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クラリベイト・アナリティクスが「引用栄誉賞2019」を発表

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9月26日に、クラリベイト・アナリティクス社から、2019年の引用栄誉賞が発表されました。

この賞は、Web of Scienceの論文引用データをもとに、医学・生理学、物理学、化学、経済学分野において、特に影響力のある研究者に対して与えられる賞です。これまで、50人の引用栄誉賞受賞者がノーベル賞を受賞しており、そのうち半数以上が引用栄誉賞の受賞から2年以内にノーベル賞を受賞しています。そのため、本賞の受賞者はノーベル賞の有力候補とも言えます。

2019年度は、医学生理学・物理学・化学分野から計19名が受賞しました。今年は日本からの受賞はありませんでしたが、北米の研究機関を中心に、デンマーク、ドイツ、イスラエル、オランダ、イギリス、シンガポールから受賞者が出ています。

毎年、ケムステでも化学分野にフォーカスして受賞者の業績を紹介しています。本記事でも2019年の受賞者についてまとめてみましたので、ぜひご覧ください!

1,3-双極子環化付加反応(ヒュスゲン反応)と異形銅(I)触媒を用いるアジド-アルキン環化付加反応の発展

(左)Huisgen教授(Wikipediaより)。(右)Meldal教授(コペンハーゲン大学のページより)。

Rolf Huisgen(ロルフ・ヒュスゲン)教授とMorten P. Meldal(モーテン・メルダル)教授は、クリックケミストリーの代名詞とも言われる、アジド–アルキン環化付加反応の発展に多大な貢献を果たしました。

Huisgen教授は、この反応の元となる1,3-双極子環化付加反応(ヒュスゲン反応)の開発者です。彼は、1960年、1,3-双極子(1,3-dipole)がアルケンやアルキンなどの親双極子(dipolarophile)と反応し、5員環化合物を生成することを発表しました。その後2001年、Meldal教授がこの反応を銅触媒(I)を用いて行い、反応速度を約107倍向上させることに成功しました。(Sharpless教授も同時期に銅触媒を用いた同反応を発表しています。)

銅触媒下アジド­-アルキン1,3-双極子環化付加反応(CuAAC)は、きわめて高収率かつ高い官能基選択性で進行することが特徴です。他にどのような官能基があってもアルキンとアジドのみが反応し、水中でも反応が進行することなどから、特にケミカルバイオロジー研究においては非常に有用な反応です。さらに最近では、銅触媒が要らない歪み促進型アジド-アルキン付加環化反応(SPAAC)も開発されています。これらの反応は、機能性物質創製(医薬候補化合物、バイオプローブ、ソフトマテリアル、etc)におけるライゲーションの主反応として利用され、幅広い分野に影響を与えています。

特定のDNA配列を判断するためのサザンブロット法の発明

Southern教授(Wikipediaより)

Edwin Southern(エドウィン・サザン)教授は、サザンブロッティングと呼ばれるDNA同定法を開発しました。この方法を用いれば、DNA内の単一遺伝子を容易に同定することができます。

この手法では、まずアガロースゲル電気泳動を用いて、DNAを長さに応じて分離します。次に、ゲルを強塩基溶液に浸してDNAを一本鎖に分離した後、ゲルにニトロセルロース膜を接触させてDNAを転写します。その後、放射性同位体や酵素で標識したDNAプローブとハイブリッド形成させることにより、膜上のDNA配列を同定します。確認したい塩基配列と相補的な一本鎖DNAをプローブとして用いることで、特定の配列の有無を容易に判定することができます。

この手法を利用して、現代のオーダーメイド医療の基盤となる遺伝子マッピング、遺伝子診断、遺伝子スクリーニングなどの技術が生み出されました。さらに、この手法をRNAやタンパクへと応用したノーザンブロッティングやウエスタンブロッティングなども、生化学の研究において広く用いられています。

タンパク質やDNAの配列と合成に関する研究

(左)Caruthers教授(コロラド大学のページより)、(中)Hood教授(Wikipediaより)、(右)Hunkapiller博士(PacBio社のページより)。

Marvin H. Caruthers(マーヴィン・カルザース)教授、Leroy E. Hood(リロイ・フード)教授、Michael W. Hunkapiller(マイケル・ハンカピラー)博士は、タンパクやDNAの化学合成・シーケンサーの開発に多大な貢献を果たしました。

Caruthers教授の代表的な功績は、ホスホロアミダイトを用いたDNAの化学合成法の開発です。核酸合成は1950年代から研究が進められていましたが、1980年頃までに用いられていたリン酸ジエステル法やリン酸トリエステル法、亜リン酸トリエステル法では、収率が十分でなかったり、中間体が水に不安定であることなどが問題でした。特に、核酸合成においてはカップリング反応を何度も繰り返す必要があるため、収率をできる限り100%に近づける必要があります。また、1980年頃からDNA合成の自動化が試みられていましたが、その際に常温・大気中で反応が行えることが理想的です。

そこで、Caruthers教授らは、ホスホロアミダイトを用いたカップリング法を開発しました。ホスホロアミダイトは、リン原子にヌクレオシド(またはデオキシヌクレオシド)の 3′ 位とシアノエトキシ基、ジアルキルアミノ基が結合した下図のような化合物です。固相に担持したヌクレオシドに対し、ホスホロアミダイトを酸性触媒(テトラゾールなど)の存在下で反応させると、置換反応によりカップリングが進行します。その後、ヨウ素などで酸化することで、目的のリン酸トリエステル結合が得られます。ホスホロアミダイトは比較的安定で長期間保存することができ、反応も高収率で進行するため、この反応は核酸合成におけるカップリング反応の決定版として、現在も広く利用されています。

一方、Hood教授は、世界初の気相プロテインシーケンサー(1982年)・DNA自動合成装置(1983年)・ペプチド自動合成装置(1984年)・DNAシーケンサー(1986年)を開発するなど、多数の画期的な発明を行っています。Hood教授は、特にこれらの装置を商品化することに興味を持っており、先述のCaruthers教授と共に立ち上げたApplied Biosystemsという企業を通して、DNAやタンパクのシーケンサー・合成装置を市場に普及させました。Hood教授は、気液相プロテインシーケンサーなどを開発したHunkapiller博士とも協力し、装置の改良を重ねました。Caruthers教授・Hood教授・Hunkapiller博士らが協同して開発を行ったこれらの装置は、当時まだ始まったばかりであったゲノム解析やプロテオーム解析の分野に対して大きな影響を与えました。特に、自動DNAシーケンサーは、ヒトゲノムの全塩基配列の解読(ヒトゲノム計画;1990〜2003年)を可能にした非常に重要な技術です。

参考文献

  1. Huisgen, R. Angew. Chem. Int. Ed. 1963, 2, 565. DOI: 10.1002/anie.196305651
  2. Meldal, M,; Tornøe, C. W. Chem. Rev. 2008, 108, 2952. DOI: 10.1021/cr0783479
  3. Beaucage, S. L.; Caruthers, M. H. Tetrahedron Lett. 1981, 22, 1859. DOI: 10.1016/S0040-4039(01)90461-7

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kanako

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アメリカの製薬企業の研究員。抗体をベースにした薬の開発を行なっている。
就職前は、アメリカの大学院にて化学のPhDを取得。専門はタンパク工学・ケミカルバイオロジー・高分子化学。

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