[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第10回 ナノ構造/超分子を操る Jonathan Steed教授

[スポンサーリンク]

 ショートインタビュー第10回目はDurham大学化学科・Jonathan Steed教授です。

彼は超分子化学およびナノ化学に関する研究に取り組んでいます。

 

Q. あなたが化学者になった理由は?

化学者というのがどんなものかを、本当の意味で知る前からも、私はいつも化学者たろうとしていました。 適切で、触り心地の良い科学だったようです。 今日の午後、私の2歳の息子は、流しのそばの椅子に立ち、洗剤の中に洗い物の水を注いでいました。思うに、単分子膜もしくはミセルを、知らずに作っていたのでしょう。 私の母は、その姿が35年前の私のようだ、と話していました。息子も私と同じ道を歩む・・・かも知れませんね?

 

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

たぶん、作家になっていたと思います。Giles Milton(Nathaniel’s Nutmeg、他数篇の素晴らしい歴史物語の作者)の影響でしょう。 完成するまでプロジェクトに没入し、共に生活し、その空気を吸うことを私は好みます。 化学者としてであれば、ともあれ作家になれました・・・化学に付随することについて教科書を書くのであれば、フィクションよりもずっと出版は簡単です! 追伸・・・思うに、やり手の弁護士にもなってみたいかも知れません―信じられないほどの大金を稼げるので。 少なくとも、少しの間だけやるのは良いかも知れません。しかし、いずれ論争に嫌気がさしてくるでしょうね。

[amazonjs asin=”B00KF2SN7A” locale=”JP” title=”Nathaniel’s Nutmeg: Or, The True and Incredible Adventures of the Spice Trader Who Changed The Course Of History”]

 

Q.概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

どれほどの長きにわたって、我々は貢献を重ねてきたのでしょう?現代世界では、実際に触れられるものはすべて化学で理解されています。 分子科学者が直面している課題はというと―石鹸、アスピリン、WD40のような無数の日常品は別として―物質を分子のスケールで制御することだと思います。 そうすることでのみ、優れた機能―最近亡くなった、Kurt Vonnegutが夢想できたような―をもつ素材や対象は、理解されるのです。

Kurt Vonnegut

Kurt Vonnegut

 

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

妻と私なら是非、”想像上の人物”を夕食に招きたいですね。 しばらくの間、”Location, Location, Location”に出演しているKristieとPhilがリストに上がっていました。映画”グラディエーター”に出てくるConnie NielsenとRussel Croweも迷うところでしたね。 歴史上の人物となると、さらに興味深いです。リストのどこか(下の方)には、イエス・キリストとアドルフ・ヒトラーがいますね。二人ともに同じ質問をするでしょうね―「何を考えていたのか?」と。 とはいえ最も呼びたい人はというと、現代(私の場合は西部)の文化的枠組みから自由な、古代史上の人物です。 「老いたホラ吹き」ヘロドトスなら、きっと一杯の上等なワインを手に、相手を楽しませる良いほら話を繰ってくれるでしょう。 「ミノアについて何を聞いた?アトランティスは?アクエンアテンは?」私はそう尋ねたあと、座して彼の話を楽しむでしょうね。

 

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

他の人が結晶化出来ないものでも私ならできる、そんな誤解があるために、私は働く羽目になります。 そして貴重な化学物質入りのバイアルは徐々に黒ずみ、乾固したまま放置され、ホコリやハエの死骸を集めていく・・・往々にしてこういう事態に陥ります。 昆虫の死骸やホコリがあっても、実際には結晶の核生成や成長は促進されない― 一番の望みとは対照的ながら、今の私にはそう理解されました。

 

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

本ならば、John Fowlesの「The Magus」(第2改訂版)ですね(「指輪物語」にしようかとかなり迷ったのですが、結局やめました。というのもLiv Tylerが映画版だけの存在であり、書籍版にいないので)。官能的で不可思議たる本作は、なんども読み返したくなるものです。Fowlesのようなプロ作家が何年間にもわたって磨き上げてきた、言語の美と暖かな地中海イメージがそこにはあります。実際立ち去って、すぐさま読みたく思っているほどです。CDは、90年代後半スタイルのダンス/チルアウト/エレクトロニカタイプの音楽を編集したものですね(ちゃんとしたバッテリー付きのCDプレイヤーも、きっと付いてきますよね? どうでもいいことが気になるたちなんです)。砂塵、静寂、潮騒などと共に・・・砂漠の島なら、イビーザと同じようなところかも知れないですね

[amazonjs asin=”0099478358″ locale=”JP” title=”The Magus (Vintage Classics)”][amazonjs asin=”4566023826″ locale=”JP” title=”文庫 新版 指輪物語 全10巻セット (評論社文庫)”]

 

原文:Reactions – Jonathan Steed
※このインタビューは2007年4月27日に公開されたものです。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第124回―「生物・医療応用を見据えたマイクロ流体システムの開発…
  2. 第104回―「生体分子を用いる有機エレクトロニクス」David …
  3. 第13回 化学を楽しみ、創薬に挑み続ける ―Derek Lowe…
  4. 第18回 出版業務が天職 – Catherine G…
  5. 第28回 錯体合成から人工イオンチャンネルへ – P…
  6. 第73回―「Nature Chemistryの編集者として」Ga…
  7. 第59回―「機能性有機ナノチューブの製造」清水敏美 教授
  8. 第105回―「低配位有機金属錯体を用いる触媒化学」Andrew …

注目情報

ピックアップ記事

  1. ストリゴラクトン類縁体の構造活性相関研究 ―海外企業ポスドク―
  2. SNS予想で盛り上がれ!2022年ノーベル化学賞は誰の手に?
  3. 18万匹のトコジラミ大行進 ~誘因フェロモンを求めて②~
  4. サンギ、バイオマス由来のエタノールを原料にガソリン代替燃料
  5. ショウリョウバッタが吐くアレについて
  6. Grubbs第一世代触媒
  7. 京都賞―受賞化学者一覧
  8. 水溶性ニッケル塩を利用したグリーンな銅ナノ粒子合成法の開発
  9. 高分子の合成(上)(下)
  10. 有機合成から無機固体材料設計・固体物理へ: 分子でないものの分子科学を求めて –ジャン ロッシェ材料研究所より

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年12月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2025年1月号:完全キャップ化メッセンジャーRNA・COVID-19経口治療薬・発光機能分子・感圧化学センサー・キュバンScaffold Editing

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年1月号がオンライン公開されています。…

配位子が酸化??触媒サイクルに参加!!

C(sp3)–Hヒドロキシ化に効果的に働く、ヘテロレプティックなルテニウム(II)触媒が報告された。…

精密質量計算の盲点:不正確なデータ提出を防ぐために

ご存じの通り、近年では化学の世界でもデータ駆動アプローチが重要視されています。高精度質量分析(HRM…

第71回「分子制御で楽しく固体化学を開拓する」林正太郎教授

第71回目の研究者インタビューです! 今回は第51回ケムステVシンポ「光化学最前線2025」の講演者…

第70回「ケイ素はなぜ生体組織に必要なのか?」城﨑由紀准教授

第70回目の研究者インタビューです! 今回は第52回ケムステVシンポ「生体関連セラミックス科学が切り…

第69回「見えないものを見えるようにする」野々山貴行准教授

第69回目の研究者インタビューです! 今回は第52回ケムステVシンポ「生体関連セラミックス科学が切り…

第68回「表面・界面の科学からバイオセラミックスの未来に輝きを」多賀谷 基博 准教授

第68回目の研究者インタビューです! 今回は第52回ケムステVシンポ「生体関連セラミックス科学が切り…

配座制御が鍵!(–)-Rauvomine Bの全合成

シクロプロパン環をもつインドールアルカロイド(–)-rauvomine Bの初の全合成が達成された。…

岩田浩明 Hiroaki IWATA

岩田浩明(いわたひろあき)は、日本のデータサイエンティスト・計算科学者である。鳥取大学医学部 教授。…

人羅勇気 Yuki HITORA

人羅 勇気(ひとら ゆうき, 1987年5月3日-)は、日本の化学者である。熊本大学大学院生命科学研…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP