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海外化学者インタビュー

第134回―「脳神経系の理解を進める分析化学」Jonathan Sweeder教授

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第134回の海外化学者インタビューはジョナサン・スウィードラー教授です。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校で生理学と神経科学を専攻しています。研究分野は分析神経化学であり、学習、行動、ニューロンネットワーク形成に関連した新たな神経化学を研究しています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

科学がずっと好きで、科学研究職に就きたいと思っていました。最初に化学に触れたのは、家庭用化学セットで、爆発反応の仕込み方を学んだことでした。今日の社会では受け入れがたい話かもしれませんが、1970年代は寛容でした。この手のことに興味をもっていたわけで、学部生時代にローレンス・リバモア国立研究所で3度の夏を働いて過ごしたことが最初の化学関連職ですが、さほど驚くべきことでもないでしょうね。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

化学で博士号を取得して以来、他にも魅力ある科学を理解するために研究を進めてきました。つまり、神経科学と脳機能です。現在、私のグループの約3分の1は生理学と神経科学領域の学生で、残りは化学領域の学生で成り立っています。もし自分が化学者でなかったら、大学では神経科学科に所属していたかもしれません。大学での研究があまりにも好きなので、他のことはできないでしょうね。

Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?

私のグループでは、主に2つのことに興味をもっています。

一つはナノリットル以下のサンプルの化学成分を調べる新たな分析ツール(メタボロミクスやプロテオミクスと呼ばれることもあります)の開発です。

もう一つは、脳内の細胞間シグナル伝達を理解すべく、既定の神経細胞ネットワークにこれらの技術を用いています。神経ペプチド、セロトニン、キラルアミノ酸、一酸化窒素に関連する新たな神経化学的経路の特徴を明らかにし、自ら発見した新規化合物の生理的機能の解明を目指しています。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

なんという質問でしょう。おそらくアントニー・ファン・レーウェンフックです。彼は、実効的な顕微鏡を初めて開発し、バクテリア、微小原生生物、精子細胞、血球、ワムシなどを見いだすなど、生物学分野で最も重要な発見をした人物です。もちろん、彼はオランダ語しか話せませんし、私はオランダ語を話せないので、夕食の会話に向く相手ではないかもしれません。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

ある特定の海洋無脊椎動物を収集するために、今でも海洋ステーションに行っています。そういう動物は、明確な神経ネットワークにおける学習と記憶を研究するための素晴らしいモデルになるからです。動物を採集して脳を研究すれば、そのユニークな神経化学を探求できます。そう、カリブ海や太平洋岸北西部で(動物を探すダイビングに)長い時間を過ごすことは、まさに自分の “仕事 “の一部なのです。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

CDプレーヤーと電源とCD1枚だけ許可されていて、お気に入りの音楽・ゲーム・文章すべてがフルに詰まったiPodではだめということでしょうか?双方向ラジオの電源にCDの電源を使用するのはだめですか?

まあいいでしょう。本については、ウィリアム・シェイクスピア全集(彼の演劇作品の多くは未読です)か、もしくはGoogleで引っかかったサバイバルガイド『How to Survive on a Desert Island』のどちらかを持っていきます。

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Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者と、その理由を教えてください。

スタンフォード大学のリチャード・ゼアです。非常に創造的な人なので、彼の回答の方が私のよりきっと面白いでしょう。

 

原文:Reactions – Jonathan Sweedler

※このインタビューは2009年10月9日に公開されました。

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cosine

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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