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アミンの新合成法

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活性化されていない不飽和炭化水素(オレフィン)に対する触媒的ヒドロアミノ化反応は現在までにいくつか開発されています。例えば、オレフィンにアミノ基(-NH2)を付与するヒドロアミノ化反応(hydroamination)、また、オレフィンにヒドロホルミル化を行い、のちに還元的アミノ化を行う、ヒドロアミノメチル化反応(hydroaminomethylation)です。

今回、イリノイ大学(the University of Illinois, Urbana-Champaign)のHartwig教授らは、ヒドロアミノ化ならぬ触媒的なヒドロアミノアルキル化(Hydroaminoalkylation)を開発することに成功しました。

これは通常のヒドロアミノ化と異なり、アミノ基が直接オレフィンと結合するわけでなく、なんとアミノ基に結合しているメチル基がオレフィンに結合したのです。もっと簡単にいえば、メチル基(CH3)のHがアルキル基Rに変わったと考えてみてください。これをC-H活性化反応(C-H Activation)といいます。このC-H活性化反応を触媒量のTa錯体を用いることにより進行させ、β位に側鎖を有する新しい形のアミン合成法を開発することができたというわけです。

C&ENに掲載されていたHartwig教授らの研究結果です(関連文献参照)。実は、20年以上前に同じタイプの反応が報告されていましたが、低収率で、世の中から忘れ去られていました。つまり彼らが、適する触媒を開発し合成的に利用できるレベルまで最適化し、再び世の中の注目をあつめることができたわけです。

プロリンを触媒とした分子間不斉アルドール反応でも同じようなことがあります、昔、同様にプロリンを利用して分子内不斉アルドール反応が報告されていたのにも関わらず、誰も注目せず、その後20年たって、Barbas教授らが報告し、一分野を築くような脚光を浴びる結果となったわけです(もっとも単純な触媒「プロリン」参照)。

昔の文献、特にマニアックなもの(苦笑)に目を向けて、今の目で見るとアイデアが浮かんでくるかもしれませんね。

関連文献

・Herzon, S. B.; Hartwig, J. F.J. Am. Chem. Soc. 2007,1296690.? DOI:10.1021/ja0718366?

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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