[スポンサーリンク]

一般的な話題

たるんだ肌を若返らせる薄膜

[スポンサーリンク]

塗布するだけで、たるんだ皮膚に若々しい弾性がよみがえる、透明なシリコンポリマーが開発された。

タイトルおよび画像はネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)の出版している日本語の科学まとめ雑誌である「Natureダイジェスト」7月号から。

本シリーズもついに10回目。最新サイエンスを日本語で読めるNatureダイジェストから個人的に興味を持った記事をピックアップして紹介しています。過去の記事は下記関連記事を御覧ください。

 

たるんだ肌を若返らせる薄膜

「まるで肌のための補正下着」 

と評された透明なシリコン系薄膜。

この薄膜を開発したのは、生物工学の第一人者Robert Langer教授(MIT)。Langer教授はリビングプルーフという会社を設立し、日常のケア用に、2014年から皮膚科医を通じてこのポリマーを販売しています。

2016-07-09_17-36-47

 

教授によれば、この薄膜は2種類のゲルを顔などの体表に塗布することによって形成され、ひとたび固まれば16時間も皮膚に密着できるとのこと。

このポリマーに関する最新の研究結果は2016年5月のNature Materials誌に公開されました(DOI: 10.1038/nmat4635)。発売されている薄膜はこの論文で報告した初期段階のものであるといいます。自身の研究とその素材を即座に応用した、素晴らしい結果ですね。記事では研究結果の概要と、さらなる応用について述べています。なお、本記事は無料公開されているのでオンラインで読むことができます。

 

マクロライド系抗生物質候補の全合成に成功

 パーツの組み合わせを変えて、それらを「組み立てる」。そんな手法でなんと300種類以上のエリスロマイシン類縁体が合成された。

天然物合成化学研究から1つ、最近ハーバード大学のMyers教授らによって報告された、エリスロマイシン類の多様性合成が掲載されていました。エリスロマイシンは既に昔から知られている抗生物質ですが、抗生物質全般に抗生物質耐性菌の出現が問題となっています。

Myers教授らは、8種類のパーツを準備し、異なるパーツを組み合わせて、つなげる収束的な合成法を開発し、305種類のエリスロマイシン誘導体を合成したそうです。この新しい分子構築法に費やされた年月は約5年。耐性菌問題が解決できるかどうかはわかりませんが、複雑化合物を見事な手法で効率的に作り上げています。

 

2016-07-09_17-55-58

 

ちなみに第一著者のIan Seiple氏は、私が博士研究員時代に、彼は学生で、一緒にPalau’amineという超難関天然物を合成した仲(最近、日本のグループからも合成が報告されました 記事:海洋天然物パラウアミンの全合成)。最終的に彼らがFinish upしてくれて、わずか3年で合成を完了しました。昨年彼は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)で助教授(Assistant profesor)となり、独自に研究活動を開始しました。彼がどんな化学を披露してくれるのか楽しみです。

2016-07-09_17-58-16

助成金申請却下に不服申し立てができる?

 研究助成金却下に対する不服申し立てが認められた!

ちょっと気になった、Editorialの記事から。研究費申請は研究者の皆さんなら必須の行為です。「こんな素晴らしい研究をやっている」そして「研究費がないと研究できない!」と主張し、研究費獲得を狙うわけですが、もちろん全員が通るわけではありません。むしろほとんど却下されます。そんな研究費申請却下にイチイチ文句をいっていたら時間の無駄です。

と普通はそうですが、

最近英国で、研究費申請却下に不服申し立てをしたところ、なんと500万ユーロ(約6億円)の助成金が公布されたとのこと。ちょっと複雑な内容ですが、その記事ではその経緯や不服申し立てと苦情の違いなどについて述べています。日本ならありえないなあと思わせる記事でした。

 

その他の記事

今回触れませんでしたが、特集として掲載されている、「がんの進化を利用した治療戦略」も、大変読み応えがある内容です。がんが”進化する”ことを逆手に取って、うまく導くことでがんを治療する。そんな研究を行っている研究者と関連すうる薬のお話です。

また、前回の飯島澄男氏に続く、第二回「私とnature」は筑波大学の柳沢正史教授。睡眠医科学のトップランナーで、現在世界トップレベル拠点、国際統合医科学研究機構(IIIS)の機構長です。「“ねむけ”の謎を解明したい」というタイトルで、これまでの研究の経緯と今後の睡眠覚醒機構の解明における目標と展望について述べています(無料公開)。メディアでも多く取り上げられていることから、ご存知である方も多いと思います。

2016-07-11_23-48-20

 

一方で、Natureおよびその姉妹誌に掲載された日本人科学者を紹介する、「著者インタビュー」は東京工業大学物質理工学院の菅野了次教授、トヨタ自動車の加藤祐樹博士です(記事:「次世代電池を牽引する、全固体電池開発」)。本年新しく発刊されたNature Energyに論文が掲載されました(論文DOI:10.1038/nenergy.2016.30 )。

現在有機溶媒であるリチウムイオン電池の電解質を全て固体に置き換えた電池を開発されたことで掲載に至っています。こちらも無料公開ですので、ぜひお読みください。

 

幅広い分野の最新研究を知る

特に細かく言及はしませんが、今年も国内外で様々な出来事・事件が起こっています。私は日本に住んでいるから日本のことにしか興味が無いし、知らないといったらどうでしょう。本当にまわりのことを理解できるでしょうか。科学でも同様で化学者なので、他の科学には興味が無いではちょっと困ります。最新研究は学んでおこうという試みが、最終的に自分の「カガク」に深みを与える可能性があります。そんな最新研究を簡単に日本語で読み解くことができる、Nature ダイジェスト。ぜひご購読をおすすめします。

 

関連記事

 

外部リンク

webmaster

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 有機反応を俯瞰する ー芳香族求電子置換反応 その 1
  2. 化学者だって数学するっつーの! :定常状態と変数分離
  3. 芳香族フッ素化合物の新規汎用合成法
  4. 第98回日本化学会春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Pa…
  5. 光照射下に繰り返し運動をおこなう分子集合体
  6. “CN7-“アニオン
  7. 新たな環状スズ化合物の合成とダブルカップリングへの応用
  8. カルベンで挟む!

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 向山アルドール反応40周年記念シンポジウムに参加してきました
  2. 独BASF、米樹脂メーカーのジョンソンポリマー社を買収
  3. ブレデレック ピリミジン合成 Bredereck Pyrimidine Synthesis
  4. Dead Endを回避せよ!「全合成・極限からの一手」⑧(解答編)
  5. 深海の美しい怪物、魚竜
  6. ベンゼンスルホヒドロキサム酸を用いるアルデヒドとケトンの温和な条件下でのアセタール保護反応
  7. 2011年イグノーベル賞決定!「わさび警報装置」
  8. 第29回 適応システムの創製を目指したペプチドナノ化学 ― Rein Ulijn教授
  9. 顕微鏡で有機分子の形が見えた!
  10. 有機合成化学協会誌2020年1月号:ドルテグラビルナトリウム・次亜塩素酸ナトリウム5水和物・面性不斉含窒素複素環カルベン配位子・光酸発生分子・海産天然物ageladine A

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

注目情報

注目情報

最新記事

第102回―「有機薄膜エレクトロニクスと太陽電池の研究」Lynn Loo教授

第102回の海外化学者インタビューは、Lynn Loo教授です。プリンストン大学 化学工学科に所属し…

化学系必見!お土産・グッズ・アイテム特集

bergです。今回は化学系や材料系の学生さんや研究者の方々がつい手に取りたくなりそうなグッズなどを筆…

危険物取扱者:記事まとめ

世の中には様々な化学系の資格があり、化学系企業で働いていると資格を取る必要に迫られる機会があります。…

化学者のためのエレクトロニクス入門③ ~半導体業界で活躍する化学メーカー編~

bergです。化学者のためのエレクトロニクス入門のシリーズも3回目を迎えました。前回は電子回路を大き…

第101回―「高分子ナノ構造の精密合成」Rachel O’Reilly教授

第101回の海外化学者インタビューは、レイチェル・オライリー教授です。ケンブリッジ大学化学科に所属(…

大学院生になっても宿題に追われるってどないなんだが?【アメリカでPh.D.を取る–コースワークの巻–】

アメリカでの PhD 課程の1年目には、多くの大学院の場合, 研究だけでなく、講義の受講やTAの義務…

島津製作所 創業記念資料館

島津製作所の創業から現在に至るまでの歴史を示す資料館で、数々の発明品が展示されている。第10回化学遺…

研究テーマ変更奮闘記 – PhD留学(後編)

前回の記事では、私がPhD留学を始めた際のテーマ決めの流れや、その後テーマ変更を考え始めてからの教授…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP