化学反応を起こせる?インタラクティブな元素周期表
  10. 学部生にオススメ:「CSJ カレントレビュー」で最新研究をチェック!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2015年11月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

注目情報

最新記事

【著者に聞いてみた!】なぜ川中一輝はNH2基を有する超原子価ヨウ素試薬を世界で初めて作れたのか!?

世界初のNH2基含有超原子価ヨウ素試薬開発の裏側を探った原著論文Amino-λ3-iodan…

千葉 俊介 Shunsuke Chiba

千葉俊介 (ちばしゅんすけ、1978年05月19日–)は日本の有機化学者である。シンガポール南洋理⼯…

Ti触媒、結合切って繋げて二刀流!!アルコールの脱ラセミ化反応

LMCTを介したTi触媒によるアルコールの光駆動型脱ラセミ化反応が報告された。単一不斉配位子を用いた…

シモン反応 Simon reaction

シモン反応 (Simon reaction) は、覚醒剤の簡易的検出に用いられる…

Marcusの逆転領域で一石二鳥

3+誘導体はMarcusの逆転領域において励起状態から基底状態へ遷移することが実証された。さらに本錯…

5/15(水)Zoom開催 【旭化成 人事担当者が語る!】2026年卒 化学系学生向け就活スタート講座

化学系の就職活動を支援する『化学系学生のための就活』からのご案内です。化学業界・研究職でのキャリ…

フローマイクロリアクターを活用した多置換アルケンの効率的な合成

第610回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院理学研究科(依光研究室)に在籍されていた江 迤源…

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP