[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

2007年度ノーベル化学賞を予想!(5)

前回からの続き。これが最後、「ノーベル化学賞をとれるかとれないかわからないけれども、とれるかもしれない化学者」です。

John B. Goodenough (リチウム電池の開発)

Nobel Prize
携帯電話、ノートパソコンなどには必須のリチウムイオン電池。その原理はかなり昔から知られていましたが、それを実現させたのはテキサス大のグッドイナフ教授でした。1980年に同教授らは正極にリチウム遷移金属酸化物の使用を提案しました。その提案をもとに、負極としてリチウムを用いたリチウムイオン二次電池は開発されましたが、発火事故が相次ぎ、別の負極材料の探索がはじまりました。最終的に負極にグラファイト、電解液に炭化エチレンを用いた二次電池がソニーなどによって開発されました。

グッドイナフ教授はその後も、遷移金属化合物の伝導性、磁性の研究、超イオン伝導体の研究などを行い、リチウムイオン二次電池の開発にも多大な貢献をしています。

世の中でここまで使われている電池を発明した人ならば、ノーベル賞を受賞してもおかしくないのではないでしょうか?

Harry. F. Noller, Thomas A. Steitz, Peter B. Moore (RNA+ペプチド)

Nobel Prize
『生命のはじまりはどこか?』―そういった類の研究は、どの分野でも行われています。

チェックとアルトマン(ノーベル化学賞受賞者)が、RNAの触媒特性(リボザイム)を証明したため、「RNAが原始地球上に存在し、それが生命を作った」という説(RNAワールド説)が有力となっています。

その証拠をつくったのは、カリフォルニア大サンタクルス校のノラー教授。1992年に彼らは、除蛋白質処理をした好熱菌の23S rRNAがペプチド結合を生成できることを報告し、RNAが蛋白質を合成できる可能性を示しました。それを発端にして研究は進み、現在のRNAワールド仮説の重要証拠となっています。

さらにノラー教授は、1999年に翻訳(mRNAの遺伝情報を読み取ってタンパク質へと変換する過程)が行われる場、リボソームのX線結晶構造解析に成功し、立体構造を決定しました。また、同時にエール大学のスタイツ教授・ムーア教授らも、X線結晶解析法を用いてリボソーム50S粒子の原子レベルでの精細な構造を解明しました。

それらの研究を基礎として、生物質への耐性が起きる仕組みを探ったり、新しい抗菌薬を開発したりする研究が現在進められています。つまり全ての基礎となるX線結晶構造解析を行った3人には、ノーベル賞の可能性が十分にあると思われます。

[追記]トーマス・スタイツ教授がリボソームの構造解析・機能解明」の業績により、2009年ノーベル化学賞を受賞しました!

N. L. Allinger, Keiji Morokuma (計算化学)

Nobel Prize
1998年にカルフォルニア大サンターバーバラ校のコーン教授とノースウェスタン大のポープル教授が密度汎関数法の開発にて受賞しているので、計算化学でのノーベル賞は厳しいかもしれませんが、MM2計算を考案したアリンジャー教授、Gaussianプログラムに入っているONIOM法を開発した諸熊奎治教授も、ノーベル化学賞候補者のひとりです。

[追記] 2013年のノーベル化学賞が関連分野が受賞しました。諸隈教授のONIOM法は受賞対象の手法の改良法ですので、今後のノーベル化学賞は難しいかもしれません。【速報】ノーベル化学賞2013は「分子動力学シミュレーション」に!

さて最後に、未来のノーベル化学賞候補者を紹介しましょう!

関連書籍

 

The following two tabs change content below.
webmaster
Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院准教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 分子構造を 3D で観察しよう (3):新しい見せ方
  2. その実験結果信用できますか?
  3. ペプチド模倣体としてのオキセタニルアミノ酸
  4. 構造式を楽に描くコツ!? テクニック紹介
  5. 『元素周期 ~萌えて覚える化学の基本~』がドラマCD化!!!
  6. アジサイから薬ができる
  7. リニューアル?!
  8. 【PR】Chem-Stationで記事を書いてみませんか?【スタ…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 味の素、アミノ酸の最大工場がブラジルに完成
  2. マーティンスルフラン Martin’s Sulfurane
  3. メソポーラスシリカ(1)
  4. ロナルド・ブレズロウ Ronald Breslow
  5. 磁性液体:常温で液体になる磁性体を初発見 東大大学院
  6. 和製マスコミの科学報道へ不平不満が絶えないのはなぜか
  7. インドール一覧
  8. IRの基礎知識
  9. リアル『ドライ・ライト』? ナノチューブを用いた新しい蓄熱分子の設計-後編
  10. フラグメント創薬 Fragment-Based Drug Discovery/Design (FBDD)

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

有機合成化学の豆知識botを作ってみた

皆さんこんにちは。めっきり実験から退き、教育係+マネジメント係になってしまったcosineです。…

デニス・ドーハティ Dennis A. Dougherty

デニス・A・ドーハティ(Dennis A. Dougherty、1952年12月4日-)は、米国の物…

ベンゼンの直接アルキル化

ベンゼンにアルキル基を導入したいとき、皆さんはどのような手法を用いますか? (さらに&hel…

アメリカ大学院留学:TAの仕事

私がこれまでの留学生活で経験した一番の挫折は、ティーチングアシスタント(TA)です。慣れない英語で大…

2017年の注目分子はどれ?

今年も残りあとわずかとなり、毎年おなじみのアメリカ化学会(ACS)によるMolecules of t…

アルデヒドのC-Hクロスカップリングによるケトン合成

プリンストン大学・David W. C. MacMillanらは、可視光レドックス触媒、ニッケル触媒…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP