[スポンサーリンク]

一般的な話題

有機合成化学協会誌2022年6月号:プラスチック変換・生体分子変換・ラジカル反応・ガタスタチンG2・オリゴシラン・縮環ポルフィリン誘導体

[スポンサーリンク]

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2022年6月号がオンライン公開されました。

新人教育も落ち着いて、研究が加速する時期にあります。有機合成化学協会誌を読んでレベルアップしましょう!

今月号も充実の内容です。

キーワードは、「プラスチック変換・生体分子変換・ラジカル反応・ガタスタチンG2・オリゴシラン・縮環ポルフィリン誘導体です。

今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。

巻頭言:「信・深=新なり」→「素直さと、明るさと、情熱を」そして「無尽蔵」

 

今月号の巻頭言は、徳島大学大学院創成科学研究科 三好 德和 教授の寄稿記事です。実験の中に真実があるという言葉に打たれました。オープンアクセスです。

追悼 辻二郎先生を偲んで 

今月は、東北大学大学院薬学研究科 土井隆行 教授による追悼記事があります。
東京工業大学栄誉教授 辻二郎先生は、2022年4月1日に96歳でご逝去されました。レジェンドの訃報に衝撃を受けました。4年前に聴講させていただいた講演、忘れません。ご冥福をお祈りいたします。

有機化学を駆使した効率的なプラスチックや生体分子の変換反応

上村明男*

*山口大学工学部応用化学科

作るばかりが能じゃない。適切な分解もまた「ものづくり」。自然界も「作っては壊し」を繰り返して、物質循環させている。作るのと同じくらい、適切に正しく壊すのも簡単ではない。時代はサステイナブル。持続可能な成長を基礎づける物質循環を促すために、正しく壊せる有機合成化学者の活躍が今まさに待たれている。

ビニルトリフラートおよびその類縁体のラジカル反応

川本拓治*、上村明男

*山口大学大学院創成科学研究科

これまで、クロスカップリング反応の脱離基として主に用いられてきたトリフラート。使用されずに廃棄されていたそのトリフルオロメチル基の有効利用を模索し、ビニルトリフラートをラジカルアクセプターおよびトリフルオロメチルラジカル源として用いる筆者らが独自に開発したトリフルオロメチル化反応を中心に概説した、ビニルトリフラートのラジカル反応に関する総合論文です。

γ-チューブリン特異的阻害剤 ガタスタチンG2の開発

早川一郎*臼井健郎**

*日本大学大学院総合基礎科学研究科

**筑波大学生命環境系

本論文は、微小管の分子機構解明研究に資する世界初のγ-チューブリン特異的阻害剤の創製を紹介している。天然物合成の過程でわずかに生じる副反応に注目し、それを「福反応」に転じた読み応えのある論文である。研究における繊細な取り組みの大切さを学ぶことができる。

Si–Si結合を切断せずに進行する、遷移金属触媒によるオリゴシランの選択的官能基化反応

菅野研一郎*、久新荘一郎*

*群馬大学大学院理工学府

ケイ素-ケイ素結合を骨格とするオリゴシラン分子にとって,遷移金属触媒は諸刃の剣である。ただ混ぜただけでは,その骨格は一刀両断され,バラバラになってしまう。しかし,遷移金属触媒をうまく活かせば,ケイ素骨格を切らない変換反応が可能であり,様々なオリゴシランの合成に利用できる。本稿では,我々が見出した遷移金属触媒による有機「ケイ素」合成反応を紹介する。

拡張π共役系を有する縮環ポルフィリン誘導体に関する最近の展開

石塚智也*、小島隆彦*

*筑波大学数理物質系化学域

本総合論文では、筆者らが開発した四重縮環ポルフィリンの一気通貫の合成も含めて、2010年以降に発表された外周部に縮環構造を有するポルフィリン誘導体の合成研究が概説されている。随所に鍵となる重要な反応が示されており、有機合成化学と構造有機化学のインタープレーがもたらす研究発展を感じられる内容になっている。

Review de Debut

今月号のReview de Debutは1件です。

・マンガン触媒によるアルケンの選択的な脱水素シリル化反応 (九州大学先導物質化学研究所)関根康平 

感動の瞬間 生物活性化合物の化学合成:ハードワークの楽しみ

今月号の感動の瞬間は、大阪大学大学院理学研究科 深瀬浩一 教授の寄稿記事です。
深瀬先生の記事をはじめ「感動の瞬間」記事は、研究物語としてとても面白く、一気に読めてしまいます。化学を始めて日の浅い方もぜひ読んでみてください。

これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズを参照してください。

関連書籍

[amazonjs asin=”4759819320″ locale=”JP” title=”企業研究者たちの感動の瞬間: モノづくりに賭ける夢と情熱”] [amazonjs asin=”4759810803″ locale=”JP” title=”化学者たちの感動の瞬間―興奮に満ちた51の発見物語”]

Avatar photo

めぐ

投稿者の記事一覧

博士(理学)。大学教員。娘の育児に奮闘しつつも、分子の世界に思いを馳せる日々。

関連記事

  1. 有機合成化学協会誌2022年3月号:トリフリル基・固相多点担持ホ…
  2. 拡張Pummerer反応による簡便な直接ビアリール合成法
  3. トリプトファン選択的なタンパク質修飾反応の開発
  4. 水素原子一個で強力な触媒をケージング ――アルツハイマー病関連…
  5. その構造、使って大丈夫ですか? 〜創薬におけるアブナいヤツら〜
  6. 金属材料・セラミックス材料領域におけるマテリアルズ・インフォマテ…
  7. 化学系面白サイトでちょっと一息つきましょう
  8. コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成など…

注目情報

ピックアップ記事

  1. リチウム金属電池の寿命を短くしている原因を研究者が突き止める
  2. 構造化学の研究を先導する100万件のビッグデータ
  3. EUで化学物質規制のREACHが施行
  4. 「ヨーロッパで修士号と博士号を取得する」 ―ETH Zürichより―
  5. 「全国発明表彰」化学・材料系の受賞内容の紹介(令和元年度)
  6. フィッシャーカルベン錯体 Fischer Carbene Complex
  7. テオ・グレイ Theodore Gray
  8. 第30回ケムステVシンポ「世界に羽ばたく日本の化学研究」ーAldrichimica Actaコラボレーションを開催します
  9. ケテンの[2+2]環化付加反応 [2+2] Cycloaddition of Ketene
  10. Cleavage of Carbon-Carbon Single Bonds by Transition Metals

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2022年6月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

注目情報

最新記事

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

第58回Vシンポ「天然物フィロソフィ2」を開催します!

第58回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!今回のVシンポは、コロナ蔓延の年202…

第76回「目指すは生涯現役!ロマンを追い求めて」櫛田 創 助教

第76回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第75回「デジタル技術は化学研究を革新できるのか?」熊田佳菜子 主任研究員

第75回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第74回「理想的な医薬品原薬の製造法を目指して」細谷 昌弘 サブグループ長

第74回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第57回ケムステVシンポ「祝ノーベル化学賞!金属有機構造体–MOF」を開催します!

第57回ケムステVシンポは、北川 進 先生らの2025年ノーベル化学賞受賞を記念して…

櫛田 創 Soh Kushida

櫛田 創(くしだそう)は日本の化学者である。筑波大学 数理物質系 物質工学域・助教。専門は物理化学、…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP