[スポンサーリンク]

F

9-フルオレニルメチルオキシカルボニル保護基 Fmoc Protecting Group

概要

9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(9-fluorenylmethyloxycarbonyl, Fmoc)基は、カルバメート形成によってアミンの保護目的に多用される。
酸性条件・酸化条件に強く、穏和な塩基性条件で除去可能。接触還元条件に対してはゆっくりと切断される。このため、Boc基やCbz基と相補的に用いることが出来る。

数ある応用の中でも、特にペプチド固相合成法にもっとも多用される。特徴的な吸光波長(301nm)をもつため、HPLCでの反応追跡にも適している。

基本文献

  • Carpino, A. L.; Han, G. Y. J. Am. Chem. Soc. 1970, 92, 5748. DOI: 10.1021/ja00722a043
  • Carpino, L. A.; Han, G. Y. J. Org. Chem. 1972, 37, 3404. DOI: 10.1021/jo00795a005
  • Carpino, L.; Han, G. J. Org. Chem. 1979, 44, 3739. DOI: 10.1021/jo01335a600
  • Fmoc-OSu: Sigler, G. F.; Fuller, W. D.; Chaturvedi, N. C.; Goodman, M.; Verlander, M. Biopolymers 1983, 22, 2157. doi:10.1002/bip.360221002
  • Fmoc-pfp:Schön, I.; Kisfaludy, L. Synthesis 1986, 303. DOI: 10.1055/s-1986-31591
  • Fmoc-DMT: Hioki, K.; Kinugasa, M.; Kishimoto, M.; Fujiwara, M.; Tani, S.; Kunishima, M. Synthesis 2006, 1931. DOI: 10.1055/s-2006-942389
  • Fmoc-Amox: Kumar, A.; Sharma, A.; Haimov, E.; El-Faham, A.; de la Torre, B. G.; Albericio, F. Org. Process Res. Dev. 2017, 21, 1533. DOI: 10.1021/acs.oprd.7b00199
Fmoc-SPPS
review
  • Carpino, L. A. Acc. Chem. Res. 1987, 20, 401. DOI: 10.1021/ar00143a003
  • Isidro-Llobet, A.; Álvarez, M.; Albericio, F. Chem. Rev. 2009, 109, 2455. DOI: 10.1021/cr800323s
  • Luna, O. F.; Gomez, J.; Cardenas, C.; Albericio, F.; Marshall, S. H.; Guzman, F. Molecules 2016, 21, 1542. doi:10.3390/molecules21111542

開発の歴史

1970年代初頭にルイス・カルピノらによって開発された。

反応機構

保護

Fmoc-Clがもっとも多用される。典型的な酸クロリド+塩基条件下での反応と考えて差し支えない。アミノ酸などに対しては、無機塩基をもちいるショッテン・バウマン条件なども簡便である。

脱保護

9位プロトンの酸性度が高く、穏和な塩基でE1cB脱離する機構となっている。副生するジベンゾフルベン(DBF)は求電子剤となって副反応を引き起こすため、これを捕捉できるような塩基が良く用いられる。

このような事情から、ピペリジンのような2級アミンを用いる脱保護条件が汎用される。溶媒はDMFが良く用いられる。3級アミンではほとんど切断されない。

Fmoc-Val-OHをDMF中で脱保護したときの、アミン毎の反応速度は下記の通りである。

cited by “Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis”, 4th ed.

近年ではピペリジンの使用規制のために、DBUやピペラジンを代替として用いる手法が検討されている(RSC Adv. 2015, 5, 104417)。

反応例

Calicheamicin γ1Iの全合成[1]:様々な変換工程にFmoc基は耐えており、高い安定性を示す好例といえる。

参考文献

  1. Nicolaou, K. C.; Groneberg, R. D.; Miyazaki, T.; Stylianides, N. A.; Schulze, T. J.; Stahl, W. J. Am. Chem. Soc. 1990, 112, 8193. DOI: 10.1021/ja00178a069

関連反応

  • カルバメート保護基
  • メリフィールド ペプチド固相合成法
  • アリルオキシカルボニル保護基(Alloc)
  • 2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル保護基(Troc)
  • 2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル保護基(Teoc)
  • ベンジルオキシカルボニル保護基(Cbz)
  • tert-ブトキシカルボニル保護基(Boc)

関連書籍

外部リンク

The following two tabs change content below.
cosine

cosine

博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。 関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。 素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. フィッシャー インドール合成 Fischer Indole Sy…
  2. 向山アルドール反応 Mukaiyama Aldol Reacti…
  3. N-オキシドの合成 Synthesis of N-oxide
  4. ベンザイン Benzyne
  5. ガッターマン アルデヒド合成 Gattermann Aldehy…
  6. 菅沢反応 Sugasawa Reaction
  7. 高井・内本オレフィン合成 Takai-Utimoto Olefi…
  8. ゼムラー・ウォルフ反応 Semmeler-Wolff React…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 細胞集め増やす化合物…京大化学研発見、再生医療活用に期待
  2. 「海外PIとして引率する大気化学研究室」ーカリフォルニア大学アーバイン校より
  3. 有機分子触媒の化学 -モノづくりのパラダイムシフト
  4. サイエンス・ダイレクトがリニューアル
  5. スコット・ミラー Scott J. Miller
  6. ヘル・フォルハルト・ゼリンスキー反応 Hell-Volhard-Zelinsky Reaction
  7. 東レ先端材料シンポジウム2011に行ってきました
  8. ノーベル博物館
  9. 総合化学大手5社、前期は空前の好決算・経常最高益更新
  10. 臭素系難燃剤など8種を禁止 有害化学物質の規制条約

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

ウォルフガング-クローティル Wolfgang Kroutil

ウォルフガング クローティル (Wolfgang Kroutil, 1972年8月5日-) Graz…

光反応性ジアジリンアミノ酸:Fmoc-Tdf-OH, H-Tdf-OH, Boc-Tdf-OH

光反応性ジアジリンアミノ酸は、レセプターであるタンパク質との間で共有結合を形成するという特性があり、…

嫌気性コリン代謝阻害剤の開発

嫌気性コリン代謝を選択的に阻害する小分子が開発された。これは、嫌気性微生物の代謝による疾患のメカニズ…

ケムステイブニングミキサー2019ー報告

3月16日から19日の日本化学会第99春季年会に参加されたみなさま、おつかれさまでした!甲南大学…

モリブデンのチカラでニトロ化合物から二級アミンをつくる

川上原料のニトロアレーンとアリールボロン酸を用いた二級アミン合成法が報告された。空気下で安定なモリブ…

化学的に覚醒剤を隠す薬物を摘発

化学変化を加えると覚醒剤に加工できる指定薬物を密輸しようとしたなどとして、東京税関成田支署と成田空港…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP