[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

タミフルの新規合成法・その2

A Practical Synthesis of (-)-Oseltamivir”
Satoh, N.; Akiba, T.; Yokoshima, S.; Fukuyama, T. Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 5734. DOI:10.1002/anie.200701754

 

先日もとりあげたタミフルの化学合成。何かと注目最前線の医薬品ですので、全世界のあちこちで合成研究が行われている、というもっぱらの噂です。そんな中、またもや新たな合成法が報告されました。今回Angewandte Chemie誌に報告されたのは、アルカロイド合成の権威、東京大学薬学系研究科・福山透教授のグループによるものです。

 

福山教授らのグループでは、不斉Diels-Alder反応によって構築される縮環骨格を上手く使って、官能基の立体選択的構築を行っています。

まず、Cbz保護ジヒドロピリジンとアクロレインを基質として、MacMillan触媒を用いる不斉Diels-Alder反応を行い、光学活性なアザビシクロ[2.2.2]化合物を得ます。 引き続きブロモラクトン化などを経て光学活性な三環性化合物を再結晶精製にて大量に得ています。さらに変換を施した後、ジアセトキシヨードベンゼンを用いるHofmann転位によってtrans-1,2-ジアミン部位の構築、引き続いてエトキシド処理による連続的変換によって必要な官能基の立体選択的構築に成功しています。

 

tamiflu_fukuyama.gif

 特殊な試薬が不要で、スケールアップも楽そうです。大変綺麗な合成だと思います。ただ、保護基の掛け替え(Cbz→Boc)が必要な点、最初の数段階が収率面で改善し切れていない(4段階で26%)点などが玉に瑕といったところでしょうか。 論文には書いてませんでしたが、Diels-Alder反応のendo/exo比があまり良くなく、改善が難しいのでは?と思いました。

 

まだまだタミフルブームは終わりを告げません。他のグループからもこれから続々と報告がなされてくることでしょう。世界中の合成化学者達が競いあうことで、将来的にはどこまでルートが改善されるのでしょうか?楽しみにしたいと思います。

 

関連リンク

The following two tabs change content below.
cosine

cosine

博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。 関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。 素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 有機アジド(1):歴史と基本的な性質
  2. ローカル環境でPDFを作成する(Windows版)
  3. あなたの分子を特別なカタチに―「CrystalProtein.c…
  4. 「引っ張って」光学分割
  5. 原子のシート間にはたらく相互作用の観測に成功
  6. 和製マスコミの科学報道へ不平不満が絶えないのはなぜか
  7. イナミドを縮合剤とする新規アミド形成法
  8. インターネットを活用した英語の勉強法

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. バリー・トロスト Barry M. Trost
  2. 化学者ネットワーク
  3. ポール・ロゼムンド Paul W. K. Rothemund
  4. 岩澤 伸治 Nobuharu Iwasawa
  5. 2009年ノーベル化学賞『リボソームの構造と機能の解明』
  6. 遷移金属を用いない脂肪族C-H結合のホウ素化
  7. 次なる新興感染症に備える
  8. 分子機械を組み合わせてアメーバ型分子ロボットを作製
  9. 【動画】元素のうた―日本語バージョン
  10. 有機ELディスプレイの最新技術【終了】

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

太陽ホールディングスってどんな会社?

私たち太陽ホールディングスグループは、パソコンやスマートフォンなどのIT機器やデジタル家電、車載用電…

「自然冷媒」に爆発・炎上の恐れ

「環境省・経済産業省の指示により、エアコンに使用されているフロン類の入れ替えが必要だ」と偽り、地球環…

効率的に新薬を生み出すLate-Stage誘導体化反応の開発

今回紹介する論文は、Late-Stage-Functionalizationの手法を開発し、新規薬剤…

「次世代医療を目指した細胞間コミュニケーションのエンジニアリング」ETH Zurich、Martin Fussenegger研より

海外留学記第22回目はETH ZurichのDepartment of Biosystems Sci…

チャン転位(Chan Rearrangement)

概要アシロキシエステルに対して塩基を作用させることで、転位を伴い2–ヒドロキシケトエステルを与え…

卓上NMR

卓上NMR (Benchtop NMR)とは、通常のNMRよりも小型で、専用の部屋を必要としないNM…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP