[スポンサーリンク]

化学地球儀

合同資源上瀑工場

[スポンサーリンク]

千葉県大多喜町にある相生工業(株)(現(株)合同資源)のヨウ素製造拠点で、反応設備兼沈降設備であるドルシックナーがある。これは、木製の容器とともに第043号『天然ガスかん水を原料とするヨウ素製造設備および製品木製容器』として認定化学遺産に認定されている。

マップ

その他の化学地球儀はこちらからどうぞ

 

解説

資源の少ない日本においてヨウ素は数少ない日本の天然資源であり、世界の生産量の40%を占める。そのヨウ素の大半を千葉県で生産している。千葉県の地下から取水されるかん水には高濃度のヨウ素イオンが含まれているため、それを濃縮・精製してヨウ素を生産している。

銅法の反応式

麻生工業は、銅を使った方法(銅法)で1934年にヨウ素の工業的生産をこの上瀑工場で始めた。硫酸鉄(Ⅱ)を使う銅法は相生工業が開発した 方法で、かん水と硫酸銅(Ⅰ)、硫酸鉄(Ⅱ) を反応させ,ヨウ化銅(Ⅰ)を沈殿させる。その後,ろ過水洗 した粗製ヨウ化銅(Ⅰ)を酸素存在下で加熱してヨウ素を得ることができる。

ドルシックナーとは、反応させながら沈殿を回収する装置の名前であり。ヨウ素製造ではこの装置を使って、かん水に硫酸塩を反応させ、沈殿したヨウ化銅を下部より回収していた。

ドルシックナーの模式図(引用:日本化学会

上瀑工場のドルシックナー(引用:日本化学会

現在では、銅法ではなくブローアウト法と呼ばれる方法で製造している。これは、かん水に直接酸化剤を加えてヨウ素イオンをI2に変化させた後、水とヨウ素を分離し、一度還元剤によってHIを得る。そして再度、酸化剤を加えて純粋なヨウ素を製造する方法である。千葉県長生村にこのブローアウト法を使った合同資源の製造工場があり、2005年に新工場の稼働を開始させた

上瀑工場はgoogle mapを見る限り、現在は何も使われていないように見え、合同会社のHPにも拠点としての記載もない。しかしながらドルシックナーとその跡と思われる円形の建造物がいくつか残っているため、ここでヨウ素を製造していたことは間違いない。

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4526074284″ locale=”JP” title=”トコトンやさしいヨウ素の本 (今日からモノ知りシリーズ)”] [amazonjs asin=”4621301233″ locale=”JP” title=”臭素およびヨウ素化合物の有機合成試薬と合成法”]

関連リンク

Avatar photo

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. 道修町ミュージアムストリート
  2. 三井化学岩国大竹工場の設備が未来技術遺産に登録
  3. 資生堂企業資料館
  4. ストックホルム市庁舎
  5. イトムカ鉱山
  6. オカモト株式会社茨城工場
  7. アルミニウム工業の黎明期の話 -Héroultと水力発電-
  8. 科学警察研究所

注目情報

ピックアップ記事

  1. リチウムイオン電池のはなし~1~
  2. 有機フォトレドックス触媒による酸化還元電位を巧みに制御した[2+2]環化付加反応
  3. 第31回 ナノ材料の階層的組織化で新材料をつくる―Milo Shaffer教授
  4. Small Molecule Medicinal Chemistry -Strategies and Technologies-
  5. 第172回―「小分子変換を指向した固体触媒化学およびナノ材料化学」C.N.R.Rao教授
  6. 水から電子を取り出す実力派触媒の登場!
  7. 高専の化学科ってどんなところ? -その 1-
  8. 韮山反射炉に行ってみた
  9. 金子 弘昌 Hiromasa Kaneko
  10. 研究室で役立つ有機実験のナビゲーター―実験ノートのとり方からクロマトグラフィーまで

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年3月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

【書籍】Pythonで動かして始める量子化学計算

概要PythonとPsi4を用いて量子化学計算の基本を学べる,初学者向けの入門書。(引用:コ…

ケムステ版・ノーベル化学賞候補者リスト【2024年版】

今年もノーベル賞シーズンが近づいてきました!各媒体からかき集めた情報を元に、「未…

有機合成化学協会誌2024年9月号:ホウ素媒介アグリコン転移反応・有機電解合成・ヘキサヒドロインダン骨格・MHAT/RPC機構・CDC反応

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年9月号がオンライン公開されています。…

初歩から学ぶ無機化学

概要本書は,高等学校で学ぶ化学の一歩先を扱っています。読者の皆様には,工学部や理学部,医学部…

理研の研究者が考える“実験ロボット”の未来とは?

bergです。昨今、人工知能(AI)が社会を賑わせており、関連のトピックスを耳にしない日はないといっ…

【9月開催】 【第二期 マツモトファインケミカル技術セミナー開催】有機金属化合物 オルガチックスを用いたゾルゲル法とプロセス制御ノウハウ①

セミナー概要当社ではチタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素等の有機金属化合物を“オルガチック…

2024年度 第24回グリーン・サステイナブル ケミストリー賞 候補業績 募集のご案内

公益社団法人 新化学技術推進協会 グリーン・サステイナブル ケミストリー ネットワーク会議(略称: …

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

開催日時 2024.09.11 15:00-16:00 申込みはこちら開催概要持続可能な…

第18回 Student Grant Award 募集のご案内

公益社団法人 新化学技術推進協会 グリーン・サステイナブルケミストリーネットワーク会議(略称:JAC…

杉安和憲 SUGIYASU Kazunori

杉安和憲(SUGIYASU Kazunori, 1977年10月4日〜)は、超分…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP