[スポンサーリンク]

M

マッテソン増炭反応 Matteson Homologation

[スポンサーリンク]

概要

ボレート1,2-転位を経由する有機ホウ素化合物の増炭反応。ホウ素側にキラル補助基を導入しておくことで、不斉合成へも展開可能。

近年、Aggarwalらによる連続型モジュール合成戦略(アセンブリライン合成)において本反応の知見が広く活用されるようになり、再注目を集めている。

基本文献

<Review>

開発の歴史

ワシントン州立大学のDonald S. Matteson によって開発された。

Donald S. Matteson

反応機構

有機金属試薬とのボレート形成は低温で進行し、ルイス酸金属キレート(Zn, Mg)のアシストによって室温下に1,2-ボレート転位が進行する。ルイス酸キレート位置が各種置換基と立体反発を最小化する位置に規定されるために脱離基の方向が固定され、立体特異的な反応になる。

参考:Tetrahedron: Asymmetry 1997, 8, 3711; J. Org. Chem. 1998, 63, 914.

反応例

キラルボロン酸エステルを有する連続的不斉変換

α-アミノボロン酸の合成[1]

立体中心を持つシクロブタン環の合成[2]

天然物全合成への適用

Lagunamide Aの全合成[3]: 本法を用いて連続不斉点の制御と増炭が極めて効率的に行われている。

実験手順

Lagunamide A合成の第1工程[3]


General Procedure:

【LDA溶液の調製】無水THF (0.2 mL/mmol) 中のジイソプロピルアミン(1.35 eq)に、n-BuLi(1.6 M ヘキサン溶液、1.25 eq)を-40°Cでゆっくりと加えた。その後、混合物を室温で20分間撹拌した。

【増炭反応】シュレンクフラスコ中でキラルボロン酸エステル(1.0 eq)を無水THF (1.4 mL/mmol)に溶解し、続いて 無水ジクロロメタン(3.0 eq)を-40°Cで加えた。用時調製したLDA溶液を、冷却したフラスコ表面に流下させる形で、ゆっくりと添加した。さらに10分後、塩化亜鉛無水物(0.5 mL/mmol、2.0~4.0当量、無水THF溶液)を加え、冷却槽を除去し、反応液を室温で2~24時間撹拌した。

【求核置換】反応混合物を0°Cに冷却し、続いて求核剤溶液を添加した。冷却槽を除去したのち、室温で1~14日間撹拌した。

反応は飽和NH4Cl水溶液を加えることで停止させた。5分後に水を加え、水相をn−ペンタンで3回抽出した。合わせた有機層を乾燥し(Na2SO4)、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物を必要に応じてカラムクロマトグラフィーで精製した。

本工程では、ボロン酸エステル(1.96 g、7.83 mmol、1.0 eq)、無水ジクロロメタン(1.51 mL、d=1.32 g/mL、23.5 mmol、3.0 eq)、ジイソプロピルアミン(1.51 mL、d=0.71 g/mL、10.6 mmol、1.35 eq)、n-BuLi溶液(6.11 mL、1.6M in hexane、9.78 mmol、1.25 eq)、塩化亜鉛(2.13 g、15.7 mmol、2.0 eq)を反応させた。二時間後、更に臭化エチルマグネシウム溶液(19.6 mL、1.0M in THF、19.6 mmol、2.5eq)を加えて置換させた。後処理後、2.27 g (7.77 mmol、99%)の生成物を黄色油状物として単離した。

実験のコツ・テクニック

  • LiCHCl2はジクロロメタンからBuLi, -100℃で別バッチ調製、もしくはホウ素化合物の共存下、LDA, <-30℃で系中調製される。LiCHBr2も、ホウ素化合物の共存下にLDAで系中調製させて用いられる。

関連動画

 

参考文献

  1. (a) Matteson, D. S.; Sadhu, K. M.; Lienhard, G. E. J. Am. Chem. Soc. 1981, 103, 5241. doi:10.1021/ja00407a051 (b) Matteson, D. S.; Sadhu, K. M. Organometallics 1984, 3, 614. doi:10.1021/om00082a019
  2. Man, H.-W.; Hiscox, W. C.; Matteson, D. S. Org. Lett. 1999, 1, 379. doi:10.1021/ol990579+
  3. Gorges, J.; Kazmaier, U. Org. Lett. 2018, 20, 2033. doi:10.1021/acs.orglett.8b00576

関連書籍

関連反応

関連リンク

cosine

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. アシル系保護基 Acyl Protective Group
  2. グロブ開裂 Grob Fragmentation
  3. ハンチュ ピロール合成 Hantzsch Pyrrole Syn…
  4. カルバメート系保護基 Carbamate Protection
  5. バージェス試薬 Burgess Reagent
  6. ジョーンズ酸化 Jones Oxidation
  7. フォン・リヒター反応 von Richter Reaction
  8. スワーン酸化 Swern Oxidation

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. リガンド革命
  2. アセトンを用いた芳香環のC–Hトリフルオロメチル化反応
  3. ジョーンズ酸化 Jones Oxidation
  4. 染色なしで細胞を観察 阪大ベンチャーが新顕微鏡開発
  5. ブラックマネーに御用心
  6. アカデミックから民間企業への転職について考えてみる 第2回
  7. グレッグ・バーダイン Gregory L. Verdine
  8. 第九回ケムステVシンポジウム「サイコミ夏祭り」を開催します!
  9. ジェニファー・ダウドナ Jennifer Doudna
  10. 新コンテンツ「ケムステまとめ」をオープン

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

注目情報

注目情報

最新記事

第121回―「亜鉛勾配を検出する蛍光分子の開発」Lei Zhu教授

第121回の海外化学者インタビューは、Lei Zhu教授です。フロリダ州立大学 化学・生化学科で、亜…

高知市で「化学界の権威」を紹介する展示が開催中

明治から昭和にかけて“化学界の権威”として活躍した高知出身の化学者=近重真澄を紹介する展示が高知市で…

ケムステバーチャルプレミアレクチャーの放送開始決定!

主に最先端化学に関する講演者をテーマ別で招待しオンライン講演を行っていただくケムステバーチャルシンポ…

分子運動を世界最高速ムービーで捉える!

第275回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 博士課程・清水俊樹 さんに…

「未来博士3分間コンペティション2020」の挑戦者を募集

科学技術人材育成のコンソーシアムの構築事業(次世代研究者育成プログラム)「未来を拓く地方協奏プラ…

イグノーベル賞2020が発表 ただし化学賞は無し!

「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる業績」に対して贈られるノーベル賞のパロディである「イグノーベル…

電子実験ノートSignals Notebookを紹介します ②

前回に引き続き(間がだいぶ空いてしまいましたが、、、)Signals Notebookの使い…

化学者のためのエレクトロニクス講座~有機半導体編

このシリーズでは、化学者のためのエレクトロニクス講座では半導体やその配線技術、フォトレジストやOLE…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP