[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

「医薬品クライシス」を読みました。

[スポンサーリンク]

 有機化学美術館でもおなじみの佐藤健太郎氏から、待望の新著「医薬品クライシス―78兆円市場の激震 (新潮新書) 」が発刊されました。「有機化学美術館へようこそ」「化学物質はなぜ嫌われるのか」に続く3冊目となる本作品を早速手に入れましたので報告します。以下、製薬企業の一研究員として働いてる私benzeneの個人的感想ですのでご参考まで。

価格は700円(税別)安ッ!発売日は2010年1月16日でした。私はその翌日に近所の本屋さんへ。新潮社の・・・新潮新書・・・ないな~い!どこ~?過去の2作品と違い今回はいわゆる文庫本。同じ色の表紙が他にいくつかあってまぎらわしいです。でも発見。

 

それにしてもこの表紙の帯のキャッチコピーは!

 

『2010年、もう新薬は生まれない。』

 

2010年まだ始まったばかりなのに<(“”0″”)>なんてこった!!今年は新薬なしかぁ、残念・・・おや、これは2011年になったらまた生まれ出すという意味か?2010年限定?もうこれから先は生まれないという意味か?ん~よくわからん。

 

早速読もう・・・きっと書くのに時間かかったんだろうなぁ~と思いつつ、1日で読み切ってしまいました。それだけ面白かったってことです。佐藤氏が長年にわたって創薬研究の第一線で働いていたこともあって非常にリアリティーがあり、共感できるところがたくさんありました。研究者側、企業側、患者側、それぞれの視点に立って薬のあり方について書かれています。個人的には薬の副作用について書かれた部分はとても印象に残った。

 

たとえ発生率0.001%の副作用でも、それに当たった本人にとっては確率100%のいわれようのない苦しみでしかない。彼らはこの苦しみを与えた製薬企業や医師を呪うだろうし、彼らや彼らの遺族を納得させる言葉はこの世に存在しないだろう。

「医薬品クライシス」108ページより引用

  ドキっとしてしまう文章である。

 本の題名と帯のキャッチコピーを見るに、現在の医薬品開発が瀕死の状況にあるような内容かと思われるかもしれない。しかしそれは近い未来この本に反して優れた技術、優れた研究者、そして優れた新薬が生まれることを願う佐藤氏のメッセージなのだろう。研究者だけでなく、薬を飲む人みんなに読んでいただきたい一冊である。

 本の感想はコメントへどうぞ。

関連書籍

matsumoto

投稿者の記事一覧

修士(工学)。学生時代は有機合成・天然物合成に従事し、現在は某製 薬メーカー合成研究員。

関連記事

  1. ピーナッツ型分子の合成に成功!
  2. MEDCHEM NEWS 32-2号 「儲からないが必要な薬の話…
  3. 夏のお肌に。ファンデーションの化学
  4. 【1月開催】第五回 マツモトファインケミカル技術セミナー 有機チ…
  5. 多価不飽和脂肪酸による光合成の不活性化メカニズムの解明:脂肪酸を…
  6. プリンターで印刷できる、電波を操る人工スーパー材料
  7. 文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり⑥:実験室でも…
  8. 高速原子間力顕微鏡による溶解過程の中間状態の発見

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 【読者特典】第92回日本化学会付設展示会を楽しもう!PartIII+薬学会も!
  2. カシノナガキクイムシ集合フェロモンの化学構造を解明
  3. コロナウイルスが免疫システムから逃れる方法(2)
  4. 第43回「はっ!」と気づいたときの喜びを味わい続けたい – 高橋 雅英 教授
  5. タミフル、化学的製造法を開発…スイス社と話し合いへ
  6. 捏造のロジック 文部科学省研究公正局・二神冴希
  7. 出発原料から学ぶ「Design and Strategy in Organic Synthesis」
  8. 3成分開始剤系を用いたリビングラジカル重合
  9. 日本ビュッヒ「Cartridger」:カラムを均一・高効率で作成
  10. 三井化学と日産化学が肥料事業を統合

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年1月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

光と水で還元的環化反応をリノベーション

第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

ブーゲ-ランベルト-ベールの法則(Bouguer-Lambert-Beer’s law)

概要分子が溶けた溶液に光を通したとき,そこから出てくる光の強さは,入る前の強さと比べて小さくなる…

活性酸素種はどれでしょう? 〜三重項酸素と一重項酸素、そのほか〜

第109回薬剤師国家試験 (2024年実施) にて、以下のような問題が出題されま…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP