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武田 新規ARB薬「アジルバR錠」発売

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TAK-536.gif

 武田薬品工業は5月31日、高血圧症治療剤「アジルバ®錠」(一般名:アジルサルタン)の発売を発表した。アジルバはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)であり、日本で7番目のARBとなる。武田薬品は販売中の「ブロプ レス(一般名カンデサルタン)」の後継薬に位置付ける。アジルバは1日1回の経口投与で持続的な降圧効果を示し、ブロプレスよりも高い降圧効果、同等の安全性・忍容性を示した。アジルバの2012年度売上高見込みは35億円。

 

高血圧症治療薬(降圧薬)のなかでもARBは2011年度薬価ベースで6100億円の大型市場。武田薬品は 既にCandesartan cilexetil(ブロプ レス、Atacand)を販売している。ブロプ レスは国内で最も売れているARBであり、11年度薬価ベースで1264億円という大型医薬である。

 

ブロプ レスの国内特許は12年6月に特許満了するため、武田は後継品開発としてTAK-536とTAK-491の2種類のARBを開発してきた。欧米では2つを進めた上でTAK-491開発を優先し、2011年にEdarbiを米国発売(欧州各国でも順次発売中)。日本ではTAK-536の開発を優先し、TAK-491の開発はしていなかった。

 

ARB2.gif

 TAK-536及びTAK-491は、Candesartan cilexetil と構造類似化合物であるが、その違いを以下に整理する。

Candesartan cilexetil 及びTAK-491は「プロドラッグ」と呼ばれ、生体内に吸収された後に構造赤色部分が速やかに加水分解し、活性本体(構造黒/青色部分)へと変換される。TAK-491の活性本体はTAK-536であり、これらは血中濃度推移が異なる。

一方、分子右末端(構造青色)を見ると、AzilsartanはCandesartanのテトラゾール基をオキサジアゾール基に替えており、この変換により脂溶性を向上しており、吸収性および組織移行性の改善に成功している。加えて、受容体親和性が向上、解離速度が遅くなり、強力かつ持続的な降圧効果を獲得したようである。

Candesartanは活性本体のままでは経口吸収性が低く、プロドラッグとして開発する必要があった。一方でAzilsartanは脂溶性改善と受容体親和性向上により、プロドラッグ(TAK-491)でもプロドラッグにしなくても(TAK-536) 十分な薬効を示したため、 両化合物の臨床試験を実施しより良い方を選抜したと推察される。

同薬は、単なる7剤目のARBではなく、既存のARBと比べて強力で持続的な降圧作用を示す「スーパーARB」と期待されている。

 

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