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日本発元素がついに周期表に!!「原子番号113番」の命名権が理研に与えられる

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日本の理化学研究所が合成した原子番号113番の元素が、国際機関によって、「新しい元素」として認定され、理研に命名権が与えられた。日本による元素の発見は初めてとなる。アメリカに本部があるIUPAC(国際純正・応用化学連合)は30日、4つの新しい元素が発見されたと発表した。このうち、原子番号113番は、理研・仁科加速器研究センターの、森田浩介グループディレクターを中心とする研究グループによって発見されたと認定した。(引用:FNNニュース)

年の瀬にもうひとつ、こちらは大変素晴らしいニュースです。

2004年に理研の森田浩介グループが発見した113番元素がIUPACから正式に日本の発見と認定され、理研に元素命名権が与えられました。

これまで公式には未認定でしたので、ウンウントリウム(ununtrium)というごにょごにょした暫定名でよばれていた元素です。un=1、tri=3という字面に接尾語「ium」を付けただけでした。今回の公式認定を受け、正式な名前がいよいよ決定されます。

速報と言うことで、具体的な科学プロセスについては理研プレスリリースに譲りたいと思います。過去にも新元素発見→追試できず取り下げ、という事例はいくつかあります。やはり確認・再現性の取得こそがプロセスのキモで有り、日本のデータの信頼性が評価されたということも決め手となった一つのようです。

森田グループは、理研の重イオン加速器施設「RIビームファクトリー(RIBF)」の重イオン線形加速器「RILAC」を用いて、2003年9月から亜鉛(Zn:原子番号 30)のビームをビスマス(Bi:原子番号 83)に照射し、新元素の合成に挑戦してきました。2004年7月に初めて原子番号113の元素合成に成功し、その後、2005年4月、2012年8月にも合成に成功しています。この3回の113番元素合成報告に加え、2009年に行ったボーリウム(Bh:原子番号107、113番元素がα崩壊を3回起こした際に生成される原子核)を直接合成する実験からも、113番元素合成を裏付ける重要な結果を得ました。これらにより新元素認定の際に重要視される「既知同位体への崩壊」が疑う余地なく確認されました。(引用:理研プレスリリース

fig3

104番以降の新元素と名前の由来を今一度おさらいしておきましょう。およそ、発見地名か、主には核物理学を発展させた歴史的科学者の名前にちなんで付けられるのが慣例です。

104 ラザフォージウム (Rf):物理学者アーネスト・ラザフォードにちなむ
105 ドゥブニウム (Db):ロシア合同原子核研究所のある地名ドゥブナにちなむ
106 シーボーギウム (Sg):物理学者グレン・シーボーグにちなむ
107 ボーリウム (Bh): 物理学者ニールス・ボーアにちなむ
108 ハッシウム (Hs):ドイツ重イオン研究所のある州地名(ラテン語名)ハッシアにちなむ
109 マイトネリウム (Mt):物理/化学者 リーゼ・マイトナーにちなむ
110 ダームスタチウム (Ds):ドイツ重イオン研究所のある市名ダルムシュタットにちなむ
111 レントゲニウム (Rg):物理学者ヴィルヘルム・レントゲンにちなむ
112 コペルニシウム(Cn):天文学者ニコラウス・コペルニクスにちなむ
114 フレロヴィウム(Fl):ロシアのドゥブナ合同原子核研究所設立者ゲオルギー・フリョロフにちなむ
116 リヴァモリウム(Lv):米国ローレンス・リバモア国立研究所にちなむ

今年のラグビーW杯の劇的逆転勝利は、多くの方々の記憶に強く刻まれていると思います(筆者も感動に震えました!)。新元素発見研究というこちらも欧米の独壇場に切り込んでの達成。ラグビーの勝利に負けずとも劣らない意味合いを持つ、日本科学界すべての悲願達成であり、金メダル以上の歴史的成果と言えるでしょう!

科学史に永遠に刻まれることが確定した113番元素、果たしてどのような名前になるのでしょうか?また、これを機に日本に元素ブームは到来するか!?来年早々から目が離せませんね!

 

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ケムステでも過去に新元素開発の話題を取りあげてきました。こちらも併せてご参照ください。

cosine

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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